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「またそんな適当なことを言ってッ!」
立ち上がって叫んだ
そんな彼女を見た他の者たちは、一心以外全員「やはりこうなった」と言いたそうな顔をしている。
皆のことなど気にせずに、ゆきは一心を睨みながら、さらに声を荒げる。
「あなたは悪魔の恐ろしさを知らないからそんなことを言えるんです!」
「知ってるって。でも、沖縄のときだって俺ともみじでホロのヤツを捕まえたし。今回はみんなもいるんだ。どう考えたって楽勝だろ? 向こうは一人で
「数の問題ではありません! 悪魔にはまだわたしたちの知らない力があるんですよ!? それなのにあなたって人はッ!」
ゆきが声を張り上げたとき、突然窓から何かが飛び込んできて、割れた窓ガラスと共に部屋の中に入ってきた。
ディヴィジョンズの面々は各自身構え、入ってきた何かを見据える。
「……ニッコロ·ロッシかッ!?」
そこにはストライプ柄のスーツにオールバックの髪型をした敵――イタリアンマフィアが立っているのだが、鬼頭が戸惑っているのはその姿だ。
頭と背中からは角とコウモリの羽のようなものが生え、臀部からは尻尾が見える。
顔や格好は間違いなくニッコロ·ロッシだが、その姿は物語や文献で見るような悪魔の姿そのものだった。
「よう。
両腕を大きく広げ、ビシッとポーズを決めたニッコロは一心たちを見下すようにそう言うと、ゆっくりと宙に浮いていく。
そして、その周りには真っ赤な炎が出現し、まるで彼を守るかのように周囲を漂い始めた。
その光景を見た鬼頭はすぐに危険を察知し、固まっていた一心たちに向かって叫ぶ。
「全員この場を離れろ!」
鬼頭の叫びと共に、ニッコロの周りを漂っていた炎は大きくなっていった。
巨大な紅球となった炎はその動きを速めると、一心たちへと飛んでくる。
その場は一瞬で火の海となり、燃える部屋の中でニッコロは高笑っていた。
両腕を振りながら巨大な炎を操る様は、まるでオーケストラの指揮者気取りだ。
「まずは挨拶代わりだ! たっぷりと味わってくれよ!」
もみじはゆきを抱えて
全員が燃える部屋から脱出したことを確認した鬼頭は、一心の首根っこを掴んで皆に続こうとしたが――。
「ナイスタイミングだ。ちょうどお前の話をしてたとこだったんだよッ!」
一心は鬼頭の手を振り払い、天井近くまで浮いているニッコロへと向かっていってしまった。
先ほどディヴィジョンズ(源を含めて)七人で戦うと言ったばかりだと言うのに、彼は一人で飛びかかっていく。
鬼頭は呆れながらも部屋の脱出を諦め、上着にしまっていた拳銃を手に持った。
ニッコロへと飛びかかった一心の全身に刺青のような模様が現れていく。
拳を振り上げ、炎を操っていたニッコロの顔面に一発入れてやろうとしたが、部屋を燃やしていた紅球がその行く手を阻んだ。
「ぐわッ!? あっちぃなクソッ!」
一心が拳を引っ込めて炎を手で払うと、彼の顔面に蹴りが飛んできた。
ニッコロが炎に阻まれ、飛び上がった勢いの落ちた一心を空中から攻撃したのだ。
炎の球を弾き飛ばし、ニッコロの蹴りをなんとか防いだものの一心はそのまま床に叩き落されてしまう。
「一心ッ!? くッ言わんこっちゃない!」
鬼頭は一心を蹴り飛ばしたニッコロへ発砲。
悪魔となったニッコロの周りに光の障壁が現れ、鬼頭が放った弾丸は防がれるかと思われたが、障壁を貫いてその肩口を貫く。
赤黒い血が噴き出し、火の海となった部屋にニッコロの血が撒き散らされた。
「いてッ!? なんだよそれ? 普通の弾は効かねぇって聞いてたのに、もしかして魔力がこもってんのかそれ?」
だが、ニッコロは虫にでも刺されたくらいにしか感じておらず、視線を一心から鬼頭へと切り替えた。
そして、空中から物凄い速度で鬼頭の目の前まで降り、自分の顔を突きつける。
「でも、こんなもん効かねぇぞ。オレは人間を超えたんだ。いくら魔力がこもっていようと、その程度の威力でオレは
「なら貴様が死ぬまで撃つだけだ」
鬼頭は突きつけられた顔面にヘッドバットを喰らわせてから再び引き金を引く。
それでもニッコロには通じない。
その腕を肥大化させて放たれた弾丸を振り払う。
「やはり肉体強化と人体の一部を好きに巨大化できるか。これまでに悪魔と契約したという人間らと同じ力だな」
「いちいち解説してんじゃねぇよ。そういうのは地獄でやってろ!」
ニッコロは肥大化させた両腕を伸ばし、鬼頭へと襲いかかった。
爪の伸びたまるでシャベルカーのような手先が、鬼頭の体を切り裂こうと向かっていったが、そこへ先ほど床に叩きつけられた一心が割って入って来る。
「地獄に行くのはお前だ!」
一心は側面からニッコロへ体当たり。
肩口を突き出して低軌道でぶつかり、相撲用語でいうところのぶちかまし、あるいはショルダータックルでニッコロの体を吹き飛ばした。
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