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ホロはそう言うと、宙に浮かぶ白いキツネの姿から変化していった。
人獣型というのが正しい言い方なのかわからないが、その白い豊かな毛はそのまま身体が大きく手足が長く伸びていき、まるで人間のような立ち姿になる。
あの可愛らしかった姿は消え去り、鋭い爪と牙、さらに氷のような冷たい目を持ったキツネの悪魔が、
「ホロ……。俺はお前と戦いたくないよぉ……。トゥルーだってそんなこと望んでなんて――」
「悪いけどね、一心」
ホロは今にも泣きそうな顔を向けてくる一心の言葉を遮り、これまでとは別人のような口調で言う。
「ボクは人間を愛せない。君やトゥルーとの日々は楽しかったけど、ここで死んでもらうよ」
「ホロ……。くッ!? やるしかないのかよ!?」
一心が俯きながら叫ぶと、もみじは彼の肩をバンッと叩いた。
彼女のほうを振り向いた一心に、もみじはいつまでそんなことを言っているのだと言いたそうな顔を向けている。
戦わなければ殺される――その意図を理解した一心。
そんな彼にもみじは口を開く。
「言っとくけど、私はあんたを助けるつもりはないから。自分の身は自分で守りなさい。戦うつもりなら手を貸せ」
「わかってる、わかってるよ! 俺は生きるんだ! 生きてトゥルーのためにも幸せになるんだよ! そのためならなんだってやってやる!」
そう応えた一心の身体に、まるで刺青のような模様が現れ始める。
それと同時に、もみじの身体にも一心と同じようなものが現れ出していた。
その模様は顔にまで出ており、これは
戦闘態勢に入った二人に、ホロは歯を剥き出しにして飛び掛かった。
空中から出現させた魔法陣を蹴って、まるで大砲の弾のように突っ込んでくる。
一心ともみじはこれを躱し、持っていたサブマシンガンを放った。
だが通じない。
ホロの身体を貫くことはできない。
悪魔や
普通の武器での攻撃は無意味になる。
しかし、一心ともみじの撃った銃の弾丸は二人の魔力がこもっているのに通じない。
それは、ホロの魔力が二人を上回っていることを意味していた。
「まさかボクがただのおしゃべりな悪魔だとでも思ったのかい? その程度の魔力じゃ、ボクの身体に傷一つ付けられないよ」
ホロは笑いながら再び魔法陣を出現させ、それを蹴って突進。
一心ともみじが避けるたびに、建物内の壁が破壊されていく。
「くそッ!? どうすりゃいいんだ!?」
「落ち着け一心!
「ならぶん殴れば効くってわけか。でも早過ぎるぞ、ホロのヤツッ!?」
一心の言う通り、ホロの身体を捉えようにも白いキツネの悪魔は魔法陣を出してはそれを蹴って高速で移動し、そこら中を破壊し続けていた。
彼らがいた二階は、まるで部屋の中に竜巻でも入ってきたかのようにボロボロになっていく。
ギリギリでホロの突進を避けながら、もみじは一心にある提案をした。
それは彼女がホロの突進を止め、その隙を突いて攻撃をしろというものだった。
「えッ!? 待てよ!? あの突進を受けても大丈夫なのか!?」
一心はもみじの提案に反論。
いくら身体能力向上により
もしもみじがホロよりも魔力が劣っていた場合、確実に命を落とすのではないかと。
「だったら他にあいつを止める方法があるの!?」
「ある! 今もみじが言ったことを俺がやればいいんだ!」
「ちょっとあんたッ!?」
一心はもみじにそう言うと、向かって来ていたホロへと走り出した。
凄まじい速度で突進してくる白いキツネの前に立ち、両手を広げてみせる。
「相変わらずバカだね君は!
「知らねぇよそんなことッ! どっちが上とかただじゃ済まないとかどうでもいいだろ! やるかやらないかだ!」
両者叫び合った後に、一心はホロの突進を受け止めた。
その衝撃によって一心の身体は吹き飛びそうになったが、彼は歯を食いしばりながら踏ん張って押さえる。
衝突の瞬間に内臓か、または胴体の骨が折れたのか。
一心の口からは血が噴き出していた。
身に付けていた装備も粉々になり、服の至るところが破けてしまっている。
だが、激しいダメージを受けながらも一心はホロの突進を止めることに成功。
そこへすかさず彼の後ろから駆け込んできたもみじが、ホロの巨体に飛びついた。
頭を飛び越えて背後へと移動し、その太い首に両腕と両脚を回して一気に締め上げる。
「がはッ!? 人間、なんかにぃぃぃッ!」
「無駄よ! この腕と脚は絶対に離さない! これで決めるぅぅぅッ!」
魔力のこもった絞め技を決められたホロは、もみじの腕と脚から逃れようと必死の形相で暴れ回ったが、ついに倒された。
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