10
――ホテルへと戻り、ルームサービスで食事を終えた
「トゥルーはどっか行くのか?」
「ワタシはちょっと調べたいことがあるからね。すぐに戻るから先に寝てて」
トゥルーにはやることがあるようで、部屋を出て行ってしまう。
部屋に残された一心は、シャワーを浴びてベットで横になっていた。
だがなかなか寝付けずに、ぼんやりと天井を見つめている。
すると、ホロがそんな彼に声をかけてきた。
「無理にでも寝たほうがいいよ。明日は大変だからね~」
「なあ、ホロ。明日のことだけど、本当にお前とトゥルー二人で大丈夫なのか?」
一心は、明日の作戦についての疑問をホロへとぶつけた。
明日の早朝に、
地下にあるという魔導具を手に入れる。
一心の仕事はトゥルーとホロの露払いだ。
侵入した二人を先に進めるために、向かって来る敵を倒すのが役割だと聞かされていた。
ある程度敵を倒した後は、すぐに建物内から脱出するように言われており、その後は指示があるまでどこかで身を潜めるというのが一心の仕事内容だ。
「心配ないよ〜。もちろん君が頑張ってくれればの話だけどね~」
「だけどよぉ。敵だってなんかしらの対策を考えているだろうし。それに、あいつらの中には俺たちと同じ奴らもいるんだろ? ……心配にもなるよ」
人間側の組織には、一心やトゥルーと同じく魔導具を身体に埋め込んだ人間――
特別な力を持った人間がいるのだ。
いくらトゥルーが強くとも、ホロと二人だけで大丈夫なのかと、一心は不安に駆られていた。
「大丈夫だよ。トゥルーなら必ずやり遂げるさ。あの子はたとえ自分の命を犠牲にしても、
「そんなのダメだろ!?」
一心はベットから体を起こし、ホロへと喰ってかかった。
そして死んでしまったら意味がないと、白いキツネに掴みかかる。
「トゥルーは幸せになるんだ! これまでずっと酷い目に遭ってきたのに、彼女が幸せにならなきゃ嘘だろ! トゥルーが死ぬなんて絶対にヤダ!」
「なら一心が頑張ればいいんだよ。トゥルーは反対したけど、ボクは君をもっと前線で使いたかったんだよね~」
「トゥルーが反対……?」
ホロの言葉に、一心は身体から力が抜けていった。
自分を救ってくれたトゥルーのために、ここ数日で自分なりに強くなったつもりだった。
元々そのために仲間にしてくれたのではなかったのかと、重要な役割から外されていたことに落ち込む。
「なんでだよ……? 俺は……彼女に信じてもらってないのかよ……?」
「そうじゃないよ〜。ただトゥルーは君に死んでほしくないのさ〜。だから自分から危険な役目を買って出たんだよ〜。ボクとしては今後のことも考えてあの子には生き残ってもらいたいんだけどね~」
「そうか……。トゥルーはまた俺のために……」
一心はトゥルーの本心を聞き、歯を食いしばった。
拳を強く握り、その身を震わせながら思う。
どうしてそこまで他人のことを考えるのだと。
どうして自分のために生きようとしないのかと。
自分は、彼女のためなら死んでも構わない、なんでもできると伝えたと言うのに。
だが一心はある決意を固め、顔を上げて言う。
「なあ、ホロ。なんとかなんないのか? 俺……トゥルーに死んでほしくない」
真剣な眼差しを向けてきた一心に、ホロはニヤリ微笑んだ。
それから宙を飛んで彼の顔に近づくと、実際に考えていたほうの作戦を話す。
「じゃあ、ちょこっとだけ作戦を変えちゃおうか。もちろん反対されちゃうだろうから、トゥルーには内緒でね」
「ああ、トゥルーが助かるんならなんだってやるよ!」
声を張り上げた一心に、ホロはよしよしと頷きながら話を始めた。
敵の注意は街で暴れているマテリアル·バーサーカーに集まる。
当然、警察や自衛隊では対処ができないため、人間たちはそれなりの戦力を投入せざる得ないだろう。
その隙を突いて自分たちは東京都庁舎に侵入し、一心が向かって来る敵の対処する――ここまでがトゥルーと話していた作戦だ。
「一心。君は建物内に入ったらボクらを気にせずに、見つけた人間を片っ端から殺してよ。できるだけ目立つように、そりゃもうハリウッド映画に出てくるような大量虐殺者みたいにね」
「なに言ってんだホロ!? 俺が離れたら……それじゃトゥルーを守れないだろ!?」
「大丈夫だって。君が派手に暴れれば、きっと敵側の
「そんなんで上手くいくのかよ?」
「いくさ。だって人間たちはボクたちの目的が魔道具だって知らないんだからね~」
一心はいまいち納得できなかった。
本当に自分が暴れるだけでトゥルーが危険な目に遭わないで済むのかと。
だが、他に彼女を救う作戦が思いつかなかったため、ホロの言う通りにすることを決めた。
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