❤これが“絶頂”

 昔のように交わることが日課になってから、毎日が発見ばかりです。

 ある日、夫がいつもと違う愛撫のパターンで攻めてきました。


「んっ、ん、んん……」


 これまでの経験ならこの場所をこんな風に触られることはありませんでした。

 撫でて、揉まれ、舌が這い、吐息がかかってきます。


「あ、ああん……」


 次に何が起こるかわからないスリリングなやり方はずるいです。

 いつものパターンなら安心して体を任せられるので、こちらにも心の余裕があるはずなのにそれが全くダメなのです。


「えっ、この姿勢で……は、恥ず……やめ、いや、やめないで」


 ミステリーじみた愛撫が落ち着いた先は今まで嫌だった後ろからです。

 入れられた時の違和感もそうですが、なんと言っても夫から丸見えになるのが恥ずかしかったのです。ですが



「あ、私、これ、れ、れ……ああん」


 普段と違う場所から攻められたせいで、興奮の仕方が違うみたいです。

 あれほど嫌っていたのに、今はどうしてこんなに感じてしまうのでしょうか。


「う、う、うん…これ、いい…い、い…」


 意識が一瞬飛びそうになるほど脳が蕩け、カラダに全く力が入らなくなります。ここのところ交わるたびに感じる今までにない感覚です。

 後ろを向けば、夫が私のお尻に目をやっています。繋がっているところを凝視しているのがわかります。こちらの顔をちょっとくらい見ても良いでしょうに…きっと慣れない視点に夢中になっているのでしょうね。

 今までなら恥ずかしいから止めてと言うところですが、今はもっともっと突いて欲しい。


 私、気が狂ってしまったみたいです。

 パンパンという音と共にまた大波が寄せてきます。シーツにできるシミは諦めて流れ身を任せ……って、意識が…あ、また…ま、たぁ……


 今までの気持ちよさが単なる“快感”でさっきまで味わっていたのが“絶頂”なんだと理解しました。快感が開発された先にこんな奥深い歓びがあったなんて。これを知らずして死ねましょうか。これを知ったらもうレスには戻れません。

 そして、これこそが“快感開発”なのでしょう。



 予定だと明日から生理が始まるはずです。いつもどおりの下腹部の違和感があるので間違いないでしょう。そのような体調の変化があるのを差し引いても、脳が受ける刺激だけでなく、体そのものが以前と全く反応が違います。

 全身から脱水症状を心配するほどの汗を噴きだし、繋がっている部分からも何度も噴水のごとく潮を出し、そこに混ざる夫の汗と白濁液と相まって、アダルドビデオで見たオイルまみれのプレイのようです。

 あれを見た時はベッドの後始末をどうするのだろうと思っていましたが、まさか自分達が毎日シーツを洗う羽目になるとは思っていませんでした。予備のシーツを買ってこないと。ついでに強力な消臭剤も必要ですね、ふふふ。



 さて、明日から心配です。何日も我慢できるのでしょうか。

 普段なら心配の優先順位が仕事だったり、家事だったりするのですが、今回はセックスのことを気にするなんて私も変わったものです。

 そんなの同棲を始めた頃以来の感情です……これ、ひょっとして母が感じていたことなのでしょうか。だから私にもアンドロイドを勧めた……ならば納得です。


 そんな両親が交わっている姿を想像すると、うふ、私達も負けてはいられませんね。

 生理中だからって、交われなくてもできることはあるはずです。

 それ、アンドロイドはわかっていますよね。じゃないと……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る