♠アンドロイドの“実践”

 妻に先程のことを話すと、興味津々という顔つきで自分も見ていて良いかと訊ねられる。

 他人ではないとは言え、何をされるかわからないことを見られるのは気が引ける。しかし、それを許してくれそうな雰囲気は微塵もない。


 結局、妻はリビングでモニターを見ることで納得した。

 ズームもカメラ切り替えもできるので、多方面から何をしているのか良くわかるようになっている。考えてみればアンドロイドが来てから暫くの間、カメラ付きで交わっていたのだから、結構凄いことをしていたのだと改めて思ってしまう。慣れとは恐ろしいものだ。



 ベッドの上で仰向けにされた俺に彼女が手を添えてくる。言われていることは一つだけ、はじめは自分に任せて、気が乗ったら自分から行動して欲しいと。


「旦那様がいつも奥様にしている愛撫を再現します」


 胸を撫でられ、揉まれ、息を吹きかけられ、舐められ……


「お、おお…うん、あ、あ……」


 彼女はいつもこんな風に感じていたのか?こんなの初めての感覚だ。

 くすぐったいから始まり、徐々に気持ちが良くなっていく。カラダから汗が噴き出すとねっとりした感じが全身を覆い、思わず声が出る。


 その後、あれこれと背中、太股、臍周り等々全身を二十分は攻められていただろうか。我慢できずに彼女を抱きしめたら、をギュッと握られ、一瞬で出してしまった。ギリギリまで感度を高められていたのだ。


「男性もこのような感じになります」


 非常にビジネスライクな口調だが、落ち着くにはこの方が良い。

一度で数回分は出たのかと思うほど大量に放出したからか、カラダも気持ちも嘘のように落ち着いている。


「時には受け身になることも大事です。それこそがコミュニケーションとしてのセックスです」


 その言葉を聞いてハッとした。

 ここしばらく、妻は同棲を始めた頃、いやそれ以上に激しく感じていた。それを見ているだけで自分は満足したし、それを当然のことだと思っていた。

 眼からの刺激を受けるだけで、それが俺へのリターンだと思っていたのだ。


「一方通行のままだとまたレスになります」


 確かにそうかも知れない。男がリードしないといけないなんてルールはどこにもない。時には流れに身を任せるのも悪くない。それこそが思いやりなのかも知れないし、自分の開発になるのだろう。


「奥様にも旦那様の気分を味わって頂くことで、セックスの奥深さがわかるはずです」


 ここまでの流れでこの言葉に納得できる。夫婦生活なんてあらゆるコトがそういうものなのだろう。


「わかった。これから実践してみるよ」

「ありがとうございます。私がいる間はできる限りのアドバイスをさせて頂きます。それでは、奥様どうぞ」


 寝室のドアがいつの間にか開いていて、そこには上気したピンクの肌を露わにした妻が立っていた。

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