黒猫の休日

@rasukukki

プロローグ

すべては1月1日に始まった。


1/1

 とある町にサイレンの音が鳴り響く。そのサイレンの音が行き着く先には、一つの家があった。黒い屋根に、二階建ての建物。サイレンの音が集まったしばらくあと、もう一つのサイレンの音がそこに入ってきた。そして、二人の大柄な男が現れ、家の中に入っていった。

 家の中は異常なまでにきれいだった。すべてのものがきれいに配置されておりほこりも見つからないほどにきれいだった。ただ一点不可思議なことがあるとするならば黒猫がいたことだけであろう。

 二人は、階段を上りその途中で立ち止まった。行き着いた先には、浴室があった。そこには、一つの死体が置かれていた。桶には水が溜まっており、見たところ死体に何一つ外傷がない。そして、一人の男が二人に声をかける。鑑識によると毒殺らしい。毒は液状タイプのものなのだが、その毒が家のどこにも見当たらず、犯人に持ち去られた可能性が高いということ。さらには、被害者は猫を飼っていなかったという事実も確認されていることを伝えた。

 死亡推定時刻は、本日零時であり、死体が発見された浴室に黒猫がいたらしい。その猫にはマイクロチップなどが埋め込まれていないらしく、野良である可能性のほうが高いらしい。どうやって野良の猫が浴室に入ってこれたのか不思議は残る。部屋は密室であり明らかに猫を意図して閉じ込めようとしないとこうならないであろう。死体が、発見されたのは昼の十二時。新年早々被害者の家で集まる約束をしていたが、なかなかインターホンに応答がなく、何度も電話をしても出なかったため第一発見者の保持する合鍵を使い中に入り、家の中を探しまわり、浴室に行き着いた時には、すでにこの様子だったらしい。と第一発見者は語っている。SNSでのトーク履歴があるためそれは事実なのであろう。死亡推定時刻のころ第一発見者は年越しそばを家族と通話しながら食べていたらしい。この事実も裏は取れている。

 被害者は、基本的に善人であり、人付き合いもよかったという。そのため恨みを持つものがいたということが考えにくい。さらに現場には不自然に指紋を消された跡もなく、自殺と考えたほうが楽であるのは確かだ。しかし、死亡時に使用された毒が即死するほどの量であったため被害者には毒を廃棄する余裕はなかっただろう。

 間違いなく、殺人であると断定した警察は、この日から捜査を始めた。

  ただ一つ述べておくことがあるならば、この世界は残酷であり、必ずしも悪よりも善が優先されるべき世界ではないことだけであろう。

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