宇宙旅行

さよならだけは言いたくないのだ。焦げたみたいなインクの匂いに顔を埋めると、吐いた息が前髪をゆらす。こたつの上で、チョコレートが溶けていっている最中だった。私の指が汚れる、銀紙にへばりつく、それを代償に、口に含んだらすぐに甘さを感じさせてくれる。ずっと、ずっとその味を覚えている。


今日だけは窓を開け放して、部屋を、身体を、冷気が包んで、そんな部屋の中で雪で遊ぶ夢を見る。


丁寧に空を見渡してから眠る。月が綺麗だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る