7話 魔法少女ランキング(3)

 ねねねが気づくと、バトルステージから食堂に戻ってきていた。


「あ、戻った。そういえば服は……?」


 ねねねは破損してしまった制服を心配して、自分の身なりを確認する。


(怪我はしてないし、焼けた制服も元に戻っている。炎が掠めたところだけ少しヒリヒリけど、後はバトルステージに入る前のままだ)

「轟ねねね――――!!」

「あ、のどか先輩」


 のどかは火でも吐きそうな怒った顔でねねねにつかみかかってきた。


「よくもやってくれたなっ! テメエ、放課後リベンジだ!」

「それは構わないですけど。のどか先輩、意外と可愛いのが好きなんですね」

「な、何のことだ?」

「ネコちゃんのパンツ、可愛かったですにゃん」


 ねねねはふざけて手で猫の耳を使ってみせると、のどかは恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。


「―――――――――っ!! お、覚えてろよーーーー!!」


 のどかは叫びながら走り去ってしまった。


「ま、待って下さい! のどかせんぱーい」


 それを見たミモザも慌ててそれを追いかけていく。


(そうだよねぇ。バトルステージの中とは言え外に全部見えてるんだから、全裸で吹っ飛ぶのは恥ずかしいよねぇ? にしても、なんで私がステッキで殴ると服が弾けるんだろ?)


 ねねねが不思議そうに自分の手を見ていると、アルトが目を輝かせて感動した様子で側に寄ってきた。


「す、すごいよ! ねねねちゃん! 木更津先輩にも勝っちゃった!」

「ありがと。でも、勝てたのは偶然だよ。実力じゃないから」

「それでも凄いよ!」


 アルトは驚きと嬉しさを溢れさせながら、ねねねを褒め称える。


「……やっぱり僕の思った通りデス」

「真菰ちゃん?」


 真菰はそう言って詰め寄ると、ねねねの手をがしっと掴んだ。


「ねねねさん、あなたをランキング序列一位にしてみせます! 我が魔道具研究部の威信にかけて!」


 真菰はフードが脱げるほど興奮していたようで、青色のおかっぱ髪の隙間からキラキラした瞳でねねねを見つめていた。


「やっぱり、フードないほうが良いよ。そっちのほうが可愛い」

「はうっ!!」


 真菰は顔を真っ赤にさせてフードをかぶろうとするが、ねねねはその手を離さず真菰の顔をまじまじと見つめた。


「は、離して下サイ!!」

「えぇ……? 素顔の方が可愛いのに……」


 そんなやり取りをしていると、キーンコーンカーンコーンと予鈴が鳴った。

 ねねねが予鈴に気を取られた隙に、真菰は手を振りほどいてフードをかぶり直す。


「ううう、ちょっとそのノリは苦手デス。けど、ねねねさん! この話の続きは放課後、魔道具研で。待っていますヨ」


 そう言い残して、真菰はローブをひるがえし食堂から出て行った。


「思わぬところに美少女がいたなぁ……」

「……そうだね」

「なんでアルトちゃん不機嫌そうなの?」

「べ、別に」


 ぷいっとそっぽを向くアルト。


(アルトちゃんも意外なところで嫉妬深いんだ。可愛いなぁ) 

「そ、それより、もう行かないと授業に遅刻するよ?」

「え? まだ肉うどん一口しか食べてないんだけど?」

「ほら、もう行かないと」

「え、えー!? わ、私の肉うどんー!」


 ねねねはアルトに手を引かれ、ほとんどお昼を食べれずに次の授業を受けるハメになったのだった。

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