4話 アルトのモノローグ
ここは国立魔法教育女子専門学校、通称「魔法少女育成学園」の一年D組の教室。
そのクラスの一員の私、天王台アルトは夏休み明けの二学期に転校生が来るという噂を耳にして、胸を躍らせていた。
「どんな娘が来るんだろうね?」
「こんな変な時期の転校でしょ? きっと凄い魔法使いじゃない?」
そんな噂話が聞こえるくらい、クラスメートたちはみんなわくわくしていた。
キーンコーンカーンコーン、と始業の鐘が鳴って、みんながあわてて席に着く。
ガラッと教室のドアが開いて中井
(可愛い子だなぁ)
健康的に日焼けした引き締まった手足が印象的で、大きな瞳と芯の強そうな少し太めの眉、不安より期待の方が勝っているような、そんなイキイキした表情の女の子だった。
「初めまして。今日から転校してきた轟ねねねです。今まで普通の学校で魔法の授業は初めてなので、色々教えてください。よろしくお願いします!」
私は自分と同じ普通校出身ということを聞いて、なんだか嬉しくなった。
(もし、友達になれるならなりたいな)
私は彼女の出身やハキハキした挨拶に好感を持った。しかし、クラスメートの半分以上はそうではなかったようだった。
この学校の生徒のほとんどは代々魔法使いの家系や魔法省に努める親からの推薦、付属の魔法小学校からの進学、テレビのタレントなど、自分に自信を持った子が多かった。私のように普通校出身で、魔法の勉強は好きだから入学したなんていうのは少数派だ。
その多数派筆頭の篠崎ミモザちゃんが、転校初日のねねねちゃんにいきなり魔法模擬戦をしかけるのを、私は止めることができなかった。
(あぁ……、またこの学校の嫌なルール「強さが正義のヒエラルキー」が始まる)
暗い気持ちになりながら、クラスメートの影からゲートから映されるねねねちゃんのバトルを見ていた。
「嘘でしょ? アイツ! なんであんなに早く動けるのよ」
「えっ? あんなダメージ受けてまだ立ち上がる気?」
「魔法を打ち返した!? どんな非常識よ!?」
クラスメートたちがざわめいていた。
クラスメートの間からその様子を覗き見ると、ミモザちゃんの放つ衝撃波の魔法を最初の一発こそ食らったものの、その後は軽快なステップで衝撃波をかわし、反撃とばかりに衝撃波を打ち返し、あれよあれよというミモザちゃんに迫って、魔法のステッキをバットのように振り回して、ミモザちゃんを倒してしまった。
(普通校出身なのに、こんな凄い娘いるんだ!)
私は胸の高鳴りを抑えることができなかった。自分の中で驚きと嬉しさが弾けそうになっていた。
魔法を勉強することが好きだったけど、運動神経が鈍い私は、成績が下のミモザちゃんに魔法模擬戦で完敗して落ち込んでいた。
彼女は他にも運動神経が悪そうな成績上位者や上級生に魔法模擬戦を挑み、次々と勝利を得ていた。
そのミモザちゃんを転校してきたばかりのねねねちゃんは、強力な魔法を使わず、持ち前の身体能力と簡素な魔法だけで倒してしまった。
(こんな娘と友達になりたい。勇気のない自分を変えて、自分から手を伸ばしたい)
体が震える。自分から友達になりたいなんて思うのはこれが初めてだ。
(頑張れ! 私! こんな時くらい勇気を出さなきゃ!)
私は自分を鼓舞して、席から立ち上がりねねねちゃんのところへ歩いていった。
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