第十四話 〈白き翼〉

 「本当なんだ!」


 アースが試験を受ける為、学園へ向かっている時に冒険者ギルドで大声が放たれた。


 受付前にいる彼らは剣士、魔法使い、タンク、ヒーラーとバランス重視のBランクパーティ〈白き翼〉。最近勢いのある冒険者達で、先日受けたアルバ大森林に生息する、赤い体毛が特徴のレッドボア討伐の報告をしているところだった。

 レッドボアを魔法鞄から出して報告をした。それを見た受付の女性ギルド職員や他の冒険者は「流石だ」と褒めた。しかし、問題があった。そう、レッドボアの体に傷がないのだ。剣で切りつけた傷もない上に、火の魔法で焼いた跡もないし、水の魔法で溺死させた訳でもない表情の為、どうやって討伐したのか疑問が起こったのだ。

 それに対してリーダーの剣士はこう答えた。


 「怒り狂ったレッドボアに追いかけられて走っていた時、何故かレッドボアが即死した」


 レッドボアの生息場所はアルバ大森林のほぼ中心に近い所で、当然中心部へ行く程魔物は強力になる。だからこそ理解できない。レッドボアが外傷なく即死することが。

 そんな時、一人の女性冒険者がある場所を指さして叫んだ。


 「あったわ!」


 ギルド内のほぼ全ての目が女性冒険者に注がれて、ビクッとしていたが続けてこう言った。


 「レッドボアの額…いえ、眉間に傷があるわ!もの凄く小さな円形の傷跡が!」


 女性ギルド職員がすぐに確認をし、「確かにある」と呟いた所で、階下の騒ぎを聞きつけたギルドマスターが顔を出した。


 「何事ですか」


 そう尋ねるギルドマスターに大まかな内容を話す、女性ギルド職員。そして、腕を組み何やら考えごとをし一分程の後、トリスに耳打ちをして部屋へと帰っていった。

 トリスは〈白き翼〉に「この件は一時保留とします。確認が取れ次第、対処します。質問は受け付けません」とバッサリ切った。何が何やら理解出来ない面々だったが、副ギルドマスターがそう言うならと、冒険者達は散った。

 〈白き翼〉へレッドボアの素材買取金として、金貨一枚が支払われ、微妙な空気のまま彼らはいつもの宿屋『羽休め』へと足を向けたのだった。




 「どうしたんだ一体!」


 宿屋『羽休め』で受付をしようと扉を開けた〈白き翼〉は、変わり果てた店内に驚きを隠せずむしろ、叫んでしまった。

 壁際に壊れた木製のテーブルや椅子が寄せられ、一階の食堂は荒れていた。受付の椅子に座る宿屋の夫人は、魂が抜けたかのようだったが、〈白き翼〉のリーダーは無理矢理、意識を持たせた。

 

 話を聞くと、夜に訪れた冒険者をろくに確認せず宿泊拒否した下の娘の言動が原因で、冒険者ギルドから「改善がなければ推薦を取り止める」と伝えられ、娘に怒りをぶつけた主人が衛兵に連れていかれた、ということだった。

 その冒険者は登録したばかりのEランクで紹介状を持っていたが、ランクの確認だけして拒否したことが騒動のきっかけだったのだ。

 しかも運の悪いことに、国王陛下と親しい冒険者だったが、娘は陛下に気づくことなく陛下に対しても「お引き取り下さい」と言ってしまったそうな。

 王族は皆金髪で、一目でわかるにも関わらず、娘が理解出来なかったことに失望したと言う。娘は泣き疲れて眠っているが、宿屋としては先が暗いと嘆いていた。


 〈白き翼〉の面々は『羽休め』から出て、別の宿屋をあたることにした。

 依頼は未達成扱いで、気に入っていた宿屋はお先真っ暗。踏んだり蹴ったりな彼らは、沈んだ面持ちで晴れた空を見上げて呟いた。


 「「「「国を出よう」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る