第十三話 試験

 筆記試験を受ける為、空き教室へ向かった。

 筆記試験の内容は、魔法と魔術の違い、属性の種類と組み合わせ、魔法の発動手順、杖の役割の四項目となる。杖の役割はスルーして他を回答した。

 筆記試験の後は訓練場へ移動した。この時、陛下へ報告し到着した騎士団にエンヴィーを渡し終えた学園長が合流。


 「実技試験を始めましょう」


 ニコニコ笑顔で開始の合図をする学園長。

 期待の眼差しが突き刺さっているような気持ちを抱えたまま、僕は魔法を発動した。






 「シリウス、彼…アース君はどのクラスに?」


 「フフフ、もちろんSクラス…と言いたいのですが、平民である彼を貴族の中に入れても大丈夫なのか?と思うんですよ」


 アルバ魔法学園の中等部と高等部には、C~Sクラスまである。

 平民は魔力量が少ない者が多い為、主にCとBクラスに分けられる。Aクラスは余程魔力量が多く技術的センスや他者を傷つけない人格が必要となる為、平民は一握りとなってしまい、SクラスはAクラスを遥かに上回る条件の為、実質不可能と言っても過言ではない。

 そこにアースを入れようと学園長は判断したのだ。


 「まぁ確かに、エンヴィー先生のことがあった後ですからね」


 貴族相手にじけることがなかった上に、従者が阻止したとはいえ怯むことがなかったことから、試験官を務めた女性は内心安堵のため息を吐いた。


 Sクラスの生徒が貴族ならば教える立場の者も貴族となる…まぁCとBクラス以外は貴族の教師なのだが。

 貴族同士の教師と生徒では、思考も当然貴族寄りとなる為、平民を加えることに躊躇いがある。

 二人して悩んでいる所に珍しい来客…国王陛下がやって来た。



 「失礼、お久しぶりです。シリウス学園長、ハーディ教頭」


 「おぉ、アルシオン陛下」


 「ッ!お久しぶりです陛下!」


 試験官を務めた女性、ハーディ教頭は他にはない六属性魔法を行使することが出来るアルシオンに、尊敬の念を抱いており無意識に表情が固くなってしまう。そのことを理解している二人が苦笑するのは仕方の無いことと言える。


 「エンヴィー・タッソは貴族籍剥奪の上、余罪追求により当面の間は牢で監視となるだろう。それで、静かだったのはアース君のことか?」


 「えぇ、筆記試験は杖の項目を除いても合格基準ですし、実技試験も問題なく私はSクラスにと思っているのですが…」


 アルシオンもそこまで言われれば理解する。


 「貴族との衝突は確実に起こる。諦めるしかない」


 「…そうですか。まぁあれだけのことを見せつけられたら、他の者も納得せざるを得ませんが」


 「ぅん?」


 「こちらがアース君の実技試験の結果です」


 ハーディがアルシオンに見せたのは、先程の実技試験で使用されたまと。それは、中心に片手の指で円を作ったサイズに、丸・三日月・星の図柄でくり抜かれた三枚の木の板だった。


 「十メートル離れた位置にあった三枚の板全てに対して”同時に”図柄を描いたんですよ。教頭である私であってもこんなこと出来ませんよ…」


 最後の方は消えそうな程に小さな声となっており、自信のないことが容易にわかる。

 確かにこれだけのことが出来るなら、Sクラスは間違いない。頷くアルシオンに諦めのついたシリウスは、アースをSクラスに加える判断を下した。何か言われればこれを出せば良い。そんな思いを持っていた。

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