第十一話 学園

 アルバ魔法学園。通称、学園。

 そこは、九歳~十二歳が通う初等部と十二歳~十五歳が通う中等部、更に上の高等部がある。

 初等部は貴族だけが通え、中等部からは貴族はもちろん平民も通うことが出来る。高等部からはより専門的な内容が学べる。

 商売や商業ギルド職員について学ぶことが出来る、商業科。冒険者やギルド職員志望が規則やマナーから戦闘まで学ぶことが出来る、冒険科。国や街の整備、文官・武官について学ぶことが出来る、国防科。この三つのコースがあり、農家や宿屋などの家業を継ぐ者以外は通うことが出来る。その際に必要となる金銭については、貴族ならば支払わなければならない。しかし、平民…特に金銭的余裕のない平民は支払いが免除される。ただし職を得た後の給料や報酬の一部から、生活の支障が無い程度を後から引かれることになる。


 と、アルシオンさんから説明を受けた僕は、自分自身が創造神としてではなく一個の命を持った人族アースとして、どこまで出来るのか、周囲の普通や常識を学ぶ為にと学園へ通うことを決めた。


 「…フゥー、良かった」


 「ちなみにいつから通えば?」


 「…………」


 「え、なんか嫌な予感が…」


 ハルシオンさんは諦めたのか、柔らかな笑みを浮かべて爽やかな感じで言った。


 「明日だよ」


 







 という話を馬車の中で思い出していた。

 今僕は、アルシオンさんが手配してくれた”平均的な貴族の馬車”に乗り、アルバ魔法学園に向かっている。馬車はガタガタと揺れてお尻が痛く…なんてことは無く、結構快適に座れている。

 やはり、”平均的な貴族の馬車”のおかげだろう。木で出来た車輪を黒い輪っかである吸収材…地球で言うところのタイヤを装備し、揺れ防止・振動軽減の為のスプリングを追加装備しつつも、見た目と内装はどこにでもある馬車という感じで仕上がっている。見た目は普通、性能は貴族並と両方の平均くらいになるように調整されている。

 なんとこの馬車、アルシオンさんからのプレゼントだ。僕も何かプレゼントしようかな。


 「アース様、到着しました」


 馬車の戸を開けて外に出た僕に、アルシオンさんが使用人としてつけてくれた、カイト・セルヴォが言う。


 「カイトは学園を卒業してるんだよね?」


 「はい。去年卒業しました」


 カイト・セルヴォ。アルバ王国が建国するよりも遥昔から、アルシオンさんの先祖達に付き従って来た、セルヴォ白銀家の者。誠実で優秀な努力家が揃っているとアルシオンさんが話してくれた。




 学園の守衛に馬車を預けて僕は、カイトの案内に従い学園に足を踏み入れた。

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