第十話 子から父へ

 「すまない、来てもらって」


 僕達は今、朝食を終えてアルシオンさんの書斎に入室したところ。これから、学園について話をするのだが…。


 「えっと、アルト君?」


 「アルトと呼んでくれ。俺もアースと呼ぶから」


 二人で話をするのかと思っていると、アルトも入室したので不思議に思ったのだ。

 なにやら、アルトは緊張しているようだしどうしたんだろう。


 「父上、勝手に同行してすみません。三つ、父上に聞きたいことがあり、来ました」


 「聞きたいことが終わったら退出するのか?」


 「はい」


 アルシオンさんとアルトの間に、バチバチと火花が飛ぶくらい鋭い視線が…。

 アルシオンさんは椅子に座り、腕を組み、「さぁ聞きたいことがあるなら聞け」と言わんばかりに堂々としていた。


 「父上にとってアースはどういった存在なんですか?」


 


 気まずい沈黙の中、アルシオンさんは瞼を閉じていた。やがて、考えごとが終わったのか口を開いた。


 「アース君は俺にとって、非常識な存在だ」


 「ひ、非常識?」


 その反応が正しいよ、アルト。

 

 「父上から見て、アースの力量はどれ程ですか?」


 あんな納得することが出来ない返答されても、めげずに質問する姿勢は素晴らしい。

 

 「俺以上だ」


 「ち、父上を…超える??」


 何も間違ってない、間違ってないよアルト。その反応が正しいしそれ以外に思いつかない。六属性魔法を扱えるアルシオンさんが認める程の力量って何?僕は神様ですか…あ、神でした。


 「父上は、アースを次期国王候補に入れるつもりですか?」


 「それは、出来ない・・・・


 「入れる入れないではなく、出来ない?どういう意味ですか?」


 「初めに三つ聞きたいと言ったのは、アルトだ。さぁ、聞き終えたのだから退出して欲しい」


 数分間、静寂に包まれていた。

 微動だにしない父と子の両者の間に、深い溝が出来たかのように子であるアルトは、父親に向けていた睨むような視線を無くして静かに退出して行った。

 質問に対する返答に、何を思い何を考えていたのかは、見当がつかなかった。


 「まさか、非常識な存在と思われていたとは」


 「あなたのような存在が平然と街中に居ては、気が休まらないんですよ」


 少し落ち着きを取り戻した様子のアルシオンさんは、ぽつりと呟いた。がしかし、すぐに真面目な顔をして学園について話し出した。まぁまぁ切り替えが早いアルシオンさんの態度に苦笑して、耳を傾けることにした。

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