第九話 閑話(トリス視点)

 私の名前は、トリス。冒険者ギルドの受付をしていますが、こう見えて副ギルドマスターです。副ギルドマスターとしての仕事も受付としての仕事もしていますし…あっ帰って来ましたね。


 「こんにちは。アルシオン様どうされましたか?」


 私の担当するAランク冒険者、アルシオンさん。彼はなんと、アルバ王国の国王なんです!村から町へ町から街へと成長させ、先祖方から受け継ぎ去年建国を果たした若き国王です!


 「やぁ、トリスさん。依頼の報告とアース君の案内だよ」


 隣には十代くらいの少年がおり、ギルド内をキョロキョロと見回していた。


 「初めまして、冒険者ギルド本部受付のトリスです」


 「アースです。冒険者ギルドに登録に来ました」


 なるほど、初登録で礼儀正しい少年なんですね。変わった服装をしてるけど、依頼をこなしてくれそう…。


 「かしこまりました、少しお待ち下さい」


 見るもの全て初めてといった感じで、鑑定や入金もアルシオン様から聞かれていた。

 けれど、アース君のギルドカード作成時には、ビックリしたわ!だって”全属性”よ?!ギルド職員のマニュアル通りに、ギルドマスター室に震えながらお連れしたわ。まぁ、その後のギルドマスターの話が衝撃的過ぎたんだけど……。


 アース君が実は神様だったってことは他言無用になったけど、誰も信じないわよ。

 これ以上のことは起こらない…いえ、起こって欲しくないと思ってたのに!!帰って来たアース君はニコニコしながら、薬草ではなく上薬草を百束も出してくれて、私は引きつった笑顔のまま鑑定し続けたわ。左右の同僚の受付嬢は笑顔を貼り付けて固まってたし……。

 

 受付での報告をする為にギルドマスター室を訪れ、書類整理をしてまとまった物をギルドマスターに渡した瞬間、目の前の景色が変わったのよ。宿屋『羽休め』に。

 失礼な態度の受付少女や、食堂の手前に座る冒険者のあからさまな睨みが、制限のある宿屋にふさわしいのかとアース君に尋ねられ、『とりあえず様子見で、改善がければギルドから薦めることを取り止める』という結果を店主に伝えたわ。


 



 今日だけでもう、お腹いっぱいよ……。

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