第三話 冒険者登録
「改めまして、冒険者ギルド本部受付のトリスと言います」
「アースです!冒険者登録に来ました!」
受付の台は僕のお腹辺りの高さで、トリスさんは腰の辺り。頭半分くらい身長が違う。
銀髪に水色の瞳で出るとこは出た身体に、黒を基調とし金色のボタンと白線入りの上下服は、真面目な印象を与えていてかっこいい。
「それではこの用紙に任意で記入をお願いします」
渡された用紙には、名前や種族、扱える魔法属性の他に出身地が書かれていたが、出身地は書かずに提出した。もちろん扱える魔法属性は、全属性だ。しかしトリスさんとアルシオンさんは信じられなかったようで……
「アース君、さすがに”全属性”というのは無理があるよ」
「そうですね。この後カード作成をするのでわかりますが、ウソはダメです」
僕は首を傾げてウソでは無いことを伝えるが、信じて貰えなかった。
そしてカード作成を進める為に血を一滴、名前を記入したカードに落とすとカードが変化していった。二人が注目するのは属性の欄で、変化したカードを見て驚きの声を上げた。
「え!?」
ヒュッ
声を上げたのはアルシオンさんで、息を止めたのはトリスさんだった。
「ね、ウソじゃないでしょ?」
と自信満々に言った僕の言葉に、いや、僕の言葉を聞くことなくアルシオンさんの目はカードに向いたまま、こう呟いた。
「”全属性”なんて…ありえない」
「アルシオン様、アースさん…ギルドマスター室へお願いします」
全身を震わせ、声まで震えてトリスさんは「こちらです」と前を歩いて行った。僕の後からアルシオンさんが無言で来るけど、僕は頭に疑問符しか浮かばない。
冒険者ギルドの二階にギルドマスター室はあった。部屋の奥にはエルフの男性が座っており、僕ら三人を中央のイスに座るよう促し自らも着席した。
「それで?アルシオン様同伴でどういったご要件かな?」
「ギルドマスター、こちらのカードをご覧下さい」
トリスさんから差し出されたカードを手に取り、不思議そうに目を動かしていく。
「こ、これは!!トリスさん…このカードはいったい…」
男性エルフの目は大きく見開かれ、ある一点に集中していた。トリスさんもアルシオンさんもこの男性も何故、全属性にそこまで反応するのかがわからず僕は首を傾げていた。
しかし僕の疑問はギルドマスターの言葉で解消された。
「今まで、鑑定でもギルドカードでも”全属性”という表記は出ませんでした」
!?
「アース君…いや、あなたはいったい何者なんだ?」
君呼びから、あなたへと変わり三人が注目していたことで、今更ながらありえないことだと実感した僕はどう答えたら良いのか、迷った。
「私はエルフです。火と風の他に人族にはない精霊魔術を扱える為、ギルドカードにも精霊魔術の表記があります。アルシオン様は人族で、闇・光・火・水・土・風の六属性を扱える為、六属性と表記されています」
もはや汗ダラダラである。
「おわかりのように、アルシオン様がエルフ族であるなら精霊魔術が追加されるのですが…アース殿、あなたのカードを見ても人族であるはずなのに…何故、”全属性”の表記なのか私は、出来れば外れていて欲しいのですが、あなたの本当の種族に見当がつきます」
この気まずい雰囲気の原因はハッキリしている。僕が、僕の存在が原因だ。誤魔化し難いこの状況に更に追い討ちをかけるように、ギルドマスターの話は続く。
「無属性は下位精霊だけが持っていることは、風の大精霊様から聞き及んでいます。仮に六属性と精霊魔術を扱えるのであれば”全属性”と言えますが、私は風の大精霊様から他の属性の存在を聞いております」
僕は斜め上方向を見ており、トリスさんは目を見開き口をぽかんと開け、アルシオンさんはギルドマスターの言葉を聞き逃すまいと真剣に聞く姿勢と、三者三様の反応をしていた。
「アース殿、あなたはこの世界の…”神”ですね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます