第四話 アース神?いえ、アース君で

 「アース殿、あなたはこの世界の…”神”ですね?」


 その瞬間、トリスさんとアルシオンさんの顔が、壊れかけの人形…ギギギという音が聞こえるかのように僕の方へ向く。

 僕は、開き直って精一杯元気良く返事をした。


 「バレちった(てへっ)」


 「ごめんなさい、ふざけ過ぎました」


 真冬の寒さ程の冷気が部屋を満たした感じがしたので、すぐに謝罪した。

 そしてトリスさんとアルシオンさんの顔を見る勇気などない僕は、ギルドマスターへと話しかけた。


 「風の大精霊から他には何を?」


 「『今は眠りについていますがもし、下界でお会いした場合は粗相のないように』と言われております」


 恐らく善意で話したのだろう。僕自身気にもとめなかったことだけど、確かに全属性となれば神属性も含まれるし、僕以外の神はいない訳だから「ありえない」ことだと理解出来る。まさか、気軽に全属性にしたことで神だとバレてしまうとは、さっきまで思わなかった。

 そんなことを考えていると、恐る恐るといったようにアルシオンさんが口を開く。


 「アース君…いや、アース神様…」


 「アルシオンさん、今まで通りにして下さい」


 キリッと真面目な表情で返答すると、ちからなさげに「…はい」と呟いた。


 「アース君…君は神様でありながら、冒険者として行動するのかい?冒険者は、その、全員が善良とは限らないんだ」


 まぁまぁの切り替えの早さで尋ねるアルシオンさんに、素直に「大丈夫です」と答えると何故かホッとしていた。

 態度の悪い冒険者くらいで町を消滅させるとかしないよ~。角という角に足の小指をぶつけさせるくらいだよ~と、考える僕は性格が悪いのだろうか。


 未だ驚愕の表情のまま固まったトリスさんを置いて、アルシオンさんと共にギルドマスター室を出た僕らは依頼掲示板へと向かった。





 お金がない上アルシオンさんから借りる訳にもいかず、僕は初めて依頼を受けることにした。


 「まず、全ての冒険者はEランクから始まる。そして、パーティで二人以上の高ランク冒険者と一緒に依頼を受けても終了とは認められないし、そもそも依頼を受けることが出来ない。理由としては、高ランク冒険者に任せて自分は戦闘や採取に参加しないのを防ぐ為っていうのと、実力の伴わないランクで無駄死にさせない為なんだ」


 「ということは、高ランク冒険者一人の同伴か自分自身で依頼を受ける、もしくは、同じランクか高ランクを一人入れたパーティを組むんだね」


 「うん。それから、依頼表は自分のランクか一つ上のランクを受けることが出来るんだ」


 なら、最初の依頼としては薬草採取が良いかな。薬草採取はどうやら常設依頼となっているから、依頼表は必要ないね。

 僕はアルシオンさんと共にギルドを出た。そのまま薬草採取に向かおうとすると、騎士が走り寄って来て敬礼をした…アルシオンさんの前で。


 「陛下!宰相殿から言伝ことづてです。『国及び街の整備や取り決めがあるので、城へ戻って下さい』以上です」


 アルシオンさんは残念そうな表情をして、騎士に返事をしてから僕の方に向いた。


 「アース君、残念だけどここまでになるよ。もし、暇があったりしたらいつでも城に来ても構わないよ」


 そう言って乗り込むと、馬車は城の方へと走り去って行った。僕は日が暮れる前に薬草採取を終わらせる為、城門へと走って行った。

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