第13話
「だぁぁぁぁりゃっ!!」
タキは飛びながらのヤクザキックを繰り出すも、よけられ、蹴りは壁に当たる。しかし、同時に壁を蹴って反対側の足で回し蹴りを繰り出す。
ハオはそれをかがんでよけ、拳を突き出す。タキは連続で繰り出される拳を後ろに下がりながらよけ続け、反撃の機会をうかがう。
「ホアタァッ!!」
その時、ハオは回転をつけながら裏拳を放った。タキは咄嗟によけ、拳は飾ってあった額縁に入った絵に当たった。額縁に拳が当たったことでガラスが割れた。
「!」
ハオは割れたガラスを咄嗟に拾い、手裏剣のように投げた。
「なっ!?」
タキは驚きながらも、下にかがみつつスライディングし、ハオに突進する。
ハオはそれを跳んでよけた。
「やるな・・・」
「へっ!てめぇもな・・・」
タキは笑ったのに対し、ハオはため息をつきながら首の骨をコキッと鳴らした。
『仕方ない・・・おい、道具持ってこい!』
ハオは中国語で劉老会のギャング達に命令を出した。すると、ギャング達が持ってきたのは銀色のアタッシュケースだった。
ハオが中を開けると、取り出したのは鎖で繋がれた三つの棍棒・・・所謂、三節棍というものだ。
「あ?なんだその武器・・・?なんかカンフー映画で見たな・・・」
「三節棍だ。俺は素手より武器での戦いが得意でな・・・特に、こいつは得意中の得意だ。」
ハオは肩慣らしに軽く三節棍を振るった。三節に分かれた棍棒が蛇のように宙を舞い、風を切る。
(・・・雰囲気が変わりやがった・・・得意なのはマジみたいだな・・・)
ハオの雰囲気は変わっていた。素手で戦っていた時は、どこか余裕を持った雰囲気を出していたが、武器を持った途端、相手を必ず殺すという意思を感じさせた。
(ちょいとやべぇかもな・・・)
二人は互いににらみ合った。互いに探りを入れ、先に動いたのなら、即座に仕留めるつもりでいるのだ。
「・・・あっ、UFOだ!!」
「えっ!?」
タキはハオの後ろを指差した。ハオは思わずそちらに顔を向けてしまった。
「いるかアホっ!!」
ハオが顔を向けた隙に、タキは飛び蹴りを食らわせた。
「ぬあっ!!」
「っしゃあ!」
ハオはよろけたが、すぐに立ち直る。
「・・・ガキみたいな手を使いやがって・・・」
「思いっきり引っかかってたじゃねぇか!!」
タキは先ほどギャング達が使っていた鉄パイプを拾い上げ、ハオに向かって振り下ろした。
しかし、ハオの三節棍で弾き飛ばされてしまい、ハオは両端の棍を持って二刀流の棍棒のように持つ。
「ド素人がっ!!」
素早い怒涛の連撃をタキに浴びせる。タキは両腕を盾にして身を守るが、徐々に押されてしまう。
「調子に・・・乗んじゃねぇ!!」
タキはストレートパンチを繰り出す。しかし、ハオはこれをよけ、腹に一撃を食らわせた。
「ぐえっ・・・!!」
タキは思わず怯み、腹を抑えた。その隙にハオは三節棍の鎖の部分を持って一本の棒のように構えた。
「ハイィィィィッ!!」
「ぐあぁぁぁぁ!!」
ハオは思い切りフルスイングし、タキを殴り飛ばした。タキは床に転がりながらも起き上がり、構えながらハオを睨みつけた。
「タフだな・・・だが、これならどうだ?」
ハオは三節棍の先の方を持ち、タキに向かって鞭のように振るってきた。
「っ!!」
タキは咄嗟に腕で防いだ。が、同時に先端の棍が背中に激突した。
「がっ・・・!?」
(な、なに・・・!?)
「三節棍の売りは死角からの不規則な攻撃!対応は不可能だ!!そらそらそらぁっ!!」
ハオは何度も三節棍を振るってくる。タキはそれらの攻撃を防ぎ、かわしていくが、死角からの攻撃には対応出来ず、ダメージを負ってしまう。
「はぁ・・・はぁ・・・!」
タキの体はキズだらけになり、息も切れそうになっていた。だが、決して倒れることはなかった。
「チッ!本当にタフな男だな・・・」
「へっ・・・そんなチマチマした攻撃でブッ倒れるほど・・・ヤワな体してねぇんだよ、俺は。」
タキはニヤリと笑いながらハオを睨みつけた。そんなタキを見て、ハオは再度舌打ちを打った。
「なら、終わらせてやる。その喉仏に一発・・・ぶちかます。それで終わりだ・・・」
ハオは三節棍を構え、狙いを定めた。だが、狙いを定めていたのはタキも同じだった。
(勝負は一瞬・・・狙うは、あそこだ!!)
「死ねぇっ!!」
タキの喉仏目掛け三節棍を突き出す。だが、タキはその三節棍に頭突きを食らわせ、先端の棍を破壊した。
「なにっ!?」
そして、懐に潜り込み、全力のボディブローをハオの腹に食らわせた。
「がはっ・・・!!?」
「まだまだぁっ!!」
ハオが怯んだ隙に背後に回り腰に腕をまわしてクラッチした。
「くたばんのは・・・てめぇだコラァッ!!」
そのままブリッジして真後ろへ放り投げるプロレス技「ジャーマンスープレックス」を繰り出し、ハオの脳天を床に直撃させた。
「か、は・・・!!」
脳天に鋭い一撃を喰らい、ハオは起き上がることなく、体を痙攣させた。
「か、勝ったぞ・・・!」
「この、バカ力が・・・!」
「一応手加減したぜ、本気でスープレックスしたら死ぬからな・・・」
その時、遠くの方からパトカーのサイレンが鳴り響いた。
『サ、サツだ!サツが来たぞ!』
「へへ、あいつら・・・恵海の救出に成功したらしいな・・・早いとこ逃げねぇと・・・」
タキの作戦で海里達に恵海を救出したら、警察に通報するように伝えていた。
ギャング達にとって、警察とのゴタゴタは避けなければならない。そしてその混乱に乗じてタキ達は逃げ出す。
「待て・・・!」
その時、ハオは体を起こしてタキを睨みつけた。
「お前・・・何者だ?」
「滝沢。滝沢真一だ。知り合いからは、タキって呼ばれてる。」
タキはそう言うと、窓からアジトを脱出した。
「滝沢・・・!滝沢ァ・・・!!」
ハオは怒りに震え、拳を強く握り床を殴った。
その後、アジトから脱出したタキは海里達と合流した。
「恵海!無事だったか!」
「はい!その・・・ごめんなさい!私のせいでこんなケガを・・・」
「お前が悪いわけじゃねぇ、気にすんな。」
ぺこぺこ謝ってくる恵海の頭を、慰めるように撫でた。
「まさか・・・劉老会相手にやってのけるとはな・・・」
その時、ウォン社長が部下を引き連れ、タキ達の前に現れた。
「社長さんよぉ、俺らになんか言うことねぇのか?元を言えば、アンタが劉老会とゴタゴタ起こしたせいだろ。」
タキはウォンに向かって指を差しながら指摘した。
「わかっておる。その詫びといったらなんだが・・・いい病院を紹介しよう。治療費は全てワシが出そう。」
「んなモンいらねぇよ。・・・それより、アンタ美味い店知らね?」
「?」
その夜、
「いやー、悪いな社長さん!」
「フフッ、遠慮なく食うがいい。」
タキ達はウォン社長の奢りで高級中華料理店で食事を振舞われた。
「うわっ、すげぇ!本物のフカヒレ!」
「北京ダックあるよ北京ダック!」
「アワビも美味しそう・・・」
「これ、普通に食べたらいくらするんだ・・・?」
海里達は高級料理を前にドギマギし、中々手をつけることができなかった。
対し、タキは何の遠慮もなくフカヒレにかぶりついた。
「うわっ、無遠慮に・・・」
「ほら、みんなも食えって!これ全部奢りだぜ!食わなきゃ損だろ!」
そう言って今度は北京ダックに手を伸ばした。それを呆れ顔で海里達は見ていた。
「というか、タキ、ケガはいいのかよ?」
「あ?大丈夫だ!頭とか体に棒でガンガン殴られたけど、平気だ!」
そう言ったタキの体はピンピンしており、少し前まで殺し屋と死闘を繰り広げたとは思えないほどだった。
「それ、普通だったら死んでるよね・・・」
「まぁ、死んでも死ななそうな人だし、大丈夫じゃない?」
「それもそっか。」
納得した海里達はタキに続いて料理を食べ始めた。
こうして中華街の料理に舌鼓し、タキ達は満足して夏の旅行を楽しんだのだった。
『次のニュースです。今日午後〇時頃、市民からの通報により、神奈川県の中華街に身を潜めていた暴力団「劉老会」の組員達が逮捕されました。事務所の中には拳銃や刀剣類などが貯蔵されており、違法に密輸・密売していたと考えられます。なお、組員達の話では、「一人逃げた奴がいる。そいつは殺し屋だ。」と叫んでいたとのことです。』
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