第2話
カン、カン、カン・・・
鍋の底をお玉で叩く音で、海里は目を覚ました。
だるい体を動かし、身支度を整える。そして1階のキッチンに降りて朝食を取る。
(だる・・・)
朝は苦手だった。昨日は深夜までソシャゲをしていたため、寝不足だった。
寝不足のせいでイライラする。だがイライラするのはそれだけでなく・・・
「おう、海里!おはよう!」
この男のせいもある。
「・・・うるせぇよ。」
小さく呟き、食卓につく。
朝食はパンだった。卵とハム、キュウリとポテトサラダのサンドウィッチ。それにインスタントのスープだった。
『いただきまーす。』
手を合わせ、一斉に呟いて食事を始める。
海里は食事を取りながら周りをちらりと見た。向かいに座っているのは留学生で台湾人のヂーミン。
外人ってのはともかく、人当たり良さそうな優男なのが気に食わない、と海里は常々思っていた。
その隣にはギャルの吉良希来里。
彼女のことは、キラリなんて痛い名前で、男の前でぶりっ子してそうないけ好かない女・・・と勝手に思い込んでいた。
その向かいで、自分の隣に座っているのは恵海だ。
いかにも根暗みたいで、普段もおどおどしている臆病な奴・・・と思った。
(気に入らねぇ・・・)
どいつもこいつも気に入らない。特に気に入らなかったのは、食卓の奥に座り、一緒に食事をするこの男・・・
「おっ、今日スーパーでタイムセールやってんな。」
滝沢真一・・・チラシを見ながら食事をしている。
「ねぇー、チラシ見ながらご飯食べるのやめてくんない?おっさん・・・いや、おばさん?」
「うるせぇ、食費は少しでも節約したいんだよ。・・・パチンコやってから行くか。」
その時、真一がボソッと呟いた。
「パ、パチンコ?」
「おう!俺の趣味の一つ!最近のソシャゲっていうの、よくわかんなくてな・・・ハハッ。」
真一はそう言ってニカッと笑う。その笑った顔も、海里は気に入らなかった。
(なんでこんなに腹が立つんだ・・・なんか、似てんのかな。あの野郎に・・・)
海里の脳裏に一人の男の顔が浮かび上がる。
「ごちそうさん。」
だが、それを振り払うように席から立ちあがる。
「なんだ、もういいのか。残った奴、包んでやろうか?そうすりゃ昼飯代浮くだろ?」
真一はよかれと思って海里が残したサンドウィッチを取り、調理台に置いた。
「うるせぇ、大きなお世話だ。」
またも真一を睨みつける海里。それを見て、真一は軽く溜息をつき、鼻の頭を掻いた。
「・・・あのさ。俺、お前になんかしたか?なんかしちまったなら謝る。気を付けるからさ・・・」
「ああっ?」
申し訳なさそうに言う真一を見かね、海里は咄嗟に胸倉をつかんだ。
「じゃあ、この際言ってやるよ!俺はてめぇのその態度が気に食わねぇんだ!誰彼構わずニカニカ笑いやがって!笑っとけば俺の気が引けると思ったか?舐めやがって・・・!てめぇなんか、とっととくたばっちまえ!!」
海里はそう叫び、真一から手を離すとそのまま出て行ってしまった。
「まいったな・・・」
真一は一言呟きながら、サンドウィッチを包む作業に戻った。
「放っておけばいいじゃん。というか、あーいうの空気悪い。」
「うんにゃ、そういうワケにはいかねぇ。ここで暮らしている以上、あいつはここの子だ。絶対アイツと仲良くなったやる!」
真一はそういうと、グッと拳を握った。
「アイヤー、燃えてるネ・・・」
「・・・それに、アイツ見てると・・・思い出しちまうんだよな・・・」
すると、グッと握っていた拳を開き、手のひらを見ながら小さく呟いた。
「チッ、クソが・・・」
学校に行ってもイライラは収まらなかった。授業中は受けるフリをして寝てしまえばいいが、休み時間はそういかない。ソシャゲをしようにも、学校にWi-Fiは通ってないし、電池を喰ってしまう。
(クソ、休み時間なんて楽なはずなのに・・・)
「ね、ねぇ、神崎さん。」
その時、隣の席にいた女生徒が声をかけてきた。名前は川久保イズミ。海里の同級生で同じクラス。
「あ?」
「にゅ、入学して一週間経ったけど、神崎さんは学校慣れた?」
「・・・ふん。」
海里は無視を決め込んだ。別に話してもいいが、今は虫のいどころが悪かった。
「ご、ごめんね・・・今日は調子悪いんだね。大丈夫?」
優しい声で心配されるが、またも無視。
そんな時・・・
「オラッ、邪魔邪魔!」
「どけよ、バカども!」
いかにも不良といわんばかりの3人組が教室に入ってきた。3人は教室に入るなり、イズミの机にドカッと荷物を置いた。
「キャッ!」
「あのさ~、俺今日ここに座りたい気分なの。どいてくんない?」
イズミに絡み始めた。理由はおそらく、弱そうだからだろう。
「えっ・・・ほ、他にも席、空いてるのに・・・」
イズミはおどおどしながら周りを見た。確かに周りに空いてる席はまだある。だが、3人にそんなことは関係ない。
「いやだからぁ、俺たちはここがいいの!」
「話ちゃんと理解してる~?」
人を舐め腐ったような態度で話す3人。
ああ、こういう奴はクラスに1人か2人はいる。無視しようか・・・と、海里は考えた。
だが、虫のいどころが悪かった海里はその場から立ち上がり、
「おい、うるせぇぞ。」
見下すように3人組を睨みつけた。
「か、神崎・・・!」
「な、なんだてめぇ!文句あんのかよ?」
「隣に俺がいんのが見えなかったかよ?俺はなぁ、今日はめちゃくちゃイライラしてんだよ。ぶっ殺されたくなかったら、とっとと消えろ!」
海里は睨みながらそう言うと、拳の骨をポキポキと鳴らした。
「こ、こいつ・・・!」
「い、行こうぜ。」
「そろそろ先公が来ちまう・・・」
「チッ!」
3人組は海里の迫力に押され、そそくさと教室から出て行った。
それを見ると、海里は自分の席に座りなおした。
「か、神崎さん・・・ありがとう。」
イズミがお礼を言ってきたが、無視をして聞こえないように振舞った。
放課後・・・
「あー、やっと終わった・・・」
海里は荷物を持ってさっそく帰ろうとした。その時、
「か、神崎さん!」
イズミが声をかけてきた。
「一緒に帰ろ?」
一緒に帰ろうと誘ってきた。だが、海里はそれを無視して立ち去ろうとする。
「あっ、待って・・・キャッ!」
イズミは海里を追いかけようとした。しかし、すぐにつまづいてしまい、床に倒れてしまった。
「はぁ・・・何してんだよ。」
その光景を見て、海里は手を差し伸べた。イズミは海里の手を握り、スッと起き上がった。
「・・・わかったよ、帰ってやるよ!一緒に!」
一瞬ため息をつき、仕方なくイズミと一緒に帰ることに決めた。それを聞いてイズミは笑顔を浮かべた。
「お前さ、なんで俺に構うんだよ?」
帰りの道中、海里はイズミに尋ねた。
「だって、さっき私のこと助けてくれたじゃない。あの時の神崎さん、すっごくかっこよかった!」
「そ、そうかよ・・・」
かっこいいと言われ、海里は照れて顔を赤面させ、見られないようにそっぽを向いた。
しかし、嬉しかった。誰かに褒められたのは久々だった。しかも自分と同じくらいの奴に。
「な、なぁ・・・イズミ・・・」
今度は自分から話しかけて、歩み寄ろうと思った。内心ドキドキしながら声をかけ、後ろを向いた。
だが、そこにイズミの姿はなかった。
「イズミ・・・?イズミ!」
路地を通る曲がり角に、彼女が身に着けていたリボンが落ちていた。
海里はすぐその曲がり角を曲がった。するとそこには、学校で追っ払ったあの時の不良が、イズミの鼻と口を布のようなもので覆っていた。
「てめぇら・・・!」
すぐさま助けようと海里は駈け出そうとした。だが、背後から来る人物に気づかず、羽交い締めにされた。
「てめぇも来てもらうぜ!」
不良3人組の一人だった。ポケットから布を取り出すと、イズミのように海里の鼻と口に覆う。
(なんだ、この・・・匂い・・・!)
布は液体で濡れていて、薬品のような匂いがした。海里はその匂いを嗅いでまもなく、気を失ってしまった。
「う・・・ううっ・・・」
海里は目を覚ました。あの時、背後から襲われ、変な薬を嗅がされたのは覚えている。その後はわからない。
「神崎さん!」
イズミの声が響いた。ふと前を向くと、イズミがパイプ椅子に縛られていた。その周りを不良3人組が取り囲んでいた。
周りを見ると、そこは殺風景な部屋の中で、工場のような場所だった。
「へへっ、目ぇ覚ましたか。」
不良の一人が口を開いた。
「てめぇ!」
海里は不良たちを殴ろうと動こうとした。だが、腕と足が縛られ、身動きが取れなかった。
「おっと、下手な動きするなよ神崎。こっちには人質がいるんだからな。」
「クソ・・・!てめぇらなんの真似だ!」
「へへ、いい様だなぁ!女のくせにイキりやがって!」
3人組はニヤニヤ笑いながら海里を見ている。
なんて気色悪い。見ているこっちが吐きそう・・・海里は心底そう思いながら3人組を睨む。
「てめらこそ、いい気になってんじゃねぇ!女2人拉致るなんてなぁ・・・情けねぇ野郎どもだ。」
状況が悪いにも関わらず、海里は3人組に暴言を吐く。すると、それを見て3人組は笑った。
「そんな状態でよく言えるな!」
「いつまでそんな口聞けるかな?」
3人組はニヤニヤ笑いながら、海里に近づいた。すると、ポケットからナイフを取り出してちらつかせてみせた。
「これからお前を裸にひん剥いてやる!」
「そんで写真撮ってネットに上げてやる。二度と俺らに逆らえないようにな!」
「ついでに一発ヤッちまうか!」
3人の言葉を聞き、海里とイズミは青ざめた。
「やめて!やめてよそんなこと!」
「うるせぇ!こいつが終わったら次はてめぇだからな!」
イズミはやめるように訴えるも、3人は止まる気配がない。イズミを無視し、3人は海里に向かって手を伸ばした。
「やめろ・・・!やめろ・・・!!」
向かってくる手に海里は恐怖を覚え、弱気になる。
弱音も吐きそうだった。怖い、怖い、怖い・・・これからされることを想像し、震え上がり、目から涙が零れた。
海里の目から涙が零れ落ちた・・・その瞬間。
「うおおおおおおおおっ!!」
雄たけびとともに何者かが廃工場のガラスを突き破って侵入してきた。
そして華麗に着地・・・と思いきや、
「あっ!?うわっ!ぎゃうっ!!」
勢いよく転んでしまい、床に顔面をぶつけた。
「お、お前・・・滝沢真一!!?」
「イテテテテ・・・お、おう。大丈夫か?」
現れたのは「タンポポ」の大家、海里が嫌いな真一だった。
「な、なんだてめぇ!?」
「俺は海里が住んでる下宿の大家だ。帰りが遅いから探してたんだよ。そしたら、海里と同じクラスの奴がお前らのこと見たって聞いたからよ。」
真一はここまで来た経緯を話しながら、不良3人組を指差した。
「なんで・・・なんで来たんだよ・・・!俺はてめぇにひどいこと言ったのに・・・!」
海里は朝に自分が真一にひどいことを言ったことを思い出した。
「くたばってしまえ」・・・そう言ったのに、何故助けに来たのか。わからなかった。
そんな海里に、真一はニカッと笑った。
「前に言ったろ?責任持ってお前らを守るってな!」
そう言って笑う真一を見て、海里は茫然とした。
確かに、前に真一は「責任持って守る」と言っていた。だがそれは単なる社交辞令のようなもので、本気じゃない。心の中でそう思ってた。だが違った。真一は本気で、自分の下宿に住む自分たちを守るつもりだと。
「さて、と・・・」
真一は軽く体を伸ばすと、不良3人組を睨みつけた。
「てめぇら・・・覚悟しろや。こいつを怖い目に合わせた分、きっちり払ってもらうからな。」
真一の眼光が鋭く光り、声もいつもより低くなり、ドスの効いた声で話す。
「う、うるせぇ!やっちまえ!」
その鋭い眼光にビビりながらも、3人は一斉に真一に襲い掛かる。
「うらっ!!」
真一は一番手前にいた不良の顔面を思い切り殴り飛ばした。すると、不良は殴り飛ばされた拍子で2メートルほど吹き飛んだ。
『なっ・・・!!?』
残った不良と海里、イズミはその光景を見て驚愕し、思わず口を開けた。
「まず一人・・・ケッ、情けねぇな。パンチ一発で伸びやがって。」
「こ、この化け物やろうがぁっ!!」
不良の一人が真一目掛けてナイフを突き出す。しかし、真一はそれを不良の手をつかんで止めた。
「こんなモンで強くなった気でいんのか?ふざけんじゃねぇぞクソガキがっ!!」
不良の手をつかんだ手に力を込めた。すると、不良の手がメキメキと音を立てた。今にも骨が折れそうだ。
「あだだだだだっ!!イ、イテェ!イテェよぉぉっ!!」
「こんなモンじゃねぇぞオラッ!痛いってのはどういうことか、たっぷり分からせてやるからな!!」
真一は手にさらに力を込めようとした。だが、その時・・・
「うわああああああ!!」
残った不良が、廃工場に落ちていた鉄パイプで真一の後頭部を思い切り殴った。
「滝沢!」
「へ、へへっ・・・!やった!」
真一を倒したと思い、笑みを浮かべる不良。しかし、
「イッテェ・・・!何すんだこの野郎!」
真一は後頭部を抑えたが、後はなんともなかったかのようにピンピンしていた。
「う、嘘だろ・・・?」
これには不良たちも愕然とするしかなかった。
普通なら後頭部を殴られた時点で死んでいるか、もしくは気を失うか・・・少なくとも重傷になるはずだった。なのに、目の前にいる男はピンピンしていて、怒鳴り声をあげている。
「もう我慢ならねぇ!てめぇら二人まとめて潰れちまえぇっ!!」
真一は叫ぶと同時につかんでいた不良を背負うように抱え込み、そのまま頭を殴ってきた不良に向かって投げた。
「う、うわああああああ!!?」
不良二人は正面衝突し、床に倒れこんだ。
「一丁上がり!さて・・・」
倒れた不良二人を、今度は足で踏みつける。
「おい、今度こいつらに手ェ出してみろ。その時はぶん殴る。報復しようとしてもぶん殴る。下宿場所を探そうとしてもぶん殴る。それでもわかんねぇようなら・・・覚悟しときな。」
「は、はい・・・!」
踏みつけながら脅してくる真一の姿に、不良二人は恐れおののいた。そして真一が足を離したのを見てすぐさま飛び起き、殴り倒された一人を連れて逃げ出した。
「ざまぁみろ!海里、大丈夫か?」
真一は海里に駆け寄ると、拘束していた縄をほどいた。すると、海里はほどいたと同時に真一に抱き着いた。
「海里・・・?」
「怖かった・・・怖かった・・・!」
海里は真一に抱き着き、すすり泣く。まるで幼い子供のように。
虚勢を張っていても、海里はまだ子供だった。こんな目に遭えば、怖いと思っても仕方ない。
真一もそれが分かったのか、ギュッと海里を抱きしめ、子供をあやすように頭を撫でた。
「よーしよし、怖かったよな。もう大丈夫だからな。」
優しく声をかけ、慰める。まるで親が子をなだめるように。それに甘えるように海里も泣いた。声だけは必死に抑えながら、何分も・・・
その後、イズミも解放し、3人は真一の知り合いがいる屋台のラーメン屋に立ち寄った。
「はい、ラーメン3つお待ち!」
「おっ、来た来た。大将、ビール1本追加!」
「はいよ。しかしタキちゃん、今日はどうしたの?女子高生二人も連れて。」
「まぁ、訳ありでな。」
苦笑いを浮かべながらビールを受け取り、グラスに注ぐ。
「ほら、二人とも食いな。ここのラーメンは美味いぞ。」
「は、はい。」
「海里、お前も。」
さきほど泣いてから、一言も口にしない海里。すると、ちらりと二人を見て、静かに口を開く。
「・・・かっこわるいとこ、見せちまったな・・・」
「かっこわるくなんてないよ!だって、仕方ないよ・・・あんなことになったら・・・」
落ち込む海里に、イズミは必死にフォローする。
「・・・俺、ずっと強くなりたいって思ってた。小さいころからずっと。そうすりゃ、もう泣かなくていいって・・・」
海里は静かに呟き、ラーメンを一口食べた。
「・・・俺と同じだな。」
海里の一言に、真一は静かに呟いた。
「は・・・?」
「俺も、ガキの頃お前と同じこと考えてた。強くなりたい・・・強くなりゃあなんだってできる。そう思ってた。でも違った・・・ただ強いってのはバカだ。本当に強いのは、自分や相手の弱さを理解できる奴だ。」
真一の言葉が海里の心に重く響く。
海里は「強くなりたい」と思ってから、相手を気にしたことなどなかった。言ってしまえば、それは自分と相手のことに理解を示そうとしなかったの同じだった。
「海里、強くなるんだったら、タンポポの花みてぇになれ。」
「タンポポ・・・?」
真一の一言に、海里は首を傾げた。
「知ってるか?タンポポってのはすげぇ強い花なんだ。何回踏まれても立派に咲き誇ってる・・・俺の大好きな花だ。」
しみじみと話しながらビールを一口飲む真一。すると、ラーメン屋の大将が笑い始めた。
「ハハハッ!タキちゃん、またその話してんのかい!」
「うるせぇ!いいだろうが!好きな花であることは変わらねぇんだから!」
からかわれながらも、それに反論しビールを飲み干す。その時、海里は大将と談笑する真一の横顔を見ていた。
(タンポポの花、か・・・こいつがこんなに強くて、いつもニカニカ笑ってんのは、そういうことなのかな・・・)
タンポポのようになりたい、そう願った男。その思想が今の真一を形作っているのだろうと思い、海里はその横顔を見つめた。
翌朝、
『いただきまーす。』
いつも通り、皆揃って朝食を食べ始める。メニューは昨日と違って白飯がメインの和食だった。
「海里、今日は全部食えそうか?」
食事の途中、真一は海里に尋ねた。その瞬間、海里以外の3人が少し青ざめた。
(いきなり何聞いてんだか・・・)
(あーあ、これはまたキレるネ・・・)
(ご愁傷様・・・)
3人は生意気なことを言った真一に、海里がまた怒るだろうと予想した。だが、
「ああ・・・食える。大丈夫だ、タキ・・・」
『!?』
海里の衝撃の一言に、3人は驚愕した。
「タ、タキ・・・?」
「うん、俺のあだ名。」
「一体いつの間に・・・?何かあった?二人とも・・・」
昨日まで真一に対して怒りまくっていた海里が、おとなしくなっている。3人は思わずざわめいた。
「ちょいと人生相談をしてな。お前らも相談したいことあったら、どんどん言えよ!」
『えー・・・』
「いや、『えー』じゃねぇだろ!相談乗るって言ってるんだから、相談しろよ!」
めんどくさそうな反応をした3人を見て、真一は思わず声を上げる。
「私ー、熱血系苦手だしー。」
「僕も古い人の考えはちょっと嫌かな。」
「わ、私も同感・・・」
「お前らなぁ・・・!!」
真一はわなわなと震え、拳を握りそうになる。
「ごちそうさん。」
真一達が話している間に、海里は食事を食べ終えた。食器を片付け、荷物を持つ。
そして、真一の方に顔を向けた。
「タキ、いってきます!」
「・・・おう!」
元気そうに笑い、そう言った海里に真一も同じように答えた。
そして海里は学校へ向けて歩き始めた。昨日のような、だるく感じるような気持ちはなく、足取りが軽く、どこまでも行けそうな気分だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます