第5話
仲間はずれが順番にまわっている。そう思っていた。いつか自分の番が来ることも薄々感じていたし、そうなる前にグループを抜けたいとも考えていた。
それでも、やはりショックだった。目の前ではっきり「嫌い」と言われても、しばらく理解が出来ずに、顔に愛想笑いを貼り付けたまま止まっていたと思う。
呼び出されたのは放課後で、教室に戻り帰り支度を始めると、当然あの三人も残っていて、私と帰るタイミングが一緒になったことを大声で嘆いていた。
私はなるべくゆっくり歩いて距離を取ろうとしたが、お喋りして歩く三人組と、一人でもくもくと歩く私とでは全く距離が開くことはなく、延々と私に対する悪口を聞かされる事になった。
意を決し、私は三人を追い越して、そのままずんずんと早歩きで家に帰った。
翌日始まったのは集団無視だ。話しかけて無視されると言うより、「あの子と話したら駄目だよ」と言っているのがそこかしこから聞こえるのだ。誰に話をする気も失せる。
数日はこの状態が続いたと思う。学校を休むことも考えた。でも、仲間はずれが順番に回っていると気づいた時、グループを抜けようかとぼんやり考えていた事を思い出し、前から気になっていた2人組に声をかけることにした。
その子たちは、いつも2人でいて、教室に漫画を持ってきて楽しそうに読んでいた。私はその子たちの読む漫画がずっと気になっていて、これはチャンスだと捉えたのだ。
彼女たちに何か思う所があったかは知らないが、表面上は快く私と接してくれた。彼女たちの読む漫画は少年漫画で、さらに少し卑猥な描写もあるものだったのだが、これはこれで面白いとのめり込むことができた。
気に入ったから貸して欲しいと家を尋ねると、嬉しそうに最新巻までの数十冊を貸してくれたのを覚えている。
今から思えば、この出来事が、私がいわゆるオタクと呼ばれる世界の扉を開いた最初のステップだったのがしれない。
話が逸れてしまったが、彼女たちのことで覚えているのはこれくらいだ。未だにはっきりと名前と顔が思い出せるほど印象的で、感謝の気持ちしかない出来事なのだが、私は結局、彼女たちとずっと一緒にはいなかった。どうしていたのか記憶が定かではないが、机を並べて給食を一緒に食べることは無かったように思う。
私は彼女たちの個性的なキャラクターが大好きで、小学校卒業まで仲良くはしていたものの、毎日ずっと一緒にいるわけではなかったのだ。
最終的に私は、少し真面目な優等生タイプの多い女子グループに落ち着いた。年相応の少女漫画を読んだり、時には描いたりするグループだった。どうやってこのグループに入ったのかは思い出せない。気付いたらとしか言いようがないが、確実に言えるのは、少年漫画の彼女たちが、私を受け入れてくれたことは、間違いなく影響しているだろう。
私は、彼女たちのお陰で自尊心を保つことができたのだ。
永い遺書 しゅりぐるま @syuriguruma
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