あなたたち本当に強いのね
賞金、といってもVRなので目録だけをもらって、表彰式は終わった。
賞金はジョーカーのVR口座に振り込まれるので、私たちは特に何も手にすることはない。
DMには山ほどのお祝いメッセージが来ている。
マッキーからのメッセージによるとパブリックビューイング会場がぶっ壊れるんじゃないかというくらい盛り上がったらしい。
カジノタワーの一階ロビーに降りて、私とリンちゃんがジョーカーの手続きが終わるのを待っていると。
「あなたたち本当に強いのね」
角が生えたギャンブル狂いが話しかけてきた。対局中もずっと和やかだったが、勝負が終わったからかより一層柔らかく笑って言った。
私、やっぱりこの人結構好きだな。
「運が良かっただけですよ。本当なら負けてました」
「あそこで国士無双なんて和了れるのは一つの才能と実力だから。ピンクちゃんに配牌降りさせるなんて良い作戦とは言えないけど、結果的にものすごく上手くいったね」
「そうですね。二度と上手くいくとは思えないですけど。お姉さんは負けちゃって大丈夫なんですか?」
「わたし? わたしは雇われで毒龍会の人間じゃないからね。もし次にこういう機会があって、探偵ちゃんが一緒に出たいって言ってくれたら一緒に出るよ」
「そんなんでいいんですか?」
「フリーのプロギャンブラーだからね。いいの。ピンクちゃんもおめでとう。お金必要だったんでしょう?」
隣で腑抜けた顔をしているリンちゃんはハッとして言う。
「そうなんですよー。あたしの好きな人が毒龍会の人に騙されて、借金背負っちゃって。それ返したくて」
「え? そうなの?」
私たちはこれまでの経緯をざっくりと説明する。
「あらー、大変だったんだね。それ先に聞いてなくてよかった。勝たせてあげたいけどプロとして手は抜けないからねぇ」
「バレますもんね。八百長やったら」
「よくあることだけど、それで信用なくしたら嫌だしね。まぁ、わたしは全力でやって2着確保してメンツも保てたし、あなたたちは優勝できたし。結果オーライね」
「ですねぇ」
「ま、あそこでビー玉みたいな目になってるイカサマ野郎はお仕置きが待ってるみたいだけど」
ジョニーはもう中の人がいるのかいないのかもわからない。
少し離れたところで微動だにしていないところを見るに、ヘッドセットを外してしまったのかもしれない。
「準優勝ですよ? ダメなんですか?」
「ダメなのよ。組織には自分たちが絶対優勝するように仕組んでるって言って大金賭けさせてるから」
「あぁ。そういうことですか」
「身元割れた参加者全員を脅したり出場できなくなるくらい痛めつけて、決勝はギャンブル弱いゴールデンファミリーをわたしとアイツが義眼に仕込んだアシストAIで軽くノすっていう算段だったんだけどね。負けちゃって、なんか大変みたいよ」
彼がやった罪を考えれば当然の報いだろう。
「ま、自業自得よね」
「そうですね」
「だよねー」
私たちはそれに関しては全面的に肯定せざるをえない。
「お待たせしたね」
ジョーカーが賞金の手続きを終えて戻ってきた。
「じゃあ、賞金入ったら日比谷藍の借金の返済お願いしますね」
「あぁ、それならもう終わってる。大会前に私が立て替えておいたんだ」
なるほど。予想はしていたが、気が利くやつだ。
「えー、なんでー? 先に立て替えちゃったら、あたし達負けたらジョーカーちゃんの借金になっちゃうじゃん」
「ははは、先に返しておけばそれ以上利子が増えないだろ?」
「そうだねー、頭いいー」
「2億を超えた利子分を誰が払うかでモメたくなかっただけさ。勝手なことをして悪かったね」
「いいですよ、別に」
打算があってのことだろうが、誰も損をしなかったのは事実だ。
「あと雀妖鬼さん、今度はニコちゃんと組んで私の代打ちで出てほしいんだけど、いいかな? スカウトしたい」
「いいよ」
即答であった。
いや、私の意思わい⁉︎
「今度は同じチームでやろうね」
「ギャンブルはもうこりごりですよ」
「いやー、探偵ちゃんはこれから先何度もこういう目に遭うと思うよ」
勘弁してくれ。
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