二人の勝率は?
「良い勝負だったねー。ジョニーと鬼の子の方がちょっと運がよかったのかな?」
「そうかもしれないですね」
私の目には毒龍会の二人の方が上手いように見えた。
スーツの二人も決して下手ではない。プロを連れて来たのかもしれないと思う。
麻雀は半荘一回程度は確かに運の要素が大きいが、その運を掴めるかどうかは実力だ。
運を取り零すようなミスがどれだけ少ないかを競うのが麻雀というゲームの本質だ。
ジョニーも雀妖鬼もミスがなかった。
おそらくとてつもない回数打って来たのだろう。トッププロでも意見が別れるような微差の選択を一度も間違えていない。
おそらく一般的にはどちらを選んでも正解だというレベルで僅かな期待値プラスを選び続けている。
「歯切れ悪いねー、どうしたの? お腹痛いの?」
そう。ガチでお腹は痛い。吐きそう。
でも、そういうことじゃない。
そういうことじゃないのだ。
「運も味方したかもしれないけど、本当に強いですよ」
「ニコちゃんの見立てでどのくらい?」
「ぴーちゃんと同じくらい。ぴーちゃんが二人座ってるようなものだと思っていいと思う」
※
パブリックビューイング会場にて。
「どうですか? 解説のぴーちゃん。決勝戦勝てそうですか?」
ニコ&リンの出番がない方の試合も観戦配信は続けていた。
じゅじゅ実況、ぴーちゃん解説で、素人のフローラにわかるように説明するという流れだ。
「かなり強いデス。正直なところ……地の雀力は相手チームの方が上かと思いマス……」
「そんなにですか?」
フローラは唖然とする。じゅじゅはかなり打てるので、ぴーちゃんが言わずとも理解していたので口をつぐむ。
「でも……勝てるって信じまショウ。相手の方が上手いかもしれません。それでも逆転があるのが麻雀というゲームなのデス」
ぴーちゃんの言葉に二人が頷く。
「ここのパブリックビューイング会場で映っている映像はタイムラグがあって、リアルタイムではありませんが、わたしたちの気持ちは届くはずです!」
「応援会場がこんな暗くては勝てるものも勝てません。アイドルの現場くらい声出していきますよ!」
アイドル三人のおかげでなんやかんや会場は盛り上がって来ている。
だが、P2015の計算では、ニコ&リンの勝率は35%程度だと出ていた。
麻雀でこの数字が出るということはやはり相手は相当な手練であり、いくら天才的に数学のセンスがあってもリンの経験不足は1週間程度でどうにかなるものではないということを示している。
ニコが足手纏いを抱えて孤軍奮闘する展開は避けられないだろうことをAIの知能だけはわかっていた。
※
「ニコちゃん、あたしはたぶん難しい展開になるとミスするし、足引っ張っちゃうと思う。でもね、あたしのフォローしようとか思わなくて大丈夫」
「ん?」
私はリンちゃんがかなり正確に状況を把握していることに驚いた。
「ニコちゃんは自分がベストだと思う選択だけしてくれればきっと大丈夫。あたしは黒子に徹する。好配牌の時以外は前に出ずにガード固めるだけなら安全牌抱えればなんとかなるから」
リンちゃんはやはり頭がいい。今の自分では勝てないから、自分はとにかく失点しないように頑張る。だから、私に点を獲ってこいと言っているのだ。
確かにそれが最善手かもしれない。
リンちゃんが狙われるのが一番マズい。
「わかりました……」
「ニコちゃんは天才だから。きっと大丈夫。それにギャンブルの神様もエンタメの神様もあたし達の味方だよ!」
「まぁ、そうですね。天才的名探偵で美少女なんで勝てると思いますね」
とりあえずそういうことにしておこう。
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