決勝戦の相手は?
私とリンちゃんは控え室に戻ってくる。
「下手だったねー、ハムちゃんとウサちゃん」
リンちゃんはすっかり緊張がほぐれたようだ。初戦があいつらであったことを神に感謝する。
神様できれば決勝戦でも、良い配牌とツモをください。
「そうですねぇ。アメリカだとあんまりメジャーなボードゲームでもないでしょうし、自分達の実力が把握できてなかったんですかね」
「VRだと国関係なくない?」
「そんなこと、わかってますよ。負けた相手を貶さずフォローすることで徳を積む戦略です」
「ニコちゃん、ホントにオカルト好きだなぁ」
「運が絡むゲームで負けた時に、あの時あんなこと言ったから負けたんだって後悔したことがないからそんなことが言えるんです」
「なんとなく言いたいことわかるなー」
「なので、とりあえず決勝の対局が終わるまでは敗者も称えておきましょう。ノーサイドというやつです」
「ノーサイド?」
「リンちゃんは本当にどうやって生きてきたのか心配になりますね。ラグビーの試合終了のこと。試合が終わったらもう敵味方なしのノーサイドだからお互いの健闘を讃えましょうってことです」
「あー、ラグビーなんだ。勉強になったよー」
やれやれ。でも、麻雀のルールとか戦略とかはあっという間に覚えちゃったし、知識に偏りがあるだけなんだよなぁ、この子。
「次の試合始まりますよ」
私は仮想ウィンドウを展開する。
ちょうど2戦目の選手が入場するところだった。
真っ赤なカーペットの上を各チームの選手が歩いてくる。
一組目が日比谷姉妹を陥れた毒龍会の幹部ジョニーと雀妖鬼だ。
「雀妖鬼って女の人なんだ!」
「アバターに角はえてますし、鬼ではありましたね」
ジョニーは写真で見たとおり、強面で顔面に大きな傷、それを隠す色の濃いサングラスをかけ、服装は派手なアロハシャツだ。
そして、雀妖鬼はすらりと長い手足の和風美人だが特徴はチャイナドレスと何より頭の二本角だ。
VRのアバターとはいえ二人とも明らかにカタギではない異様な雰囲気を醸している。
そしてもう一組も見るからに反社っぽい風体のストライプのスーツの男二人だ。
オリジナルデザインだが、汎用アバター並みに特徴がない。
先日のセミナーで出てきた女もだが、特徴を消すというのは犯罪者の常套手段なのかもしれない。
所属組織は悪狼組というらしい。
「どっちがあたしたちの相手なんだろうねー?」
「エラ君と妹さんに違法金利でお金貸した方と決勝でやりたいですけどね」
「あたしもそうだなー」
「ま、毒龍会だと思いますよ」
「なんで?」
「そっちの方が面白いからですよ。こういう時、ギャンブルの神様もエンタメの神様も観客が喜ぶ選択をするものです」
「ニコちゃんの言ってること、よくわかんない時あるんだよなー」
いつもあんまりピンと来てないだろ、とツッコミたい気持ちはあるが、今は徳をチャーているのでにっこりするに留めた。
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