いざ大会へ
リンちゃんの才能は思ったより凄かった。
数字や確率を感覚的に理解できるらしい。
この牌を残すといいとか、この牌は危ないとかいうのがグラデーションがかかって見えるという。
その考え方、まんまAIじゃん。
なんなの、こいつ。
つい一昨日まではド素人であったのにもう私の背中が見える位置まできている。
くそぅ、麻雀とかポーカーとか人狼とか推理力がモノを言うタイプのゲームは私の専売特許だと思ってたのに!
絶対ポーカーとかも上手くなっちゃうじゃん。
とはいえまだ私に二歩三歩及ばないのは、人間は必ずしも確率的に最適な選択をするわけではない、ということがわかっていないからだ。
上がり牌が8枚ある両面待ちをあえて捨てて、わざと4枚しか待ちがないシャンポン受けにしたり、なんなら上がり牌が3枚しかない字牌単騎だったり、ホンイツに見せかけた手牌バラバラのブラフ仕掛けのようなトリッキーなプレイに弱い。
ぴーちゃんにしろリンちゃんにしろ数学的に正しいプレイは意図的に損をするような打ち方に対応できないのだ。
「コンビ打ちの練習もこれで最後デス。リンちゃん、本当に上手になりましたネ。もうこの3人相手でも殆ど運の勝負だと思いマス」
「本番は大丈夫ですよ。私のおまじないで運のステータスはマックスにしておきますからね」
「まぁ、素人にしてはよくやったと言わざるをえないでしょう」
「みんな、ありがとー」
最後の牌譜検討を終え、大会前に燃え尽きかけているリンちゃんに言葉をかける。
[なんでニコは悪役みたいなことしか言えないんだ]
[リンちゃん、可愛かった! 彼氏できてもまたゲストに来てね!]
[《¥2525》最後の対局、プロ同士みたいだった]
私は素直ではないのだ。
ストレートに他人を褒めることなどしない!
そもそも私たちの戦いはこれからなのだ。
「触覚グローブにもだいぶ慣れてきましたね」
「うん、最初重みを感じないのに触った感触だけあるの気持ち悪かったけど。今度、リアルでも麻雀しよーよ」
「グリモワールでリアルの話なんてしないでくださいよ……怖いなぁ」
「ごめんごめん」
本当に悪いと思ってはいるんだろうが、この軽薄さよ。
[リンちゃんのVR内での危なっかしい感じ本当ヒヤヒヤするな]
[何回かニコの中の人のリアルのあだ名で呼びそうになってたらしいからな]
[ストリーマーじゃないから仕方ないだろ]
[これはもう今後は生配信じゃなくて、リンちゃんを見れるのは収録だけかもな]
「さて、というわけで後は大会本番を残すばかりです」
「みんな、応援よろしくー」
「あ、大会の様子はタイムラグありで配信されるそうですので、皆さん是非ともご視聴よろしくお願いしますね。運営の公式配信なので間違っても応援スパチャはしないように! 私たちに配分はありません。結果はどうあれ後日またリンちゃん呼んで報告配信はしますので」
[あー、今から緊張がヤバい]
[ニコ、リンちゃんと未来の彼氏のために頼むぞ!]
[絶対応援する!]
[もし負けたらスパチャで寄付募る配信やってくれ]
「皆さん、ありがとうございます。まぁ、ちゃちゃっと2億獲ってくるので安心して待っててください」
と言いつつ、リアルの私は胃痛と手の震えでちょっとヤバいなと思っていた。
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