クソゲーです
「クソゲーですね。運ゲー。やってられません」
「ニコちゃん……こういうこともあります」
「麻雀ってそういうゲームだから……私、本当に呪いとかかけてないですよ」
私は3着だった。
納得いかない。
ぴーちゃんがダントツトップ、じゅじゅ2着で私が3着、リンちゃんがラスである。
あとじゅじゅは絶対に私に呪いをかけたに違いない。
「まぁこの超絶不運が当日降りかからないことを祈るだけですね。ふん」
みんなの「うわー」っていう視線を感じる。
コメントも見ない。
「ともかく、牌譜検討をしまショウ」
「う、うん。あたし下手だったねー。みんなビシバシ教えてね」
「私はあまり教えるのが上手ではないですが、リンちゃんが当日勝てるようにおまじないかけておきますね」
「ありがとー」
めっちゃ不機嫌な私を置いて、みんなが牌譜検討をはじめようとしている。
VR雀卓の上で麻雀牌が巻き戻されていく。
「リンちゃんは基礎の基礎はできていマスネ」
「そう?」
「ハイ、きちんとどの牌を切ると一番受け入れ枚数が多いかは感覚的にわかっているようデス。数学が得意なのでハ?」
「そうなんだよねー、実はあたし数学専攻だからねー」
リンちゃんはストリーマーではない。一般人である。
ゆえにさらっと個人情報ギリなこと言う。
下手したら大学名とか本名とかも言いかねない。ってか、そもそもリンって本名だし。
特定されかねないようなことを言うんじゃないってことはDMで送っておく。
リンちゃんはこちらにウィンクした。
わかってんのかなぁ。
「初心者で牌効率がここまできちんとできている人はなかなかいません。才能がありマス」
「マジで! うれしー」
「同卓者の捨て牌を落ち着いて見るようにする、というのと、先制リーチを打たれた時や相手がドラや危険牌を躊躇なく切り飛ばしてきた時、逆になぜ持っていたのかわからない字牌や安全牌を切ってきたときに一瞬立ち止まって考えられるようになればもう中級者といってもいいでしょう」
実際、リンちゃんは初めて打つとは思えないくらいうまかった。
というか、そもそもルールと役を覚えて、牌効率がわかっている状態っていうのがおかしい。
さては……こいつ、めちゃくちゃ頭いいな。
私はちょっとアイデンティティの危機を覚えていた。
というか同じ大学という時点でさほどの差はないのだ。
マッキーもリンちゃんも普段の振る舞いがアホっぽいからちょっと侮っていたが、勉強できるんである。
「では、今度は全員の手牌を開いた状態で打ってみまショウ。どれを切ればいいのか判断に困る時はゲームを止めて聞いてくだサイ」
[《¥3000》リンちゃんすげー]
[すでに俺より強い]
[ニコはいつまで拗ねてんだ]
[おい、明日にはニコよりリンちゃんのが強くなるぞ]
「そんなわけないでしょ! さっきは運が悪かったんです! 本来の私はもっと強いんですよ!」
[はいはい]
[《¥2525》元気出して]
ちょっと次は私の本気を見せてやらねばならないようだ。
ん?
ジョーカーからDMが来ている。
『新たなルール追加だ。今回は触覚グローブを使って牌の手触りも再現したリアル志向でいくらしい』
『盲牌なんてしないのに。バカバカしい』
『AI対策の一環なんだろうな』
なるほど。実在の人間がグローブに手を入れているのを認識しないと参加できないわけか。
だが、もうこちらはぴーちゃんからリンちゃんに選手を切り替え済だ。
『グローブは希望すれば支給されるそうだが、どうする?』
『こういうのはフィッティングも大事なのでこっちで用意します』
『わかった』
明日、リンちゃんと一緒に秋葉原でも行って調達してくるとしよう。
だけど、その前に。
「さ、練習再開です。次こそは私の真の力をお見せしましょう! ……なんですか! みんな、その目は⁉」
―――――――
書籍の宣伝も兼ねてエッセイを書くことにしました。
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近未来ディストピアの独立系メディア風エッセイというよくわからないガワですが中身は普通のエッセイです。たまには探偵Vの話も書くと思います。
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