麻雀配信

「はい、皆さんこんばんは。探偵系VTuberの藤堂ニコです。今日から1週間は麻雀配信やりますよ」


 今日の配信は私のホームではない。

 VR麻雀卓がある麻雀専用スタジオである。

 何が普通のスタジオと違うかというと、プレイヤーそれぞれの背後から手牌を映すカメラや上部から捨て牌を映すカメラなどが設定されており、普通の配信とは違うアングルでの配信が可能なのだ。


[ニコって麻雀できるのか?]

[恋愛ゲーム以外は得意なんだろ]


 今日から1週間限定は麻雀配信をするというのは事前に予告をしていたので、リスナーは承知済みだ。

 ボディビルダーファンには過去のアーカイブや切り抜きでも見ておいてもらう。


「実はですね……かくかくしかじかで」


 最近できたギャルの友達が彼氏(予定)の多額の借金を返すので一緒に麻雀大会に出るのだが、ルールも知らんときたので集中対策講座をやるのだということの説明をする。


[ホストクラブに潜入してからなんかとんでもねー展開になったな]

[よくわからんが頑張れ!]

[その相手の男が何もせずに借金返してもらえるの変じゃね?]


「まぁ、無駄遣いで借金背負ったわけじゃなくて、病気の妹さんを助けるためですからね。こういう時になんとかできる誰かが手を差し伸べることがあってもいいと思いますよ」


[ニコがなんか聖人みたいなこと言ってる!?]

[なんだなんだ気持ち悪いな]


「そんなヤジコメント程度で怒ったりしません、なぜならギャンブルは徳が高い者が勝つからです。大会が終わった後に存分にキレます」


[やっぱちょっとイラっときてんじゃねーか]


「はいはい、もう時間が勿体無いからゲスト呼びますよ。入ってください」


 私に呼び込まれた3人が入ってくる。


「P2015デス。ただの人間に麻雀で負けることはありまセン」

「呪井じゅじゅです。みんなの配牌とツモが悪くなる呪いかけちゃいますよ」

「みなさん、はじめまして。麻雀を教えてもらうことになったリンでーす。徹夜でルールと役覚えてきたのでめっちゃ眠いでーす」


[なんかギャル出てきた!]

[《¥1010》じゅじゅ頑張れー]

[ぴーちゃんがチート過ぎる]


 3人が並んでそれぞれ自己紹介する。

 ぴーちゃんはセーラー服じゃなくてサイバーパンクスタイル、じゅじゅはゴスロリ、リンちゃんがJKスタイルだ。

 探偵、サイボーグ、ゴスロリ、ギャルの麻雀とか情報量が多過ぎる。


「リンちゃん、大丈夫デスカ?」

「大丈夫大丈夫。あたし、二徹までよゆーだから」


 リンちゃんはどうやら本当にルールと役を頭に叩き込んできたらしい。気合い入ってる。


[じゅじゅって麻雀できるのか?]

[ニワカかよ。じゅじゅは平和ナオって麻雀Vとして活動してたんだぜ]

[ニコにバラされたやつな]


 そう、今回の人選にじゅじゅが入っているのは彼女が結構麻雀やれるのを知っていたからである。

 じゅじゅ一本での活動になってからもたまに配信しているのを観るが平和ナオちゃんだった頃に真剣に取り組んでいたこともあり、腕に覚えありといったところだ。


「はいはい、じゃあとりあえず半荘一回打って、終わったら牌譜検討という流れでいきましょう! 経験者3人も手加減なしで。これで基礎的なところができたらコンビ打ちの練習です」

「呪いの力で勝ちます」

「AIに数字のゲームで勝てるニンゲンはいまセン」

「お手柔らかにー」


 とか3人は言ってるが、私は何気にめちゃくちゃ自信あった。

 推理力が最後にモノを言う麻雀やポーカーは超得意だ。麻雀はポーカーと違ってブラフを使って得するケースがレアなので、相手のブラフを看破するようなシチュエーションは少ないが探偵の“読み”の力を見せてあげましょう。


「探偵が麻雀も強いというところをお見せしましょう」

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