再びダブルVR

 私はぴーちゃんから来ているDMに依頼を受ける旨と詳しい話が聞きたいということを認めて送信した。


「これで普通にDMでやりとりできたら、ライブは純粋に楽しめるわ」

「楽しめるかなぁ。なんか不穏な感じはするじゃない」

「たしかにね。……ぴーちゃんのアカウントログアウト状態でDMに既読もつかない」


 私は少し不安になってきた。

[ワタシを探してください]というのはやはり姿を消してしまうということなのだろうか。

 だが、[探さないでください]ならまだ理解できるのだが、姿を消して[探してください]というのは"かくれんぼ"でしかない。

 私――藤堂ニコとかくれんぼがしたい、というわけではないはずだ。


「返事来ないのかもね」

「やっぱり会いに行くしかないかぁ」

「わたしも一緒に行くよ。ライブいつ?」

「今日。まぁ、昨日行ったばっかりだし、今日は行く予定なかったんだけど行くしかないか」

「地下アイドルのライブのペース、ホントえぐいね」

「まだファンが少ない子とかグループ推すのはホントしんどい。一人一人が背負う重さが半端ないから。会場にファンが来てるって見せなきゃいけないから配信じゃなくてVR会場行かなきゃいけないし、不人気って本人や他のアイドルに思われたら可哀想だからチェキも積まなきゃいけないし」

「わからんでもないけど、それで印税使い切るとかはやめときなよ」

「流石にそこまでは頑張らないけどね」


 地下アイドルはふつうに週3とかでライブをやる。

 全通してチェキも積みまくるのはとてもじゃないけど無理だ。

 できることはしてあげたいが限度がある。

 ぴーちゃんにも”ふぁんたすてぃこ”にもいつも現場にいてチェキ積みまくってVR、リアル問わずにグッズも買いまくるオジサンがいるが何の仕事をしている人なのか謎すぎる。


「やっぱ返信来ないしもう行っちゃおう」

「わかったー。VRカフェ行くの面倒くさいし。もうこのままタブレットでいいや。場所どこ?」

「カブキシティの大江戸ライブ。あと、VRヘッドセットとVRに耐えるノートPCあるから使いなよ」

「TJは用意がいいなぁ。ってか、これだけ機材揃えてるのにわたしとVRカフェ行った時に初めてみたいなフリしてたのかよ」

「VRカフェは初めてだったから。ホントに」

「ま、いいけど。でもこれあるならもうカフェ行かなくていいね」

「そうだね。でも同一空間で二人同時にやるならマイクが周囲の音拾わないようにしとかないと」

「あぁ、確かに。すぐそこで喋ってるのにお互いのマイクも声拾ってスピーカーからも声聴こえてくるみたいなことになっちゃうのか」

「ヘッドセットの設定するから、そのノートPC立ち上げてちょっと待ってて」


 私はクローゼットにしまってあるサブPCをマッキーに渡し、サブのヘッドセットを一旦自分のPCに繋いで音声設定をする。


 ――よし、これでOK。


「準備できた。はい、ヘッドセット。じゃ、行こうか」

「おっけー」

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