えーーーーーー
私たちはVR空間【グリモワール】にログインする。
今回、私は華麗な探偵少女スタイルの藤堂ニコの方のアカウントを選択している。
「しっくりきますね、この姿」
一人の時でもキャラ作りでちゃんと敬語である。
マッキーの金髪ロリと喋るときは普通でもいいんだけど、どこでファン――いるのか?――に見られるとも限らない。
まぁ、でも私の動画観てるようなファンは別に私が敬語キャラ崩したところで爆笑するだけのような気がしないでもない。
――ガチ恋とかおらんのか?
色恋営業ゼロのエンタメ特化でやっているので、ガチ恋みたいなのはいない。
いまだに中の人おっさん説もある。
この中もガワも美少女に対して失礼である。
しかし、美”少女”といっているが、大学生は少女でいいのだろうか。
良いとしよう。
マッキーは美女って感じで、少女という言葉は似合わないが、私ならおっけーであろう。
私がホームを出るとちょうどマッキーも出てくるところだった。
金髪ロリの姿である。
Kawaii!
「あれ、衣装変わってないですか?」
「ゴスロリにした。ってか、敬語なのね。ニコちゃんだから」
「そう……どこでファンが見てるかわからないですからね」
「プロだわぁ。で、この衣装だけどリアルで着てる服より高いね」
「私も新しいの買おうかなぁ。でもシャーロックホームズ風衣装脱いだらただの黒髪ボブ美少女ですからねぇ」
「ほぼリアルのTJと変わらないからね。わたしみたいにただVRの中で遊ぶ用のアバターじゃなくてストリーマーでもあるってのがややこしいところだね」
「それそれ。なんか探偵っぽさが残るかわいい衣装とかないもんですかね」
「青いジャケットに赤い蝶ネクタイとかどう? で、メガネ」
「名探偵っぽいけどかわいいかどうかは微妙でしょう。くだらないこと言ってないで行きますよ」
「はーい」
そして私たちは並んで歩き始めた。
VRでもファストトラベル早く実装されないものだろうか。
とはいえ、カブキシティは目と鼻の先なので問題ない。
ちょっと歩けば夜の世界だ。
けばけばしいネオンが眩しい。
「この偽ジャパンサイバーパンク感たまらないですねぇ」
「TJは好きそうだね」
「マッキーは好きじゃないんですか?」
「いやーなんか下品な感じだからねぇ。こういうゴミゴミしたところは住めない。わたしはなんか北欧風のオシャレな街並みが好きだなぁ」
「うわー、似合いますねー」
「なによ、うわーって」
「なんかモデル美女がオシャレなカフェで紅茶飲んでるのとか似合いすぎて鼻につくなって」
私はそういって笑った。
まるで絵画みたいだ。リアルマッキーでも今の金髪ロリマッキーでも。
「いいでしょ、別に。似合うんだから」
「いいですけどね。そろそろ着きますよ。大江戸ライブ」
「行ったことないんだよね、そこ」
「なんというか……すごいですよ。ほら」
私が指さした先にあったのは日本風の城……を小さくした感じの建築物なのだが、入口に暖簾がかかっていて、城というより銭湯のような感じだ。
そして看板は当然のようにネオン【大江戸ライブ Oedo Live】の文字が煌びやかだ。
回転する提灯も蛍光色で光り輝いている。
「ひえー。下品ー」
「これがいいんですよ、これが」
そして私が先に暖簾をくぐろうとしたところで――。
「TJ! 大変だよ!」
マッキーが大声を出す。
「なになに、この近距離で大きな声出さないでくださいよ」
「ぴーちゃん、出演取りやめだって!」
「えーーーーー」
「あんたも声デカいって」
「ごめんごめん」
「あとさらに大変なことがもう一つ」
「聞きたくないです」
「聞きたくなくても言っちゃうんだけどさ。ぴーちゃん、しばらくの間活動休止だって。今後のライブの予定も全部キャンセルになってる」
「えーーーーーーーーーー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます