早送り「FF」柚希の日記
交換日記、嬉しかったな。
宣人くんが書いた日記を何度も読み返してたよ。柚希が無理なお願いしてごめんなさい。書くのが苦手なのに頑張ってくれたよね。私の知らない宣人くんが詰まっていて本当に嬉しかった。この日記、柚希の宝物にしたいけど、最後の役目があるから、お母さんに渡しておきます。
宣人くんに良くからかわれたよね、柚希は背が低いって。お前はもっと牛乳飲めって。私が牛乳苦手なの知っているくせに。私、おちびだから、もっと背が伸びないかなって、いつも神社でお願いしてたんだよ。あと十センチ背が伸びれば、宣人くんと並んだ時、もっと近くで顔が見られるのに――。
私は悪い子です。宣人くんに、ずっと内緒にしていました。
覚えているかな、あの夏祭りで、私が巫女舞をした夜のこと。
信じてもらえないと思うけど、あの夜、夢を見たんだ。可愛いきつねさんが現れて、柚希の願いをかなえてくれると言うの。だけど願いはひとつだけ、私はどうせ夢だと思って、よく考えないでお願いしちゃったの。
――宣人くんの未来が見たいって。
きつねさんは、すぐに願いをかなえてくれた。私はいつもの通学路に立っていたの。二人で渡る駅前の横断歩道、電光掲示板に日付けが見えた。そうかこれが未来なんだ、なんでお互い成長してないの? きつねさんは嘘をついたのかな。次の瞬間、私は間違いに気がついた。
信号が変わって先に走り出す宣人くん、そこに信号無視の車が、ものすごいスピードで。
――宣人くんの未来はここで終わっているんだ。
泣きながら必死にお願いしたの。きつねさん、私はどうなってもいいから。宣人くんを返して、未来を変えてください!!
頭の中に声が聞こえたの。お前の心と引き換えに願いをかなえてやるって。
大事なことを宣人くんに話せなくてごめんなさい。
ずっと、ずうっと宣人くんと一緒にいたいな。だけど無理なんだ、ごめんね。今日は謝ってばかりだ、私。
この日記を宣人くんが読む頃には、いつもの柚希はもういないと思います。長いお別れになるかもしれません、本当にごめんなさい。
――私、もう一度あの曲が聴きたかった。
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