第12話 進む。

「なぜ、死んだ?」


 そこには、禳攬じょうらんがなき妹の残った魂を抱きしめて、泣いていた。


「もう済んだことだ。諦めろ」

「諦められるか!義理とは言え、妹だったんだぞ!?」

「だが、生き返ることはない。世界とはそういう物だ」


 窈瀼ようじょうが冷たく言い放つ。

 だが、言い放つその顔には一粒の涙が垂れていた。


「悲しいのは、お前だけではない。私も共に戦って来た仲間だ」

「なら何故そこまで冷静でいられる!?」

「これは自然の摂理だ。命あるものはやがて尽きる」

「それはそうだが」

「だからだ。今からお前にできることは精一杯弔ってやることじゃないのか?そして、前を向いて百鬼夜號を完遂させることだ。違うか?」

「そうだな。葬式の準備するから手伝ってくれよ」

「ああ」


 私は本当に死んだの?

 でも魂は残ってる。

 肉体はない。

 そう思っていると、私は閻魔の前にいた。


「貴様は罪を犯しすぎた。地獄では償えないほど」

「どういうこと?」

「そのままだ。貴様は一生現世に残り続ける。弔われる事もないまま」

「でも、兄さまが弔ってくれるはずなんだけど」

「形はな。だが、それは本当の弔いではない」

「え?」

「そういうことだ。さっさと行くがよい。現世へな。そして罪を償え。前を向いて」


 かなとの戦闘後、花火大会という事もあって、電車は凄く混雑していた。

 故に、新垣達が家に帰って来たのは、午後11時頃だった。


「「ただいまー」」

「まあ、帰っても誰もいないんですけど」

「それもそうだな」


 二人は顔を合わせて笑っていた。


「あ、先にシャワーはいります?」

「いや、私は後でいい。少し用事があるからな」

「そうですか?じゃあ、先に失礼します」


 新垣はシャワーの中で考えていた。

 花火大会でいわれたあの言葉はどうやって解釈すればいいのかと。

 俗にいう恋人という意味なのか、それとも友達という意味か。

 だが、思い出してみれば簡単な事だった。


 5分後


「あ、華格院さん?あがりましたよー」

「分かった。すぐに行く」


 20分後


 新垣がスマホを眺めていると、華格院が風呂場から裸で出てきた。


「新垣。いや、浄斗」

「はい?ってまたー!?既視感凄い!というよりかはしれっと名前で呼ばれてるし!」


 新垣は20数年生きてきて、初めてまともなツッコミをした。

 だが、華格院にとってはそんな事はどうでもよかった。

 ベッドに座っていた新垣をそのまま押し倒したかと思いきや、いきなり顔を近づけた。

 そして頬を赤らめながらこう言った。


「同じ事を言うが、改めて言わせてもらう。私と恋人として付き合ってくれないだろうか?」

「え?」

「別に嫌ならいいんだが...でも、私は浄斗がいい。」


 華格院は真面目に言ったが、新垣は笑っていた。


「は?なぜ笑う?」

「花火大会の直前に言ったじゃないですか。『自分で良いんですか?』って。」

「つまりどういうことだ?」

「はい。喜んで」

「浄斗?」

「はい?」

         「大好き」


 華格院がそう言った瞬間、お互いの唇が長く熱く触れ合っていた。

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