第10話 花火
「結構いい場所に陣取れましたね」
「そうだな」
新垣と華格院はそう言いながら、チケットを買った際についてきたレジャーシートを敷いた。
「始まるまで、結構時間ありますよ?屋台でも行きます?」
「どうせなら、全てを楽しみたいしな。行こう」
二人は人ごみの中を屋台の方向へ歩いて行く。
流石に東京近辺最期の花火大会ということだけあり、混雑していた。
「普通花火大会ってこんなに人居ました?」
ぼそっと新垣は呟く。
熱気と屋台の興奮が入り混じる中をひたすら歩く。
会場から屋台までは意外に遠かった。
「30分後に陣取った場所に集合でいいか?別々に好きな物を買った方が動きやすいと思うんだが」
「それで大丈夫ですよ」
そう言って二人は別れた。
30分後
「あ、買えましたー?」
「ああ。たらふく買ってきた。」
「じゃあお互いに見せ合いましょうか!」
新垣はそう言い、袋から品物を出し始めた。
新垣
鶏皮餃子
焼き鳥
焼きそば
豚の串焼き
ジンジャーエール
よく分からないキャラクターのラバーストラップ
華格院
チーズドッグ
焼きそば
綿飴
冷たい緑茶
某人気アニメキャラクターのフィギュア
「その一際大きいのはなんなんですか?」
「これか?」
「はい。」
華格院は包み紙に包まれた箱を開け始めた。
「え、これって!」
「何だ?知ってるのか?」
「知る人ぞ知るアルティメットの千桜白夜の覚醒シーンのフィギュアじゃないですか!」
「は......?なんだそれは......?理解できないんだが......?無駄に早口で喋られたせいで余計分からん......」
「大学の友達に勧められてアニメを見たら面白くて!ハマりかけてるんですよ!」
「そう、なのか?まあ、いい。そろそろ時間だ。始まるぞ。」
華格院がそう言った瞬間、花火が上がった。
「綺麗ですね」
「そうだな」
「華格院さんもですけど」
新垣は顔を赤らめながらそう言った。
「は......?」
華格院は驚いた表情をしているが、その横で、新垣は買ってきた食べ物を食べながら、花火を見ていた。
「いやー、綺麗ですねー!あと、なんかこの串焼きめっちゃ美味しいですよ!一本入ります?」
そう言った新垣の顔の横に華格院は顔を近づけた。
そして静かにこう言った。
「好き」
「え?」
華格院は新垣を押し倒した。
「あ、あのー?ここ、公衆の面前ですよ?」
新垣の唇に華格院の唇が触れた。
「昼の答えを聞いてもいいか?」
「え?」
「私と付き合ってくれないか?恋人として。」
「自分で良いんですか?」
「新垣じゃないと嫌だ。」
こんな会話をしている時に聞こえてきた、聞いたことのある声。
「おーおー。お熱いねぇ」
聞こえた瞬間、華格院の顔が変わった。
「黙れ。かな。何をしにきた」
「何って。それは、大量殺戮。と言うことで、みんな死んじゃえ」
かなが言った瞬間、その場にいた新垣、華格院、以外の人が一斉に倒れた。
「え?」
さらにその周りにいた人も倒れた。
「みんな離れろー!」
新垣は精一杯叫んだ。
「ギャー!なんだあれ!?」
「えーおもろそー。動画とろー」
「っちょ、アンタあたしの彼氏でしょ!どうにかしなさいよ!」
「いや出来るかい!何言うとんねん!ワイの彼女!」
「ママ―!?どこー!?」
周りはカオスだった。
全力疾走で逃げる人もいれば、動画をとる配信者。
さらには、典型的なバカップルに、はぐれた親子。
そんな状況の中で、華格院は叫んだ。
「新垣!妖刀を出せ!この場で!かなを殺す!」
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