第8話 序破急

 かな達が去ってから、1時間程時間が経った頃、新垣達は作戦会議の様なものを開いていた。


「俺ってそんなに狙われるんですかね」

「だろうな」

「妖を狩ってはいないが、私と同居そして共に行動しているからな。何ら不思議ではない」

「既に一回妖に殺されたんですから、二回目も妖に殺されるのは嫌ですよ」

「まあ、何はともあれ直に大量殺戮が連続して起こるぞ」

「確かな事は分からないが、東京を中心にされるだろうな。私がいるんだからな」


 序破急の序にも達していない状況のなか、何が言えるのか。

 そこは分からないが、適当にそれっぽい事を言っておけば行ける。と思っている華格院である。

 新垣は真面目な顔をしてこう言った。


「どんな状況であれ、俺は華格院さんと手を切ったりしません。最後までやりきります」


 華格院は安心したようなしていないような、微妙な顔をしながら、笑った。


「新垣」

「はい?」

「ありがとうな。感謝する」


***


「おい、窈瀼」

「何?」

「あの人間は殺せたのか?」

「多分な。だが華格院が生き返らせただろう」

「あいつか」

「お前ら五月蝿うるさい。そんなに殺したいなら、さっさと開始させろ」

「そう言う禳攬がやれよ。お前が一番仕事してねえじゃねえか」


 三人の人型の妖が酒を飲み交わしながら喋っていた。

 左から順に禳攬じょうらん窈瀼ようじょう縻盱罏みくろである。


「三大妖としての威厳は捨てられたものではない」

「まあ、あとちょっとの間はかなに任せるか。それでいいか?お前ら」

「無論。反論は無い」

「それでいい」

「聞こえてたかー?かなー」

「分かったー。兄様ー」


***


「そう言う事だな」

「いやいやいや。おかしく無いですか?それ」


 新垣は食い下がらない。


「明らかにこっちが不利じゃ無いですか。」

「そうは言ってもこっちには二人しかいないんだぞ?」

「二人では流石に無理じゃ?」

「いい加減に腹をくくれ!」


 華格院は急に大声を出した。


「やり通すと決めたならやれ。違うなら今すぐ死ね。どっちだ。選ばせてやる。というかさっきお前、やり切るって言ったよな」


 華格院は新垣の首を掴んで新垣の体を持ち上げた。


「分かりました!分かりましたから!やります!やりますって!ちょ!首が!」


 軽くも無い重くも無い音がした。

 頭から新垣がベッドに落ちていた。


「もう寝ろ」

「え?シャワー入ってないですよ?」


 そう言った瞬間。

 新垣の唇に華格院の唇が触れた。


「ー!?」


 華格院が離れ、新垣は動揺を隠せていなかった。


「忘れてないからな」

「はい!?」

「いいから寝ろ。生き返ったばかりだから汚れも無いはずだ」


 新垣は眠りに落ちた。


 その夜。


 華格院は一人で夜道を歩いていた。


「妖力解放」


 茂みから、化け物が出てきたが、一瞬で華格院に斬り殺された。


「ッチ!三下が出てこい!そこにいるのは分かってる」

「ギョエル!?」


 出てきた妖は呻き声を上げて倒れた。


「おい。知ってる事を吐け」

「お、お前は!華格院なのか!?」

「なんだ?手足と指を一本ずつ切ってやろうか?」

「ひ、ひぃ!」

「嫌ならさっさと吐くが吉だぞ。」

「わ、わかったから!」


 そこから華格院が聞き出した情報はこうだった。

 やはり予想通り、百鬼夜號は東京中心。

 そして、中心となって動いている妖は3名。

 序破急にすると、序にも達していないという事だった。


「分かった」

「た、助けてくれるのか!?」

「馬鹿か貴様は。死ねぇッ!」


 妖は体液をぶちまけた後、塵になって消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る