第七話 魂の復活

ここはどこだ?あの横たわってるのは、俺の体?じゃあ、今俺はどういう状況なんだ?幽体離脱とかいうヤツか?死んだってことなのか?


「にわかには信じがたいけども......」


そう呟いて上を見上げると、山なだけあって、とても綺麗な星空が頭上にはあった。それを見ていると、死んだのだなーという自覚が出来るようになってくる。


「死んだのか。俺......」


別に華格院と過ごした時間は短いが、一度約束してしまった以上、その約束を果たせなかった事に後悔が残る。

そんな事を思っていると、華格院が地面に刀を作った時とは違う文様を描き始めた。

そして、その描き終えた文様の上に新垣の肉体を運び、呪文を唱え始める。すると、段々自分の自覚が薄くなってくる。


「生き返らせようとしてる!?そんなこともできるの!?」


新垣が驚いていると、完全に幽体離脱の状態が終わり、突然視界が真っ暗になった。


「......がき.......!新垣......!起きろ!」

「ーッ!」


気づくと先程まで見ていた、自分の体に戻っている。どうやら、本当に生き返ったらしい。


「良かった.......。お前、魂だけ別のところにあっただろう?普通、死んだら一定時間は肉体に留まる筈なんだがな。お前はすぐに魂だけになった。新垣、お前には才能がある」

「は?何の才能ですか?」

「妖力だよ。現代人にしては中々いい感じだ。まあ、そんな事はどうでもいい。帰るぞ」

「そうですね」


いつもの様に、手を握れとジェスチャーをひてするので、の手を握れば、気づくと家に帰っている。

新垣も華格院もシャワーを浴びたいというのは一緒だったらしく、気づけば二人揃って浴室に向かっていた。ましてや、華格院は服がはだけ、裸体で戦っていたので、新垣と比べると大分酷い。


「先シャワーどうぞ」

「いいのか?どうせなら、風呂を沸かして、一緒に入ったっていいんだぞ?」


新垣は戸惑った。


「まあ、無理にとは言わない。だが、出会ったときの言葉は忘れないからな」


そう言うと、華格院は新垣を浴室から追い出し、扉を閉める。その瞬間、新垣に疲れが押し寄せる。そして、倒れこむようにソファに横になった。

とりあえず、新垣はテレビをつけた。


「緊急速報です!」


テレビから緊迫した表情のアナウンサーが現れた。


「某巨大ホテルにて、従業員、宿泊客のすべてが、一瞬にして何者かによって殺されました」


外からサイレンの音が聞こえてくる。


「何か音がする。と警察が通報を受け、駆け付けた時には、すべて、血を流さずに死んでいた。とのことです。何か知っている人が居ましたら、連絡をお待ちしています」

「まさか、ついに百鬼夜號が始まったのか?」


いつの間にか華格院がソファに座っていた。


「違う」

「華格院さん!上がってたんですか?」

「これは準備に過ぎない」

「え?」

「つまり、まだまだ序破急の序にすら達していないということだ」

「それだけでこれですか!?」


華格院は真面目な表情を浮かべ宙を睨んでいる。

新垣はシャワーに入ろうとするが、体が急に動かなくなった。


「ー!?」

「落ち着け」


このマンションの周りを何かが動いている。

その事実だけは肌で感じた新垣だったが、状況は理解していない。

突然、新垣の横を見えない刃が掠めていった。


「下手に動くと死ぬぞ」

「二回目の死は嫌です」


華格院は急に新垣を突き飛ばした。


「出てこい!三下!」


何もなかった空間から、どす黒い化け物と、人型の妖が出てきた。


「久しぶりだね。華格院」

「かな。寝返ったか」

「だって強い方についた方が楽しいよぉ?」

「まあ、今回は戦わないけどね」


かなと呼ばれた人型の妖はそう言った。


「は?」

「一つ忠告してあげる。百鬼夜號を止めようとするのはやめた方がいいよ。特にそこの人間君ね」

「え?」


新垣は驚いた表情を見せた。


「三大妖が、何としても君を殺そうとしてる。死にたくなかったら、華格院と今すぐ手を切った方がいいよ」


だが、新垣は迷いもせずにこう答えた。


「華格院さん。俺は手を切ったりしません」

「かな。そういう事だ。私たちは辞めない」

「そう。なら私は帰るわ。行くよ」


そういってかなは消えていった。


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