第6話 心ノ契約
刀を作った後、再び華格院の転移で家に帰り、華格院がシャワーを浴びている間、新垣は夕食を作っていた。
今日は買い物に行っていないので、冷蔵庫にあった余り物で適当に作ったが、中々いい出来ではないだろうか。
「そういえば、心ノ契約ってなんなんだろう」
机に配膳しながらそう呟いていると、同時に華格院の声が聞こえた。
「上がったぞー」
「あ、晩御飯できてますよー」
「感謝する」
そう言いながら席に着く華格院を見て、新垣も座る。
「「いただきます」」
「うん。美味い」
「よかったです。関係ないですけど、心ノ契約ってなんなんですか?」
新垣は先程疑問に思った事を質問してみる。
「心ノ契約か?簡単に言うと、相手の情報の一部を感じる事ができる様になる契約だ。お前にはまだ早い。胸のあたりに意識を集中させてみろ。何か感じないか?ついでに妖力の色について説明してやろう」
「はあ」
華格院の説明をまとめるとこうだ。
妖力には段階が存在しており、その最も初歩的な段階が、「紫」という事らしい。
順番に並べると、「
もちろん、修行すれば色が変わり、紫から銀に成長させる事ができるらしく、色が強いほど、妖力の基礎能力も高い。
つまり、努力次第でどうにかなる物だ。
「分かったか?」
「まあ、何となく」
「わからなくても大丈夫だ。そこまで重要なものでもないしな」
その後は特に会話をすることもなく、二人にとっての時間が流れていく。
大分、時間が経ち二人が布団とベッドで寝ている時、華格院の体が光り出した。
新垣はその光で目を覚ました。
「え!?大丈夫ですか!?何事!?」
光が強くなっていき、光度がピークに達した時、華格院の服が爆散して飛び散った。
「一体何が起きてるんだ!?わけが分からん!」
その時。
「見つけだぞ。華格院」
急に、ベランダの窓が開き、白く長い髪を持ったイケメンな男が部屋に入ってきた。
「お前誰だ!?妖!?」
華格院は冷静に妖刀を取り出しながら攻撃を仕掛ける体勢を取る。刀を構え、妖力を解放するのが分かる。そして、新垣にこう叫んだかと思うと、謎のイケメンに妖力の弾丸を放つ。
「何をぼさっとしている!早く妖刀を出せ!」
「わ、分かりました!」
「妖刀・撃!そして、転移!」
新垣が妖刀を出した瞬間、その場にいた三人がいつもの山奥に移動していた。
移動したと認識した瞬間、新垣は妖刀を解放し、作ったばかりの妖刀である「紫・白狼」から斬撃を放つが、
軽々しく弾き返されてしまい、刀を構え直す暇もなく、敵が攻撃を仕掛けてきた。
「そんなものは効く筈がないだろう?出直してこい」
敵の体から衝撃音と共に、波動が撃ちだされる。
「新垣!避けろ!」
華格院がそう叫ぶがもう遅い。圧倒的な速度を伴った波動の前には叫んだ言葉すら無意味だ。
新垣は後ろに吹っ飛び、地面に妖刀を突き刺し受け身を取ろうとするが、派手に地面を転がり、その場から動けなくなる。
「窈瀼!アイツに手を出すのは止めろ!」
「唯の人間じゃないか。何か問題でも?」
「問題しかない!今この場でお前を殺してやる!理由なんかないがな......!」
「一人の人間を気絶させられただけでそこまでの感情になるとは。最強の妖も落ちた物だな」
華格院と窈瀼が睨み合いながら、攻撃の機会を伺う。両者の周りの空気は重くなっている。
「妖力......解放......」
新垣が立ち上がり、苦しそうにそう言う。
「じゃあな。人間」
窈瀼が新垣の正面に飛びこみ、新垣の身体を鋭い爪のような物で貫いた。そして、血が吹き出す前に後ろに退く。
「グハッ」
新垣は口から赤黒い血を吐き、倒れる。
「新垣!」
そう言って駆け寄ろうとした矢先、華格院の体に激痛が走る。戦いの間、敵に背中を見せては行けないというのは、最早常識だ。
彼女も新垣の様に身体を貫かれたのである。彼女の身体は慣性の法則により、正面に倒れ込んだ。
「グッ.......!」
その様子を見届けた窈瀼は、憎らしい勝ち誇った笑みを浮かべ、捨て台詞を吐いて闇に消えていった。
「近いうちにまた会おう、華格院よ。私は一度戻る」
二時間後
どのくらいの時間が経ったのだろうか。
新垣を助けなければならないと分かっているが、思うように体が動かない。
ふらつきながらも、新垣のそばに行き、体を揺らしながら呼びかける。
「新垣......。大丈.夫か......?おい!」
だが新垣は目を覚まさない。何とかして新垣を生き返らせなければならない、という執念で華格院は回復を始めた。
「私が、お前を守れなかったからだ。ゴバッ!すまない」
また、ある男も同様に。
そして迷える魂も。
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