第6話 花の街⑤




秘密基地みたいな狭い廊下の先の部屋の扉を開ける。





「うお、結構広いじゃん」



部屋には、ベットが一つに、ベランダ側にはテーブルと椅子。

家具はかなり年季が入っている。


靴を脱いで、ベットに寝転がる。



はぁー・・・



全然知らない場所・・・

全然知らない天井・・・

全然知らない匂い・・・



これって、『旅行』って感じがする!



くぅ・・・



旅行なんて贅沢、しばらくできないと思ってたから、なんか嬉しい・・・



トントン!



悦に行って居たので、ノックの音にびくつく。

お婆さんが何かを伝えにやって来た。



「今日の入浴時間は、女が17:00〜18:00、男が18:00〜19:00だよ、食事を作るのは、20:00までだ」



(お風呂あるんだ・・・ヨーロッパ風な感じだから普通に無いのかと思ってた)


「えーっと、俺以外にお客さんって居るんですか?」



「ああ、女の客が一人さね」



女の客という言葉で、『お婆さん』みたいな人物が思い浮かんだ。





$$$





お風呂は、半分テラスみたいな、ほぼ屋外の場所に、小さめのバスタブにお湯が注がれている作りになっていた。


はぇ・・・露天風呂みたい


足先からゆっくり浸かる。

少しぬるめだが、いい温度だ。



ちょうど丘の上に建っているここからは、街と湖と山が一望でき、街の明かりが湖に反射して綺麗だった。



(絶景・・絶景・・)



ヨロがついて来て、足下で尻尾を振っている。


(そういえば、この犬、風呂好きだったな)


母曰く、最初はお湯嫌いだったらしいが、徐々に慣れて、ついには、風呂をせがむ様になったらしい。



風呂桶にお湯を入れ、水も入れて冷ます。


(こんなもんか・・・)


ヨロもお湯に浸かり、気持ちよさそうな顔している様に見えた、いや、やっぱりいつもと変わらないかも・・・



ぼんやり浸かっていたら、ずいぶん長湯になってしまった。



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