いつも俺のことを馬鹿にしてくる完璧超人な妹が俺を好きなはずがない

夜桜ユノ【書籍・コミック発売中!】

第1話 俺は妹に嫌われている


 高校二年生の俺、佐倉聡一(さくらそういち)の朝は早い。


 小鳥のさえずりを聞きながら、午前6時に起きる。


 そして、日課の早朝ランニングをするためにトレーニングウェアに着替えた。


(……あれ? またシャツが一枚減ってる気がする。まぁ、白の無地ばっかりだから気のせいか……)


 そんなことを考えつつ、部屋を出る。


 すると、見計らったかのようにすぐ隣の部屋の扉も開いた。


 パジャマ姿で出てきた黒髪の美少女が俺を見て大きなため息を吐く。


 彼女は佐倉玲奈(さくられな)、俺の義妹だ。


 寝ぼけた俺の夢ではなく、こんなに可愛い妹が本当に存在しているのである。


「なんで朝一番からあんたの顔を見なくちゃなんないのよ。本当に最悪の気分だわ……」


 そう言うと、玲奈は舌打ちをしながら俺の顔をじっと睨んだ。


「お、起きる時間を少し遅くすればいいんじゃないか? 俺はいつもこれくらいの時間にランニングに出発してるから――」

「女の子は朝の準備に時間がかかるの! 全く、聡一そういちは本当に何も分かってないのね」


 当然のように俺は『お兄ちゃん』とは呼ばれず、名前呼びである。


 家族として距離を置かれている悲しい現実から目を逸らして俺は不機嫌そうな玲奈の顔をじっと見つめた。


「……何よ?」


「いや、今日も寝ぐせ一つないし、顔もメイクしたみたいに綺麗だし、本当に玲奈は凄いなって思って。寝巻ですら新しいの着てるし……誰に見せるでもないのに、やっぱり徹底してるな」


 普段からの美意識の高さを褒めたつもりだったのだが、玲奈は顔を真っ赤にして怒り出す。


「はぁ!? な、何いきなりバカみたいなこと言ってるのよっ!? 私は忙しいからさっさとランニングにでも行って!」


 玲奈はそう言うと、何故か俺の部屋のドアノブに手をかけた。


「そっちは俺の部屋だぞ?」

「――あっ!? ま、間違えたのよ! いいからさっさと家を出て行って! 邪魔でしょうがないわ!」


 こうして、俺は居場所を追われるように家を出て行った。


        ◇◇◇


 ――ランニングから帰ってくると、トーストとコーヒーの良い香りがした。


 リビングの食卓にはポテトサラダと綺麗に焼かれた目玉焼きも添えてある。


 玲奈が朝食を作ってくれたのだろう。


「いつもありがとうな」


 そう言うと、玲奈は再びため息を吐いて俺の事を睨む。


「だから、ただの私の料理の練習だって言ってんでしょ」

「そ、そうだったな。でも嬉しいからさ」

「……良いからさっさと食べて」


 トーストをかじりながら思い返す。


 俺が中学3年生の時に父親の再婚相手の連れ子として義妹になった玲奈れな


 玲奈はとても可愛くて綺麗だし、頭もいいし、俺なんかとは比べモノにならないくらいの高次元の存在だった。


 だから、俺もその時から玲奈が恥をかかないように運動も勉強も必死に頑張った。


 だけど、まだまだ兄として認めてもらえるレベルには至っていないらしい。


「あんたを兄としてなんて、見られるわけないでしょ?」


 最近言われたそんな玲奈の言葉が心に刺さる。


 まだまだダメなお兄ちゃんだけど、少しは玲奈に認めてもらえるようにもっと頑張ろうと決心して俺は朝食を食べ終えた。


 ――――――――――――――

【ご挨拶】

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