第11話 

目的の降車駅までは30分程度…


私は音楽を聴きながらも、周りに神経を集中させる。


今日、ざっと見たところ、ホームにあの男はいなかった。


もしかしたら今日は、乗っていない可能性もある。


そんな風に勝手に自分のいいように解釈しながら、

スマホの音楽を変えようとしたとき、


ザッザッ…と、

随分遠くで、聞き覚えのある足音がした、…気がした。


ドキリと…心臓が鳴る…あの音は…前に聞いたことがある。


あの、足を少し引き摺るような、足音… 特徴的な足音…



怖くて後ろを振り向くことが出来ない… 

でも…もしかしたら…あの足音は…


…考えている間にも、   


ザッ…ザッ…     その音が近づいてくる…


あの音は…やはり、あの男…あのサングラスの男の足音…きっと、そうだ…


私の背後…すぐ…近くまで、その音が近づく。

ほんの一瞬だけ、通路に視線を走らせると…やはり、あの男…だった…

サングラスをかけて、こちらを見ている…その口元がいやらしく、にやついている…


気持ちが悪い…なんで…? …?


やっぱり…乗車していたのか…ホームの…どのあたりにいたのか、さっぱりわからなかった…


ドサリ… 荷物を座席に置く音…。 え…?


私のすぐ後ろの座席に…その男は座った… 


この車両は私が乗るいつもの車両とは違う、一番最前列の車両なのに…


なぜ…わざわざ、ここまで移動して来て…私の近くに座るのか…


本当に、意味が分からない…



この男は…


やはり私を狙って…


今日この…


一両目の車両まで、わざわざ移動してきたのだろうか…











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