第3話

もう一度、そちらを静かに見るが、やはり男の表情は変わらず、

口元が笑った形のまま…顔は…やはりこちらの方向を向いている。


サングラスの奥の目線の先を知りたいが、わかりようがない。

目線はともかく顔がこちらを向いているため…なんとなく、気味が悪い。


思い返すと…いつも私の視界内に、この男がいた…ような…気がする…


確か昨日も、駅のホームに立っていた。

私が乗り込む乗車口とは違う、いくつか向こうの乗車口に…

なのになぜか…昨日も近くに座っていた気がする…


あらためて、…そっと確認する。


ジャージ素材のまるで作業着のような格好でボディバッグを手にし、暗めのサングラスをかけている。


いわゆるサラリーマンのような格好ではなく…

どんな仕事をしているか、一見してわからない男。


年は恐らく、30代後半~40代前半。長身で細身。


私はその男の方を向くのが怖くなり、音楽を聴きながらスマホを触り、気にしていないフリをする。


すると…男が、突然…席から立ち上がる。

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