第2話

私が座っている位置から数メートル先…斜めの方向に位置するボックス席。


そこに、私の対面方向に座る一人の男。

サングラスをかけていて、目元は全く見えない。


足を組んで、身体を中央の通路側に傾くようにしてかなり斜め方向に…つまり、こちら側を向いて座っている男がふと、私の視界に入る。


何気なく、そちらを一瞬だけ見やると、その男の口元が…微笑んでいる…

ニヤリと…こちらを見ながら笑っているようにも…見える…


サングラスで目線がわからないために、こちらを見ているという確証はないが…なんとなく気味が悪い…


私は素知らぬフリをしながら、できるだけ自然に、ゆっくりとその男から目線を外す。


あの男…どこかで見たことがある…

何度か…    いや違う、何度もだ…。


どこで見たのか…私は記憶をたどる…思い出せない… 

いや、…思い出した…


正確に言うと…思い出したというより…  たった今…、気付いた…。


男は多分、毎日のようにこの電車に乗っている男…


しかも恐らく…私が乗車する駅から…つまり私と同じ駅から、朝、乗車している…男。


何度か、駅のホームで見かけた気がする…

    

            その男、だった…




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