第5話 『恋人探し』 1
『…………つまり。その、恋人さまを、見つけて、供養させる必要がありますな。』
『ぜひ、お願いいたします。』
『はあ。相手がなんと、言いますかなあ。で、だれですか? それは。』
『わかりません。』
『は?』
『お名前も住みかも分からない。』
『そんな人と、なんで、知り合いなの?』
ぼくは、多少、言い方がまずかったかしら、とも思いましたが。
『だいたい、決まった時間に、あの公園前を通るのです。』
それは、交差点の脇にある、小さな公園です。
ぶらんこ、パンダさんの遊具……どうやってあそぶのかは、わからないけど……、小さなジャングルジム。砂場。ワンちゃんの像。
『じゃ、今もここに、来るのですかな、いや、なるほど、あなたは、まさに、毎晩、それを、待っていたのかな。』
『まあ。でも、それが、あそこは、かなり暗がりです。公園にある街灯は古くて暗く、交差点の街灯は、ピント外れ。お顔は、あまりはっきりしません。いつも、帽子を深く被っていらっしゃいます。でも、その、神秘的なお声。うっとりするような、おとぎ話し。ああ、いとおしい。通り掛かる方をしらみ潰しに調べましたが、あれ以来見当たらないの。最後の日です。あたしが、たぶん、死んだ日から。』
『この方ではないのか?』
『最初は、もしかしたら。と、ときめきましたが、ちょっと、年寄りすぎます。もっと、若く、カッコいいかと。』
『はあ。そうでしょうな。うん、うん。』
ぼくは、一安心しました。
人違いでとりつかれるのも、あまり、気分よくないでしょ。
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