ゴミの山の中から生まれた一つの疑似生命体のチャガマ。全身鎧に包まれた巨大な体を持つ彼は、名前も目的も持たず、考えることはただ一つ「ただただ遊び回りたい」。しかし、人類よりも遥かに強大な力を持つ彼の遊び相手などなかなか見つかるはずもなく、行く先々でトラブルを引き起こす。そんな最中彼はついに、自分の全力をぶつけられる存在と出会う。パワーノート、――すなわち力士と。
魔術などが存在するファンタジーな世界観で、魔術師に作られた疑似生命体が相撲を学ぶというあらすじだけ聞くとトンチキな話だが、これがなかなか面白いのである。
生まれたばかりで性格が純粋なために失礼なこともヌケヌケと言ってしまうチャガマと、そんな彼の失言を受け流しながら面倒を見るカメサワのやりとりが実にいい味を出しているし、パワーノートの強さを見せるために、弟子の身体に平気でライフルを撃ちこむという親方もかなりキている。
その一方で自分の存在意義がわからなかったチャガマが、相撲を通じて自分のやるべきことを見つけ出すまでがしっかり書かれていて、一人の少年(?)の成長物語としてしっかり完結しているのも良い。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)