第13話
翌日の日曜日。
今度ははじめさんのご家族への挨拶へ行くこととなっている。
はじめさんのお姉さん、どんな方だろうと思いを馳せていると車のドアの音がした後すぐに玄関のチャイムがなる。
多分はじめさんだ。急いで玄関に向かうと既に両親がドアを開け対応している。
横から覗くと緊張した面持ちのはじめさんが立っていた。
つい聞き耳を立てる。
「いらっしゃい、はじめさん。
私たちもはじめさんのご家族にご挨拶しかったんだけど生憎これから仕事が入ってしまっていて。なので『これから娘を宜しくお願いします』とお伝えください。
今度是非両家で集まって結婚式の話しましょうね。」
母がそう言うとはじめさんは赤くなり慌てて話す。
「けっ、結婚?!まだ早すぎませんか??もう少し「あら、、、はじめさんは結婚する気が無いの?ゆず葉のことは遊び?」」
「いえ!!!好きです、誰よりも愛してます!!結婚の話は、、その、二人で話し合って決め、その後にご両親と、その、お、お話しできたらと。。。。」
あぁなんて愛しい人なんだ。でもこの姿を見せるのはは私だけにして欲しい。
今すぐ誰にも見られない自室に連れ帰り、そしてーーーと思っていると
「こらこら一葉さん。からかっちゃだめでしょ?こんなはじめくんをゆづ葉に見せたら暴走するよ?
そしたらはじめくんが無惨なことに。。。」
父よ。言いようが酷い。
でも私の思考を良く理解していらっしゃる。
「ふふっ、分かっているわよ。でもゆづ葉だって奥手のはじめさんに積極的に好きとか言って欲しいでしょ?」
私の存在にとっくに気づいていた母さんがこちらに向けてウィンクしてきた。
母さんのその視線を辿ったはじめさんは私の存在に気づき、、
「口下手ですが、、善処します。」
と頬を赤く染め言ってくれた。
『ああ、やばいな、好きだ、好きすぎる。このまま既成事実いや、いっそ本気で子作りしてそのまま婚姻届書いて提出するか。あっ、でもそんなことしたらはじめさんに引かれちゃう?、あぁーーうんんっ、この衝動どうしたら。』
とあれこれ考えてるとはじめさんが床に膝をついた。その床にはポツポツと赤い液体が落ちてきている。
「えっ!?はじめさんどうしたんですか、あっ鼻血が!!だっ、大丈夫!?」
慌ててはじめさんの鼻にティッシュをあて身体に寄り添うと
「いや、その、本郷、、さっきのこっ、子作り、、云々、、、全部声に出てて、、。」
さっきの暴走した言葉を口に出していたらしい。それを聞いて鼻血とか、、、尊い!!!
改めてはじめさんを強く抱きしめ頬擦りする。
「あぁ~私が話振っといてなんだけど、もうそろそろ出ないと約束の時間過ぎちゃうわよ。ホント若いっていいわ~。」
母さんの言葉で我帰る。
これは私も含めて母に遊ばれたな。
でも素敵なはじめさんを見れたので良しとしよう。
出発前から色々あったが急いで山田家へ向けて出発した。
車内ではお姉さんについて聞いていた。
はじめさんの10歳上でお名前は咲さん?
今お仕事は介護士をしているそうだ。
小学生の時にご両親が事故で他界してからは親代わりのように育ててくれ感謝している。と優しい微笑みで話すはじめさん。
お姉さんのことが大好きなのが伝わってきて私まで笑顔になった。
そんな風に話していると山田家に到着した。
緊張しながら玄関ドアの前に立つ。
すると頭をポンっと撫でられた。
はじめさんを見る。
「大丈夫。ずっと側にいるから。」
緊張が和らいだ。どんな結果になったとしてもはじめさんが側にいてくれるなら大丈夫。
そしてはじめさんがドアを開ける。
「姉さん、今帰った。連れてきたよ本郷を。」
そう簡潔に述べれば直ぐに足音が近付いてくる。
そして綺麗な女性が姿を現す。
その人は儚い雰囲気を漂わせ、優しい暖かな表情を、、、瞬間で氷点下まで下げはじめさんを睨らみ、
「予定より遅かったのは、、、手を出してたから。じゃないよね?ね゛っ?」
遺伝だろうか、顔立ちがあまり似ていないのに凄んだ表情がはじめさんと重なる。間違いなくこの人がはじめさんのお姉さんだと確信した。
「そんなことして無い。ただ本郷のご両親と話をしていて、、」
そこまで言ってはじめさんはポッと顔を赤らめる。
《え?そこで顔を赤らめる要素あった?》
私が疑問に思っていると
「ご両親とお話ししただけで赤くなるのはおかしいだろ!はじめ!!何したんだ!?」
お姉さんが代わりに尋ねてくれた。うん、気が合いそうな予感。
「いや、結婚とか、子供の話に飛躍して、それを、、意識してしまって、、。」
そのまま下を向くはじめさん。
「可愛い過ぎっ!!!」
お姉さんの前だと言うの思わず叫んでしまった。自分の失言にあわあわしていると
「ふふふっ、あっはっはっは!!!あんたらお似合いじゃないか、ふふっ。」
お姉さんは瞳に涙を溜めながらお腹を抱えて豪快に笑っていた。
その後直ぐにリビングに通された。
一先ず好意的だと言うことに安心したが、挨拶が未だだということを思い出し慌てて居住まいを正し自己紹介をする。
「ご挨拶も無しにすみません。
はじめさんの担当クラスの生徒という立場では有りますが、真剣にはじめさんを愛しております。
何か問題が生じればいつでも学校を辞める覚悟はしております。ですがはじめさんを離す気は一切ございません。
初対面の挨拶としては失礼と思いながらも本心を、覚悟を、知ってもらいたくてこんな言葉を口にした。
「ふーん、、、。」
お姉さんは私を見定めるように目を細めた。
私はその視線を一切逸らさずただ見つめ返し続ける。
そのままお互い逸らさず数十秒たった頃、お姉さんの細められていた眼差しが和らいだ。
「うん。真っ直ぐで良い目をしてる。ハッキリキッパリ言うところも気に入った。
はじめから大体話は聞いてたから予想はついてたけど、予想を超えたわ。
はじめ!あんた本当に良い子見つけたわ!あんた全身全霊で愛されてるじゃん。一生に一度の巡り逢いだわ。
いやぁ、めでたい!
そして何より心イケメンで見た目美少女が私の妹とか最高じゃん。」
そう言ってくれた。
これは交際を認めてくれたと思って良いんだよね?
確認したくてはじめさんを見る。
すると頷いてくれた。
私は嬉しくなりはじめさんに抱きついた。
そんな私に苦笑いしつつ抱きしめ返してくれた。
「あらあら。私が居るのに抱き締め合っちゃうとか、、ふふふっ、はじめも周りが見えなくなるほど夢中なんだねぇ~。」
お姉さんの言葉を聞いた瞬間はじめさんは全身をカチンと固め暫く稼働しなくなってしまった。
はじめさんが停止してしまったので動き出すまでお姉さんと話しをしようと、はじめさんの腕から何とか抜け出しお姉さんと向かい合う。
「あの、ありがとうございます。私、かなり勝手なこと言ったのに受け止めて頂けて、その、、すごく嬉しかったです。
その、、突然ですがーーーお姉さん、とお呼びしてもよろしいですか?」
はっ恥ずかしい!!多分顔が赤いと思う。慌てて両頬を手で覆った。
すると「くっっ!」と息遣いが聞こえた後
「え、えーっとゆづ葉さん?あの、、、お姉さんと呼ばれるのもものすっごく嬉しいんだけど、
お姉さん、いや咲お姉ちゃんはなんて可憐に微笑むんだろう。
可愛いし、綺麗だし素敵だ。大人の色香も相まって魅力に果てがない。
流石山田ファミリー。みんな私の好みど真ん中。
「じゃあ私の事はゆづ葉って呼び捨てにして下さい。未来の家族としてもっともっと仲良くなりたいんです。」
「じゃあーーー、ゆづ葉。」
呼んでくれた!嬉しい!!
きっと今私はニヤニヤだらしない顔をしてる気がする。
「はいっ!咲お姉ちゃん!!」
視線を少し下に逸らしつつ咲お姉ちゃんの名前を呼ぶ。
あれ??どうしたんだろ、反応がない?
えっ?良く見ると何故か咲さんまでもがはじめさん同様停止していた。なぜ姉弟揃って停止?と疑問に思っていると
「たっだいま~、おにいちゃんの彼女来てるってホント?見せて見せて~。」
明るい声が聞こえた。
多分結城さんだと思いリビングドアの方を向いた。
「あーいたいた。こんにちはー、はじめ兄さんの姪の結城でーーー、え?ゆ、ゆっ、ゆづ葉お姉様??????」
ん??ゆづ葉
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