5 守りたい

 ヘクサはこのまま二人の兵士に連れて行かれ、外に放り出された。

「これで満足だろう? もう二度と来るなよ」

「どうすればまた会える?」

「は?」

 ヘクサの頭の中には、次にシリルと会うことしかなかった。

 二人の兵士は同時にため息をつく。そしてしばらく考え込んだ後、言った。

「お前、体力に自信はあるか?」

「体力?」

守護署ウェヒターは常に署員を募集している。夜遅くまで起きないといけないし、王城の警護に入れば家に帰ることはおろか、家族に会えないからなかなか署員が集まらない。どうだ? 守護署の署員になれば、離宮を警護することができるぞ」

 迷いはなかった。ヘクサは兵士二人に詳細を聞くとすぐに守護署に向かった。



 数々の試練を軽々と乗り越え、ヘクサはすぐに守護署の署員になった。

「こんな逸材、どこにいたんだ?」

 判定者は口をそろえて言った言葉にヘクサが応えることはなかった。

「これで、王城の警護に入れるのか?」

「おいおい、王城の警護はまだ先だ。まずは守護署で訓練して、それから各署、そして離宮、王城だ」

 ヘクサはシリルにすぐ会えないことを残念に思った。だけどいつか会えることが確かなのは喜ばしいことだと思った。

 国を守る、秩序を守る、王族を守る。そんなことはどうでもいい。



 ヘクサはただ、シリルを守りたい。


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