画集で溶ける

冒険も無事終わり、基礎体力が上がった私は向かう所敵なしと言っても良かった。

特にスピードは年を取るごとにダウンしてゆくものなのだが、冒険のおかげで随分楽になっている。

ドンドン枚数を上げていると、「宅配便みたいですけど」とヨーコの声がした。

やっと画集が届いたか!興奮気味に対応する。アトリエに何とか運んだ私は封をとってゆく。やっぱり画集だった!

もう気分はハイである。その間ずーっと画集を眺めていた。目の保養とはこういうことを言うんだなぁ。

構図とかも実に参考になる。やっぱり狭い世界で生きて来たなぁ…。

これだけ見ると私の画集が稚拙に見えてしょうがない。

「あの~画集第4刷もきましたけど」

「並べといて」

「あ、はい…」

画集をむさぼるように読む作業はしばらく続いた。でも結局自分は自分!ていう結論になってしまう。でも堪能させていただきました。

いつものアトリエ机に戻り、自分なりの絵を描いてゆく。さらに冒険で得た体力と素早さが上がったので無敵である。どんどんストックを描いてゆく。

水彩を塗る時間も取れた。申し訳程度に水彩を塗ってゆく。

「あの~~…また宅配便が」

「もううるさいわね!今度は何?」

乱暴に開封してみると、ファミレスのウェイトレス風のコスだ。

「やっぱりスカート丈が短すぎます~」

「早速奥で着替えて!」

タカミに言われっぱなしで仕方なく奥へと消えて行く。その間私がレジを担当した。

「あなたが作者ですか?」

「え?ああそうです」

「感激だなぁ…握手してください」

握手くらいならなんぼでもしますよ。

「画集買いますので」

お兄さんは画集を最近刷ったばかりの紙袋を持ち店を出て行った。

画集がこれだけ売れるってことは、やっぱり私は私ってことなんじゃないかなぁ。

初心忘れるべからず!そんな時にウェイトレスが現れた。

「白とオレンジで良い感じじゃん!」

「いまさらこんな格好でテコ入れするのは意味あるんでしょうか…」

「毎日来るお客さんも多いからね!変化は大事!じゃあがんばってね」

「タカミさ~ん…」

ストックも大分たまったので、大好きな睡眠を取る事にする。起きる頃にはもう全部絵もはけて閉店だろう。そう思ってゆっくり目を閉じた。


「タカミさん、終わりましたよ…」

「ふぇ?」

どうやら本当に寝ている内に終わったらしい。

「あー2万抜いて終わっていいわよ」

「は~い」

ヨーコは速攻でウェイトレス姿を脱ぎ、私服にもどった。

「おつかれ~」

今度は私がアトリエで仕事する版だ。その前に風呂にはいってすっきりする。

と、その前にまた他の画集を見てしまう。

いけないいけない、絵を描かないと。

アトリエはいつも通り朝まで部屋の明かりはともっていた。


次の日、ヨーコがやってくると、いつもの元気もなく、調子の悪さに気づいた。

「ヨーコ…風邪?」

「なんでもないです…」

額に手を置くと高熱だ。

「今日は帰って休みなさい」

「でも…」

「移されたら困るのよ!」

「…」

ヨーコは帰って行った。

タカミはこういう事態を全く想定してなかったので、困ってしまった。ヨーコに頼りすぎていたのだ。

仕方なくバイトの募集のチラシを描く。女性限定。コスプレ可。

窓にペタリと貼っておく。

応募が来るまでは私がレジ役のなる。

開店すぐに、いつもの客があらわれるが、絵へは行かず直接私の所に近づいてきた。

「な、なに?」

「ラジオで聞いたんだな、イギリスでも画集売れてるらしいですぞ」

「えっ本当?」

「もう7刷までいってるらしいよ」

それはいいニュースだ。印税も入って来るし。

「うれしいです!」

「じゃ絵を選別するかな」お客はいつも通り少女絵漁りをはじめる。

お昼まではそんな感じだった。今日は早めにお昼休憩にする。トイレに行って帰って来ると、背の小さいボーイッシュな子がポツンと立っていた。

「あの…どなた?」

「バイト募集できました!」

女の子だったのね。そんにしても小さい。

「お仕事は難しくないけど、いい?」

「はい!今日からでも大丈夫ですから」

「オッケーじゃあレジに来て。万単位のお金が動くから、やりやすいでしょ?絵は値段が書いてあるから、その通りにレジを打って。それだけ。OK?」

「オッケーです。それでどんなコスするんですか?」

「あー緊急募集だから考えてなかったわ。3サイズを聞いてから発注するわ」

「わかりました!」

「なんかあったら奥のアトリエに来て聞いて。それで何とかなるから。じゃあ頼んだわよ」

「了解です!」

そう言って私は寝室に入ってグーグー寝ていた。

「タカミさん!額縁の絵、背景以外全部売れましたよ」

「…うん?…うんありがとう。2万ウーロンをレジから抜いて終わり。ごくろーさま」

「次はいつになりますか?」

「それは先輩がいるから、話し合いになるわね。うまくシフト組んでいくわ」

「じゃあよりあえずまた明日来ますので!」

元気な子でなによりだ。


翌日、仕事場に来たヨーコは、仕事場前で小さい女の子?と鉢合わせる。

「お客さん?かな?」

「いえあなたの代わりに昨日働いたピッケといいます」

「まぁそうだったんですか。ご苦労おかけしました。」

2人が立ち話をしていると、お店のシャッターがガラリを開いた。

「ああ、2人とももう来てたんだね。お店の中へどうぞ」

2人は店に入って消えて行った。


「昨日みたいな事態のために、2人雇う事にしたの」

「ピッケといいますよろしく」

「ああピッケっていう名前なのね。よろしく。早速だけどシフトを決めるね。1人でもいいし、2人で出勤してもいいから、希望をこのシートに書いてね」

2人は顔を突き合わせてシフトを書いていった。私は描いた絵を店内に並べていった。

「シフト書けました!」

「どれどれ?」

週末は2人勤務なのはありがたい。うん、これでいいでしょう。そもそも今までヨーコ1人だけに任せていたのがおかしかったんだ。2人なら昨日みたいな病気の時でもなんとかなるでしょう。

「ピッケの制服はまだちょっと待ってね。ヨーコも何かあったらピッケに教えてあげて」

「はい!」

「それじゃ、私も描きますか!時間が来たらシャッター上げてね」

開店時間はすぐにやってくる。常連さんを含んだお客さんがドカドカと入って来る。

お客さんはすぐに新しい店員さんの姿に気づく。テーブルのかなり下に頭があるショートカットの娘を見つめて、

「僕っ子かな?」

「新しい店員ですぞ!」

「いらっしゃいませ!」

ピッケは元気に答えた。お客さんは軽く沸いている。

「店員さんに極端に近づかないようお願いします」

暖簾のれんからタカミが顔だけ出していつもの警告を与える。

「相変わらず作者、ヒステリックですぞ…」

お客さんは段々、作品採取に移行してゆく。いつも通り少女絵が真っ先にはけていった。ヨーコはピッケに訊ねた。

「どうですか?」

「はい!難しくなくていいですね!」

「それにしてもこのコスプレはどうかと思いますけどね…」

「かわいいじゃないですか!楽しみです」

そんな中、タカミが買ったばかりの画集に満悦していた。溶けていた。


このまま店は維持でるきのか?しかし画集はコンスタントに売れている。

更に白色紳士が持ってきたアタッシュケースを持ってきていた。

全てイギリスの円税だった。

「うほー!」

という思わずタカミは咆哮をあげた。

「タカミくん、今後はこんなもんじゃないよ、ヨーロッパ中に売って印銭を沢山稼げるようになる。そうした時が、本当の第2団のか画集発売を考える時だ」

「そうですね!」

「だから他の画集でホコホコしてる場合じゃああないよ。絵のペースをどんどんあげていかないといけないですよ」

「大丈夫です!店員も2人に増やしましたし、これからどんどんいける状況です。

「冒険しといて本当によぁったな」

「素早さと体力はなによりも変えがたいパワーですよ」

「だから今は、沢山絵を描いてね。少女7:少年3。背景画は気が向いたときに書いてね」

「紳士さん自身もお金稼いだでしょう?」

「おかげさまでね。タカミさまさまだよ」

「でも私を選んでくれたんだから、いい傾向だと思うんです」

「君の描く透明感のある美少女絵はぼくらを癒してくれる。今後も初心は忘れないでくれまえよ」

「もうすぐお昼なんで焼き肉たべにいきませんか?」

「肉は重いので遠慮しておくが、君と店員はスタミナつけるといい」

そう言って素早い動きで店を去っていった。

「従業員君、焼き肉だべにいこー」

「はい!」

こうして3人は焼肉店に向かった。

これからどうなっていくのかは神のみのぞ知る所だが、今あることをコツコツとやっていっている。基礎体力もついて、仕上がりは最高だ。

タカミはロースをしこたま食べた。他の2人も好きなメニューを頼んで美味し郎に食べている。

「お昼と夕食は基本出るからどんどんたべてね!」

「ピッケはもうおなか一杯です~」

「無理せず食べてね」

タカミの画集はヨーロッパ中に展開する予定だ。そこからどうなるか、白い紳士さんに任せるとしましょう!















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