雪で臨時休業!

何時間寝ただろうか。私は寒さで起きた。

窓を開けると真っ白だ。

お店のドアの方を開けると、銀色の雪が一面に覆われている。

「雪だ…」

雪はまだ降っているし、今日はさすがに臨時休業だ。

幸い部屋に戦闘用食料レーションがあるし、外に出なくても大丈夫だが、雪が降った後はすべってしまいそうなので、一応店のドア付近を雪かきした、寒いのに疲れの方が先に来て店に入って即、手袋とスコップを放り投げるとヒーターを付ける。

「はぁー寒い」

お兄さんが来たのだけど、今日は休業と言ったらがっかりしていた。すみません本当に!

その間、絵を描き始める。少女の周りに描いた花を色塗りしてみたが、かなりしんどい。モノクロ絵も描いてストックをどんどん貯めてゆく。

レーションは美味しくないがほんのり甘い。いつ買ったんだっけこれ…。

雪のおかげで外が静かだ。その分絵がはかどる。やはり人気の少女絵を重点的に描き上げていった。背景画には需要がないので描かない事にした。スライムを倒す少年なんかも描いてみた。少女と花は需要がある。人気作だ。夕方に近づいているが、また雪が止まる様子もない。雪かきをして明日は営業中にしてみよう。と、いう事でまた雪かきをして、銭湯で体を暖める。サウナなんかもあって、汗が滲み出て来ていい感じ。風呂後は瓶に入ったコーヒー牛乳を飲むのが最強だ。

しかし外に出ると雪だ。この地方は雪が沢山降ってくる土地なのだろうか?

またお店に戻って明日用の絵の値段を少し上げて壁に貼り付ける。結構な量になったが、ストックはまだまだ残っている。でもあるに越した事はないので描き続けいたのだが、お客が来たのでカウンターに戻る。

「今日は雪割ですよ~よろしくどうぞ~」

雨と雪の日は割引をするサービス価格にしている。

「これ下さいー」

「ありがとうございます!2万ウーロンです。」

「安いなぁ、じゃこれも」

「3万ウーロンです~」

青年が雪の中、満足しながら店を出て行く。

「おお、色の塗った少年もあるではないか!」

「水彩を試し描きしてます。どうですか?」

「実に良い。これをもらおう」

「ありがとうございます~2万5千ウーロンです。

レジの時、おじいさんはレジの後ろにある背景画を眺めた。

これも売り物なのかね?

「あ、はいそうです」

「良く出来てるではないか。水彩画じゃし」

「地味なんですけどね」

「そこの風車の絵はいくらなんじゃ?」

「1万ウーロンです。

「安い!買った!」

「おお、お目が高い!」

2枚の絵を買ったおじいさんも、雪の中傘を持って帰っていった。

背景画が売れて本当に救われた気分になった。やはりご高齢物なのかな?風景画は。

その後も暖かいお茶を飲みながらポチポチ来るお客さんを、さばいていった。

夕方雪がやっと止まると、お仕事帰りの人達でお客がそこそこ、にぎわってくる。

暖かいお茶がおいしい。

「これとこれと、これ下さい」

「あ、は~い」

額縁を外してレジに持ってきた。紙袋を3枚入れて8万7千ウーロンであることを伝えると、袋に入れて3枚を渡した」

「濡れないように気を付けてくださいね。水がかかると絵が滲みますので」

「はい!気を付けます」

慎重に落ちついたらバッグに入れて帰ってていた。

こんな天候なのに来てくれるお客様に感謝!

お茶を飲みながらノホホンとしながら思った。

少女と少年が全部売れたので、店じまいしようと思っていた時、

白い紳士様が現れた。傘は差してない。

「こんな天気なのに売れているね、偉い偉いえらいえらい

「すいません少年少女は売り切れました」

「またか…。雪でお客が来ないと思ってたのに。まぁいい」

バトンのような杖をクルリと回しながら、

「2週間後にロンドンだが予定はどうだね?」

「はい、1週間ほど臨時休業にしていきます!」

「よろしい。」

紳士様が笑顔になった。

「本の交渉なのだが、私4割、タカミ君6割でどうかね」

「構いません!売れるならそれだけで!」

「よろしい。じゃあロンドンに行く前日にまた来るよ」

そう言ってガレージのドアをくぐりながら帰っていった。

私の本が出るなんて…本を出すなんて3~4年ぐらい先と思っていたが、もう売れるなんて。モチベーションが上がり、お店の告知を描いた告知用ポスターを3枚描いた。

1つは看板用、2つ目はスパゲティ屋さん、3つ目は深夜食堂に置いてもらおう。

ポスターを描いた後は、通常のお絵描きに戻った。もう何十枚も描いているので、ポーズに似てくるのが悩みの種だ。実験的に、縦長の紙を作って漫画を描いてみた。

猫とネズミの戦いを描いてみる。

面白くないので通常の値段にして置いてみよう。

季節を織り込んで、少女は雪の人の服装を少し持ちにしてみた。少年も同じ感じで。

それからは雪かきをして、すべりそうになりながら銭湯であったまる。

さすがに雪はやんだので明日は店を開き多めに描こう。

レーションを食べながら描き続ける。そう言えばこれは親からもらったものだった。


翌日―――――――――――


ギリギリに起きた。急いで仕事服に着替える。軽く化粧をし、ドア越しにもう数名が列を作っている。

「オープンします~」

ガラガラと店を開けると、一斉に人がなだれ込んできた。

「これとこれお願いします」

「この絵買います!」

「この少女の絵を飾りたいのう」

「ちょ、ちょっと待ってください!順を追ってお買い上げください!」

店内で列を作り、外でも行列ができている。

「はい、4万ウーロンです」

「これは7万ウーロンです」

「えっとこれは…あ、3万7千ウーロンですね」

次々が買って去り、新しい人が入って来る。らー◎ん二郎の様なルールが客の中でルールができている。私はお茶を飲んでのどを湿らせながら、

「はい!水彩画なので5万ウーロンです!」

「水彩もはじめたんですねぇ…良きかな良きかな」

「今後も色を塗っていきますよ~」

お昼休みになった。今日は激辛ケバブが食べたい。お店に行って2つ注文してお持ち帰りにしてもらった。

お店に戻り、辛いケバブを食べながら、ケータイがあればなぁと思った。あるのとないとでは仕事効率が倍だ。

と、そう言えば家賃の日が近づいてきていた。郵便局に行って家賃を提出する。危ない危ない。

それとロンドンに行くためのバッグを作っておいた。パスポートは、

「何それ?」

と言われたので、いらないらしい。

ロンドンに行けるのは本当にワクワクする。生まれてからいままで、ずっとここに住んでいた。そんな中いきなりロンドンにいけなるなんて。

私は「飛行機ですか?」

と聞くと、紳士は

「なにそれ?」

と言われていたので、やはり全て船で行くらしい。


お昼休憩が終わったので看板をオープンにクルリと変える。

今日も絶えずお客が出たり入ったりしていた。

JKが入ってきた。

「これ良くない?」

「この女の子ぱねぇ!」

そう言えば最近女性客がじわじわ増えている。

「この男の子もかっこかわいくね?」

「それな!」

JK語は日本語なのだろうか?さっぱり分からなくなっている。ジェネレーションギャップを感じて嘆息した。

「この少年絵と女の子絵くださ~い」

「6万ウーロンですけど持ってますか?」

「うーんギリあるし!」

「ありがとうございます~」

JKはキャッキャ笑いながらドアから外に出ていった。

この国はJKにお金を渡してるんだろうか。それともお金持ちの子?

いろんな層がいるものだ。まあ買ってもらえばネコでもいいけど。

そう思いながらお茶のおかわりを注いでいると、例の少年が棒を持ってやってきた。

「よくも恥なことさせたな!?もう我慢できないぜ!」

そう言って棒を使って絵のガラスを割り始めた。タカミは笛でぴ―――――――っと

笛を鳴らした。すぐ警官が来る。

「この少年が店をめちゃくちゃにしてます」

「またお前か!今度は長いぞ」

「ちくしょう!ふざけんな!!」

タカミは無視している。

「えー少年ひとり現逮!」

レシーバーは使える世界なのか…。

「では失礼します。」

さっさと少年は連れていかれた。もう会う事はないでしょう。


その後女性が現れて、20分ほど品定めすると、少年の額縁を手に取って、

「これください」

「4万ウーロンですけど大丈夫ですか?」

「かまいません」

素早く紙袋に入れると、お代をもらって女性に渡した。

「いいお店ですね、また来ます」

「できたばかりのお店ですが、ありがとうございます!!」

女性の層はとてもありがたい。女性も入れる雰囲気と行列具合を何とかしたい。

今日の夜も深夜食堂に行って、

「あのーもつ煮込みありますか」

大好物なので試しに聞いてみた。

「あるよ」

「おおー!じゃライスと豚汁と、もつ煮込み下さい」

主人はうなずいて、作りはじめた。

今日はまだ夜始まりなのでお客は私だけだ。深夜になればきっとお客さんがおくるんだろうなー。

「モツ煮込みとライス」

早速出てきた。熱いので慎重に食べる。

「豚汁ね」

早い!豚汁も早々出て来た。これはご飯が進む。

「ライスおかわり!」

どれも美味い。甲乙つけがたい料理ばかり出て来る。

「漬物とライスおかわり」

漬物はべったら漬けとライス。もうひたすら料理をかっ込んでゆく。

もう店はキープ確定だ。パスタかここかというレベル。


御馳走様ごちそうさまです」

私は現金とチップを渡し、ほっかほかで店を出て行く。


今日は不思議と眠くない。寝ずに絵を描かなきゃいけない。

またデカすぎる月が夜の光に照らされながらお店に戻った。

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