新装開店!

いよいよ今日の午前11時にお店が開きます!

時間ギリギリまで描いて、できあがった物を額縁にいれていつもの紙袋に入れる。

リクエストは最大3つまでにした。単に時間がかかるからなんだけど。

段々絵が壁に貼り付けていく。壁は全面空色。次第に華やかになってきている。

入り口を見えると、行列ができていた。

「もうもう少々お待ち下さい!」

市民から歓声があがる。時間ギリギリを使ってそこそこ絵の枚数が増えていっていた。

11時――――――

開店と同時にすごい客が訪れる。

「あいつの言う通りこれはいいな」

「森なんかも細かくかいてあるな!」

「入場は一度に5人までにしてください!」

タカミはてんぱって、頭がぐるぐるしていると、

「これ下さい」

1人目のお客だ。

「額縁と紙袋はサービスです!どうぞ2万ウーロンになります」

お兄さんは満足に帰っていった。

こういうのは一番最初が大事だ。1枚売られると雪崩のように売れていく。

「これいいけどちょっと値があるなぁ…」

タカミは、

「いくらくらいの値段がいいんですか?」

「これ4万だからなぁ…ちょっと勉強価格たのめないかな?」

「3万5千ウーロンなら手を打ちますよ」

「ふくよかなスキンヘッドんの兄さんが喜んで買ってもらっていった。」

「ねぇこれってリクエスト絵は頼めるのかしら?」

「はい先着3枚までなら可能ですよ~」

「お、じゃあいいかな」

「俺も褐色色の女の子がいいな。実はハッカーなんだ」

「はいはいメモしますね。前払いですがよろしいですか?」

「いいよ。明日も来るから」

ちょっとクシャっとしたウーロンをレジに置いた。

やっと落ち着いた感がある。とはいえ8~9割は売れたからなんだけど。

休んでると、例の中学生が店に入ってっきた。

「いい外装じゃないか!嫉妬するぜ」

「あなたも大人になればお店は持てるくらいにはなるわよ」

「良い事言ってくれるじゃん!俺も負けねぇぜ!今日は俺は露店だ!」

そう言って少年は消えていった。そういえばあの子の名前すら知らない。

からの全身真っ白装備の紳士が現れた。

「お久しぶりです!」

「ああ…いい店だね。1日で作ったとは思えない外観だ」

どうして1日で仕上げたことを知ってるんだろう?

「もうほとんど売れてしまって…」

「当然全部買うよ、10万ウーロンで」

「ありがとうございます。」

「そう言えば出版の件だが…近々イギリスで本を出したいと思ってるんだ。その心の準備だけは保っていてくれたまえ」

「え?は?はあぁ…」

「じゃあまた」

ドアに付けてるチャイムがカランと鳴って、帰って行った。


それからはまたしばらく絵を描いていた。売上金は買った金庫に入れている。

店内にある窓を見てみると、少年が全然売れず、かわいそうな気になってしまった。がイラストは厳しい世界である。その時少年は自分なりの答えを考え出すだろう。

リクエストは女の子と背景を組み合わせたものが多い。人物はどうとでもいいが、重要はのは背景である。これは手がかかってしょうがなかった。

当然リク絵なので手をぬけない。他の絵も気合いを入れて描いてはいるのだけれども。

すっかり夕方である。それにしても真っ暗だ。一応、絵は踏ん切りついたし、ステーキを食べようと噴水周りをうろついていたが、幸いいいお店を見つけた。

「らっしゃい」

客は2,3名ほどだった。まあ毎日食べられる代物じゃないし。

「肉はおまかせで、あとレアで!」

主人は無言で作業にかかった。これは上手いけど、主人が接客が苦手系だな。

30分が随分長く待たされた感を覚えていた頃、主人がステーキを持ってきた。

「ヤケドだけはしないでくれよ」

無言な主人がヤケドを気にすると言う事は、よっぽど今まで色々あったんだろうな…。

ナイフで切る。うん。ちゃんとレアでおいしそうだ。いい肉ほどレアができる。

逆に質の悪いステーキは焼きまくって固い肉になるわけなのだ。

その点、このステーキは最高だった。この街には色んなお店があるんだなぁ。

「お勘定!」


後は地道に絵を描くだけだ。少し眠たくなったが我慢する。

店に鍵を開錠して中に入り、アトリエに入る。布団がそのままなので、余計に眠くなる。でもだめだ。明日の開店日に絵が無かったら最悪である。


でも私かなりにこれまで沢山の絵を描いて来た。が、ややマンネリ化している。

そんな時は女の子を描くと収益につながるのだ。野郎をかいても中々収益に繋がらない。とにかくハイクオリティな少女を何枚か描いた。

背景だけの絵も、値段は張るが買ってくれる。時間はかかるが、キャラよりも背景のクオリティを上げれば売れていく。だんだん売り方のコツを少しは分かってきた。

10数枚を描いたら、うつらうつらし、気がついたら早朝になっていた。


「十数枚ではだめだ!」

一気に目が覚めた。まだ8時半だ。なるべく多く描かないといけない。

あっという間に6枚かいた。これくらいならいいだろう」

少女絵を入り口付近において目を引かせた。

「か、かわいい…」

ふくよかな、チェック柄の男性に褒められる。

「今日は女の子が多めで~す!ぜひ!」

今日は男性客が多い。

「こ、これおねがい」

「はーい3万ウーロンでーす」

いつもの紙袋にいれる。今度はもっときれいなプリントの紙袋にしたい。

「あのー色紙にサイン貰ってもいいですか?」

「ほぇ?サイン?考えてなかったから、下手ですよ?」

「いいです!本人が描いたものですから」

サインを描いて渡した。

「ありがとうございます!」

今日は9割以上売れた。ほとんど少女絵。かわいいは正義なのだ。

売り上げを数えていると、例の少年が乱暴に入ってきた。

「ど、どしたの?」

「俺もお手伝いさせてほしいんだぜ!」

「はあぁ?」

「掃除からレジでも何でもやるからな!」

「中学生でしょ?」

レジの下にボックスを置いていればレジもできるんだぜ!

はぁ…。嘆息した。

「じゃあ1か月研修してから、決めるわ」

「やったーお願いしますだぜ!」そう言う事で、まずはガラスを拭くT字型の道具で

ガラスを拭いてもらった。それから内装を綺麗にしていく。

「あれ?お姉さんここで寝てるの?」

「そうよ」じゃあ今日はキツイけど布団も洗ってあげるぜ」

「無理でしょそんなの」

「あの…これ売って下さい」

「あ、ありがとうございます~。」

タカミのイラストショップはこうしてしばらくは盛況がつづいた。

毎日リクエスト絵も担当したり、展示している壁絵もコンスタントに売れてゆく。

たまたまアトリエに戻ってくると、客の売り上げ金の一部をポケットに入れているのを目撃してしまった。

「何してんじゃこりゃあーーーーーーっ!」

「あっ」

「貴様売上金ぱくってたのかぁぁぁぁおいいい!!!!!」

「…ごめんだぜ」

「その年で警察にお世話になるなんてかわいそうに」

「本当にすまなかったんだぜ」

「ごめんで済んだら警察はいらないんだよ~~~~~~ッ!!!!!!」

少年の手をしばり、警察所に連れていった。

人に頼むのはやっぱり無理だ。人間不信におちいってしまう。

モチベーションが下がったまま絵を描く苦しさは、絵描きにしかわからない。

それでもアトリエで描き続けた。なぜならだからである。


「やあ。リクエスト絵できてるかい」

「ちゃんと出来上がってますよ!」

自画像の絵だった。

「いいねぇ。格式が違うよ。いい買い物をした。おつりは取っておきたまえ」

「ありがとうございま~す」

売上金は日に日に上がっていった。もう金庫に売上金が入らなくなっていた。

「新しい金庫かうか…。でも古い金庫を持っていってくえればいいのだけれど…。


朝早く白い紳士さんが開店直前にやってきた。

「どうだい?最近は」

「おかげで毎日ほぼ完売ですよ!」

「今日は悪いが全部絵を買うよ」

そう言うと30万ウーロンを手渡した。

「もうすぐ本になるんだ。ストックは多いほうが良くてね」

「期待してます!」

「日が合ったら、きみもロンドンに行こうじゃないか」

「ええっ本当ですか!」

「ああ。じゃあまた。」

絵を白紳士さんが全て買っていったので、店の前の看板は「休業」をしらせる看板に変えた。


紳士さんのおかげで久々に時間が早く終わった私は古書店やカフェ屋さんを見つけたりして、気ままにあるいていた。

「あっタカミさんだ!」

たちまち青年たちに囲まれる。

「何でわかったのかな…?」

「そのベレー帽ですよ、なかなか被ってる人いないですし…」

「悪いけど今日は久々のお休みなの。だからゆっくりさせてね。お願い」

空気を読んだ兄さんは、

「ごめんっす、テンション上がっちゃって」

そう言って皆は早々と帰っていった。


「このイラスト集良いですわ~」タカミは一瞬でファンになった。

値段も手ごろですから買いましょう。

久々にお買い物をした気分だ。カフェでイラスト集を眺めたかったので、良い所を探していた。さっき見つけたカフェでいいか。

戻って来て入店する。

「いらっしゃい」

優しそうなお兄さんがメニューを聞きにくると、

「アイスカフェオレ大盛一つ!」

「大盛ですね、待っててください」

待っている間、イラスト集を真剣に眺める。

「やっぱカラーはいいよねー。私もチャレンジしようかしら」

大盛カフェオレが来たが、想像以上にデカかった。でもまあイラスト集もあるし、しばらくはヒマが潰せそうだ。

メニューを聞くお兄さんが寄ってきて、

「それは君が出したイラストかい?」

「そんな!私なんてまだまだです!」

「イラストのお店目立ってるから、つい、ね」

ごゆっくりと言って厨房に戻っていった。

でも、私にだってそのうちイラスト集の依頼がくるはずだ。紳士さんの意見が正しければ、のはなしだけど。

そんなわけでモチベーションを上げてくれる1冊だった。雰囲気は自己流に混ぜてみよう。そして早めにカフェを飲んで足早にアトリエに駆けていった。

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