肉筆絵がもっと売れる!
4
「おばさ~ん!」
高美が叫んだ。
「はいはいどうしました?」
高美は満面の笑顔で応えた。
「絵が10万ウーロンで売れたんですけど、どの位の貨幣価値です?」
「ええっ…10ウーロン!!1か月高級ホテルでワインでも飲めるでしょうね」
じゃあ、と言って高美はおばさんに半分の5万ウーロンを渡し、
「じゃあこれで、しばらくここに居てもいいですか?
ちゃっかり小切手を現金に変えていた。
「え、ええ、もちろんですとも!」
高美は2階のアトリエに行こうとすると、子供立ちがドアの前を占拠していた。
「僕に絵を描いてるっていってたじゃん」
「描いてくれるんだろ?」
ガヤガヤとしたので、
「じゃあいますぐ描いちゃうね?ちいさい紙になるけど。じゃあうるさくしないように並んでいて?」
子供は大人しく行列を作った。
高美は思った。子供には何を描いたらいいんだろう?まあ女の子には男の絵を描き、男の子には女の子を描いてあげるのが良い。
「先頭の人、中に入って」
モジモジしてるこの子は少年だ。
女の子を書いてあげると、喜んだ。
「魔法だ!魔法だよこれ!」
私は2年もアシスタントをこなしながらプロになった普通の女よ少年。
次は女の子が入ってきた。じゃあ男の子かな。
「あのう…」
「どした?」
「
「ええ良いわよ」
花を描くのは得意だったので良かったのだが、少年を描く方が大の苦手の苦手だった。でも描いていけないと今後やっていけない。何とか完成。
「素敵!有難うございます!」
こうやってお昼までかかり、昼食をおばさんに用意してくれたものを一気に胃に落とし込む。
「すいませんスープのおかわりいいですか」
「はいよ」
高美はスープをのながら聞いた。
「そういえばあなた様のお名前まだ聞いてないんですけど」
「…キクよ。」
「お花の菊ですか?」
「いえ、喜せると書くの」
異世界は言語が全く違う。いままで良く会話できたと自分を
「また10万ウーロンもらえればいいねぇ」
「いえいえ、パトロンさんがくれたんです。小切手で」
「パト…まあそうなの…でも大丈夫、貴女は最高の絵描きだから」
5
今日の夕方にでも売りに行こうと思ってのに、雨が降ってきた。そしてもうすっかり辺りは夜になっている。
「今日は外に売りにいくのはやめましょうか」
その間、高美はアトリエにこもって、朝方くらいまで絵を描いていた。
2時間くらい寝ただろうか。キクさんはベルを鳴らしながら、
「朝ですよ~みんな起きなさい~!」
子供たちが服を着て、だるげに部屋からポツポツ降りて来る。
「集まったわね」
「あの~タカミがいないんですけど」
「あの人は
「不平等だ!」
「ひいきしやがって!」
食堂がピリピリしていたその時、
「モーニングね!食べたかったわ」
高美が降りて来た。だがパジャマのままだ。
「パジャマなんて恥くせぇ!」
「残念ながらこの子の言う通りよ。ちゃんと着替えてからここに戻るように。さぁ先に朝のお祈りをしましょう。神よあなたは…」
パジャマ姿を部屋で着替え、大きなバッグを持ってニット帽をかぶり、部屋を後にしてモーニングを食べた。
「ねーもっと絵見せてよー」
「昨日全員に描いてあげたでしょ」
騒ぐ子に耐えかね途中で食べるのをやめ。そのまま外に出て行った。寒い朝である。吐くと白い息が出てくる。
「こんな時間に人くるかなぁ」
さすがに朝は人は来ないだろうと踏んで、近くのカフェでたっぷりコーヒーを頼むと、本当にたっぷりでちょっと引く。しかもこれが暖かいのだ。上にはクリームがのっている。でも良い時間潰しになるしいいかなと思って描いた絵を見てガラス越しで確認しながら丁寧に飲み物を飲んだ。
一息つくとこの前と同じ場所で絵を並べ、値段表も付けて準備完了する。すでに開始前に少年少女たちが見にきている。
変な感じで悪目立ちしてないだろうか?早速私は、
「肉筆で描いた絵を売りまーす!見て見て良かったらお願いしますー!」
「これいいなぁ」
「いやこれもなかなか。いやあ凄い人もいるもんだなぁ」
被っていたベレー帽を脱いで顔が真っ赤になる。
「あ?3万ウーロン?買えねえなあ」
「こっちは5万ウーロン?あかん趣味の領域を超えてるで」
「えっあの―ちょっと!値段交渉にも応じますけど~!!」
2人は行ってしまった。
値段がちょっとたかすぎたかなぁ悩んでいると
「この絵いいなら。森からさす光が美しいエルフをさらにきらめかせている」
「どうですか?」
「5万ウーロンか…4万でどや!」
「
やっとまともな人に買って貰えた…何だろうこの達成感。
正直4万ウーロンでも充分な稼ぎになったので、店じまいしてもよかったんだけど、もうちょっと粘ってできればやっていきたい。
しかし見に来る客はそこそこいるのだけど、買ってはくれない。何故だろう。いくらプロとは言え、やっぱり私の画力のせいなのだろうか…。
そう思っていた時、白いスーツに白い帽子の紳士が現れた!昨日全部買っていった人だ!
緊張で下を向いてしまう。
「…今日は値段が高いな…」
やっぱり気づかれた。何も言えず下を向いてると、
「私は一日20万ウーロンだけしか使わぬ。だからこれとこれと…」
「い、い、いやぁ特別客なので、いっぱい差し上げます!」
「そうか…ならこれとこれも頼む」
また小切手で20万ウーロン手に入れた。
紳士は言った。
「芸術家なんだろうけど、作品に見合った金を考えてくれよな」
「そう…ですね」
そう言って紳士は
超スピードで店じまいして孤児院に戻るのだった。
「キクさん!今日は20万ウーロンゲットしました!また分け合いましょ」
「嬉しいけど、今後は貰わないからね?」
「え?どうしてですか?」
「私はほどこしを与える側です。受ける側ではありませんのよ」
「はい…」
「でもせっかくだし今日の分は貰っておくわね」
「はい!」
ほぼ完売した高美は、またアトリエに戻って絵を描き始めた。
また朝までかいてるんでしょうね…
キクは深いため息をはいた。
6
今日は4時間ほど寝たし、とてもいい気分だ。スズメの声も聞こえて来る。
ん~、と伸びをしてから、衣服を着替えた…のだが、これはいったいいつ頃から洗濯してないんだろう。匂いはしない。
「キクさ~ん!」
「どしたの?」
「あのー洗濯はどうしてるんですか?」
「洗濯?何の事かしら」
高美は上半身を脱いで、服をごしごしやってみせた。
「あぁキグリスの事かい?今日の夜やっておくから、今日はそれで行きなさい。あ、いえ私達の世界の服が着たいのなら、それを着ていってもいいのよ?」
これ着たいです!
最初は上がっていたテンションも、改めて鏡で見た時、ちょっと恥ずかしい気持ちになっていた。でもこれでもう、住民に交われると考えると嬉しい。
いつもの噴水前に辿り着くと。そこには露店があった。
近づいてみるとケバブの店らしい。噴水前はまだいくつでもよかったので、早速、
「1つください。」
「500ウーロン。辛さは?」
「激辛ソースで!」
高美は子供の頃行った露店に食べた頃から今まで、ケバブが大好きだった。
「うーん
食べ終わってからケバブ屋の隣に店を構え。いつも通り絵と値段を置いてゆく。
すでに観客が10人前後、見に来ている。焦って全て並べた後、
「今日はサービスデーで、少し安くなってます。でも手は抜いてませんよ!さぁどうぞ」
市民がワッとこぞって絵を見始める。
「ゆっくり見てくださいね、ゆっくりと」
「これくれや」
「僕もこれ買うよ」
「まいどありです!」
高美は絵が入るちょうどいい紙袋に物を入れて渡した。
たまたま散歩中の時に見た紙袋屋さんがあって、頼んでみた。
良かったのからどうかは、この好調さが答えを出している。
8割売れた所でまた白い紳士がやってた。
「おや、もうほとんどないねぇ」
「すいません、今日は売れてしまって」
「仕方ない残りの絵を買おう、10万ウーロンで」
「いつもありがとうございます!」
「それくらいの価値があるってことさ。じゃあ」
お金を勘定してみる。18万ウーロンだった。
これならもう引っ越せるかもしれない。
高美は夜に回ってる大きな惑星に驚いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます