漫画家が転生したら肉筆イラストでコツコツと!
オーバエージ
異世界で描く絵はたまんない!
「いいか!俺はチート系とかが大嫌いだ!」
漫画の編集部で編集部員が吠えた。漫画家の高美は急なその展開にびっくりした。
「なろう系も、悪役令嬢も、スローライフも大嫌いだ!一つも面白くない!しかし…」
「しかし?」
「俺の思惑と売り上げは別問題だ!だからその点、君の漫画は素晴らしい!また頼むよ」
「はぁ…では」
高美は不思議な気分を抱えたまま、帰路についた。
腹ペコなので、どこかで何か食べようかとも思ったが、何故か入れずにいた。
私は別に流行の流れに乗っている訳じゃなかった。ただ、描きたいものを描いているだけなのに、編集部からは皆から私のことを褒めてくれている。
「運がよかっただけかな」
そう思った瞬間、道路を無視した車がすごいスピードで高美の方に向かってきた。
2
後ろから男が高美の肩を叩いた。
「うまいリンゴだぜ、どうだ?」
「あ、あの…私お金持ってないんです」
リンゴ売りは哀れみの顔に変わった。
「リンゴ1個も買えないのか…かわいそうに。あそこを真っすぐ行った所に孤児院がある。そこで面倒見てくれるさ。リンゴはもってけ」
「あ、ありがとうございます」
実はトマトとリンゴは好物だったのですごく嬉しかった。そんなリンゴをかじりながら、リンゴ売りのおじさんに教えられた場所まで歩いて行ってみる。
年期の入った5階建ての建物がある。十字架も大きく目立っている。
(ここにちがいない)
私はドアのリングをトントンと叩いた。
建物の住人は素早くやって来た。私を見ると、
「あら、孤児を引き取り手さんですの?」
恥ずかしそうに私は言った。
「いえその、私が孤児なんです。お金も一銭ももってなくて」
「ええ!?あなたが?今までどうやって生きてらしたの?」
高美は言葉に迷っていた。
「その…バイトしてたんですけど結局どこも受からなくて…」
「まずはお入りなさい」
ドアをくぐると、何人か子供が食事をしていた。子供は私を引き取り手だと思って笑顔を見せてくる。ごめんね。私も孤児で。
「とりあえずこの部屋を貴方のものにいたします。が、子供も2人一緒ですからね」
「名前なんで言うのー?」
ドアから入ってきた少年唐突に聞かれる。
「えっと、高美です」
「たかみ?変な名前でやんの!」
おばあさんが叱咤すると急スピードで逃げて行った。
「子供たちはやんちゃ好きですから、慣れてくださいね。それとバイトするんでしょう?猶予を1か月にします。あくまで子供のための孤児院ですので」
(1か月か…どうしようかな)
「ちょっと仕事探してきます」
「じゃあこれを参考になさい」
おばあさんから街のマップをもらった。
「助かります!」
すぐさま孤児院から出て、仕事を探しに行った。
高美はボロボロな気持ちで数時間後に孤児院に戻った。もう夜である。
「それで、どうでしたの?」
「体力ある人じゃないといけないようです。でも心配しないで下さい。すぐ見つけますから。ご飯ありがとうございます!」
そう言って高美は2階に駆けあがって行った。布団にボスンと身体を預ける。
どうしたらいいのかな、私…。眠くなってきたが、バイトの事が眠りを妨げた。
だがそれでもすごく歩いた1日だったので、眠りに落ちてしまった。
次の日―――
バイト探しに行きたくない高美はモーニングを食べながら、げっそりしていた。
おばあちゃんはそれを察して、
「バイトに行きたくなければ、子供と遊びなさい」
「あ、はいお言葉に甘えて」
そんな感じでお遊戯場の真ん中に高美は居た。
「お人形遊びしましょ」
「いいよ」
人形でボクシングをしてつい泣かせてしまう。
「ボクシングだめだった?」
女の子は泣きながら部屋のすみにうずくまってしまった
「あー!女を泣かした!」
「言いつけてやろうか?」
子供にパンチされてるなか、向こうのほうで子供がお絵描きしている姿をみて、雷のような電流が高美に入って来る。
これだ!
高美は絵を描いている子に近寄った。
「うまい絵ね…それはクレヨン?」
「クレヨン?これはキーソンってゆうの」
この世界はクレヨンじゃなくてキーソンっていうのか…。
「他の描ける道具ってあるのかな?例えば黒い液体を使って描く時とか」
「先生に聞いたら?あたしわかんない」
私はすぐにおばあちゃんの元へ向かった。
おばあちゃんは紅茶のようなものを飲みながらラジオを聞いていた。
「…ラジオをお聞きの所大変すみません、先生」
「たかみじゃないの。どうしたの」
「これは重大な問題なんです。この世界には黒い液体を使って紙に描いたりできます?」
これの事かしら。
そう言ってインクとペンを見せた。高美は興奮冷めやらぬ様子で、
「へっへへ…これですよこれ。お借りしてもよろしいですか?あ、あと紙も」
「いいですが、何に使うの?」
「私、少し絵が上手いんです。絵を売ってお金にしようと思うんです!」
「まぁそうなの?どれだけお上手なのかしら」
高美は渡し忘れの原稿を見せる。
「まあこれは!色もついてるじゃないの!これはまた…」
「どうですか?」
「すぐ紙をありったけもってきますわ」
いける。これには確信を感じた。
大量の紙とインクとペンをもらって2階に運んでいく。
「今日はこの部屋に子供を入れないで下さい。嫌いな訳じゃないよ。お仕事するから」
机に紙を置き、ペンをインクに付けてためし描きをしてみる。
ずいぶんクセのあるペンだ。でも慣れさえすれば…!
それからは、次の日のモーニングまで部屋にこもって出てこなかった。
モーニングでコーヒーを飲んでいると、おばあちゃんが心配そうに、
「あまり無茶しちゃだめよ」
「あはは…昨日は興奮しちゃってずっと絵を描いてました」
「絵ーみせてー」
「みせろ~」
「あとで見せるから待っててね。あと紙を持つのは厳禁。破れちゃうからね」
高美は白紙の紙を割いて、そこに絵の値段を書き込んだ。
労力に応じた値段を書いていった。
「ふぅ…こんなものかな」
ドアが少し開いていたので、子供がワッと入り込んできた。
「…すげぇ…ぱねぇ…」
「本当に1人で描いたの?」
喜ぶかと思いきや、ちょっと引かれてしまった。
「お姉さんは、今日噴水前でこれを売りに行くからね!」
「私達にも書いてー」
「描いてあげるから、心配しないで!」
散らばった紙を整えてから、
「じゃあ行ってくるわね!」
元気に高美は孤児院を後にした。
噴水前で噴水の端に座った高美は、絵に石を置いて早速マーケットを開始した。
見た事ない露店なので、皆恐る恐る近づいてくる。
「絵を描いてま~す!見てって下さい~」
なんだかこの感じ、何かに似ているなと思ったら同人誌即売会だった…。
そんな事を考えてる時に、
「これ欲しいなぁ~…」
少年が絵を欲しがっていた。
「どうかな?値段も張ってあるけど」
「うーんお小遣いじゃ買えないや」
少年はトボトボと去っていった。
でも値段は変えられない!そこはプロの意地だった。
白い衣装と白いハットを被った人物が、5分程絵を眺めていた。
「は…はは…どうですか」
「全部貰おう」
「は…?」
「この絵を全部欲しいのだ。」
「えっと値段計算しますから…」
「これをバンクに持って行きなさい」
小切手のようなものを渡された。10万ウーロン!?
「ちょ…これ…!」
紳士は絵を全て大き目のバッグに絵を全部入れて去って行った。
「…誰??」
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