第2話再会
不思議だった。
家は、完全に施錠されていて、中からクロが出た、或いは、外から誰かが盗みに入った形跡が無かった。
理久は、懸命に探した。
SNSにも探し犬の写真を上げ、保健所にも何度も行った。
しかし、見付からない。
そして、余りに一生懸命になる余り、勉強が疎かになると母にも叱られた。
それでも今日は日曜で、かなり遠くの公園まで来て夕暮れまで探した。
知り合いが、ここでクロに似た犬が一匹で歩いていたと言っていたからだ。
探し疲れて俯き、上半身を倒し腿に肘を付きベンチに座る。
もう辺りは、さっきあんなにいた子供達も帰って行き、シーンと静まり返っている。
そして、外灯が付きだした。
「どうして…どうして…いなくなるんだよ…頼む、帰って来てくれよ…」
他人から見たら、たかたが犬一匹居なくなった位でいい年をした男子が泣くなんて…みっとも無いと思うだろう…
でも、理久には、たかだか犬一匹では無かった。
友達いや…それ以上だ。
理久の両目から落ちた涙が、ベンチの下の土をポツポツ濡らす。
「クロ…俺の側に帰って来てくれ!帰って来てくれたら、ご飯でもおやつでも何でも、お前の好きな物食べさせて上げるから…なぁ…クロ…」
理久は、弱々しく呟いた。
すると、地面を見ていた理久の目に、理久の前に来た明らかに男だろう、大きなスニーカーが映った。
気配も無かったのに、突然目の前に男が立っていて、理久はビックリして顔を上げた。
すると…
「理久…本当に何でも好きなモノ、食わしてくれるんだな?」
低く、甘く、でも、凛とした男の声。
外灯に照らし出されたその声の主を、理久は目を見開いて見た。
そこにいたのは、ガッチリした背の高い
、ジーパンと白いTシャツだけでもオーラの凄い、長い黒髪の超イケメンだった
。
年齢的には、20代前半から中位いだろうか?
(誰?)といいかけて、理久は、男の瞳に吸い寄せられ、言葉を失った。
(外人…だろうか?)
瞳が、美しいブルーだった。
そして、クロとよく似ている。
余りに良く似ていたので、理久は、増々視線を外せなくなる。
「なぁ、理久…本当に…本当に、何でもいいんだな?」
呆然としてしまった理久は、思わず男に向かって返事してしまった。
「う…ん。本当に、何でもいい…」
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