バブル
怒りや憎しみを無視して快楽的な笑いのみに執心、気持ち悪いものをひたすら排除、そんな世界ならば一度滅びた方が良い。
私はそう壁に向かってよく言う。
近くあるだろう国政選挙には、もちろん投票しない。
政治家は特に滅びるべき存在で、私には与党とか野党とか、主義主張関係なく、税金という果実に群がり卵を産みつける醜悪なハエにしか見えない。
一度全部滅びた方が良い。
多分、そのような私の願いが、会ったこともない若い女性に、なんらかの形で干渉、その女性は商業ビルのトイレ個室で産み落としたばかりの赤ん坊の首を絞めて殺害する。
その赤ん坊はもしかしたら将来的に政治家になった可能性がある。だからそれを未然に防ぐためにも、そこですみやかに殺害されて然るべきだった、ということも言えそうである。
***
なんかわからないが世界から重力が失われて都市が水没したのだそうな。
そしてなんかわからないが無数のシャボン玉が、風景の中には浮かんでいる。
シャボン玉は光を反射し、美しく色を変えていく。
ふわふわするー、超、ふわふわするよー
可愛い女の子が無重力空間を漂い、下では若い全裸の男が無重力空間を漂い、
スカートの中身を見ている。
ああ、エロい、やべえ、やべえよ・・・
赤黒い勃起したチンポをしごいている。
都市は水没して多くの人類はすでに死んでいるのだそうな。
無重力がやばいから空中戦しようや!と、ネガティブな気持ちにならず、何か新しいことをやりたい、という人々が、なんかジェットシューズ的なものを装着し、笑い声をあげながら、充実感を覚えながら、殺し合いに興じている。
ふわふわ!超ふわふわするー
可愛い女の子は、無重力空間を楽しむ。ネガティブなことは、考えない。
根っから明るい性格。
今まで、陰気な性格の奴には、臆することなく、面と向かって、
あんたみたいな奴はいない方が良いよ、あんたのせいで雰囲気悪いし、暗い気持ちになるし、とにかく不愉快、死んでよ、
と宣告してきた。
多くの場合、宣告された陰気な性格の奴は思いつめた顔で何も言わず投身自殺した。
ほんとに死んじゃったの?マジウケる!
可愛い女の子は、可愛い笑顔で笑いながら、クッキーなど食べながら言ったものだ。
勇気ある女の子だ。
水没した都市の上、廃墟のなか、無重力空間を、ふわふわ漂い、楽しんでいる。
その下では若い全裸の男がいる。
女の子のスカートの中身を見ている。
女の子は、パンティを着用していない。
毛の薄い、桃色のマンコが、はっきりとみえている。
やべえ、エロい、やべえよ・・・
若い全裸の男は、高身長、イケメンと言って良い端正な顔立ち。
金色の短髪。切れ長の目は緑色。鼻筋が通っている。唇は薄い。細マッチョ。乳首は美しい薄いピンクで、やや小ぶり。
王子様系のイケメンと言って過言ではない。
もちろん陰毛も金色。
無重力空間を漂いながら、赤黒く勃起したチンポをしごいている。
ああ、イキ、イキそうだ・・・きもち
さらに上空では激しい戦闘が行われていて、すでに多くの、ジェットブーツ的なものを着用した若者たちが、死んでいた。
きもち、やべえ、メチャクチャエロいよ・・・イキ、イキそうだよ・・・
クチュクチュと卑猥な音を立てながら、若い全裸の男は、ひたすら、可愛い女の子のスカートの中身を、マンコを凝視していた。
マンコを見ると元気になる。精神も、体も。だから、マンコを見るのは健康に良いことなのであろう。
***
長い廊下の両端に、屈強な男たちが、全裸、四つん這いで並ぶ、ケツを、廊下の中央に向けて、突き出している。
ケツは、毛深い。
呼吸しているかのように、数十人いる屈強な男たちのケツ穴は、ひくひくと、動く。
長い廊下には、人糞の臭い、男たちの蒸れた、酸っぱい体臭が、充満していた。
毛深いケツを、ひくひくさせている、全裸の男たちは、四つん這いのまま、動かない。
皆、真剣な表情で、地面を、じっと、見ていた。
***
廊下にベルが響き渡ると、四つん這いになっていた男たちは静かに立ち上がり、あくびをしたり伸びをしたりして、その場を立ち去る。
廊下の突き当りには扉があり、そこは更衣室になっている。
全裸の屈強な男たちは更衣室で衣服を着て、挨拶もしないで、無言で、目を合わせることもなく去って行く。
***
廊下で繰り返しひくひくする毛深い男たちのケツ穴は、きちんと録画撮影されている。時間内に何回ひくひくさせられたか、カウントが取られ、その回数に応じて、ギャランティが発生する仕組みになっている。ギャランティは各自指定の口座に振り込まれる。
***
高校二年生の榎本シゲキが、その、全裸、廊下で四つん這いになりケツ穴をひくひくさせる怪しげなアルバイトをしているという情報が、教員の中で、話題になる。
榎本シゲキは大人しい優等生そのものにしか見えない生徒。
確かに屈強な肉体をしていて、ラグビー部で活躍している。
私が直接話してみますよ!
担任のエガシラ勝男が言った。
エガシラは頭の真ん中が禿げているが年齢の割にスマートで、顔も、彫りが深く端正だ。
専門は社会科である。
放課後、エガシラ勝男は部活に行こうとする榎本シゲキを呼び止め、社会科準備室まで同行するように言う。
先生、僕は忙しいです。みんながぼくにタックルされて脳震盪になりたいって、待っているのです。
わかっている。話はすぐ終わる。来なさい。
わかりました。先生。
榎本シゲキは基本的に素直で、良い子。黙って、エガシラ勝男の後ろをついてくる。
2人は社会科準備室に行く。
***
社会科準備室。教師のエガシラ勝男と、生徒の榎本シゲキ。二人は向かい合って座った。
テーブルにはクッキーやお茶が置いてある。
君がいかがわしいアルバイトをしていると聞いてね。
何のことです?わかりません。
2人は無言で見つめ合う。
外は確実に暗くなっていた。
エガシラ勝男が頷いた。
わかった。何も言うつもりがないなら、もういい。帰りなさい。
先生の言っていること、本当にわからないです。いかがわしいアルバイトなど、僕はしたことがないです。
今は何のアルバイトをしているのだ?
はい。僕は僕の叔父さんが経営している喫茶店でウェイターのアルバイトをしています。それしかしていません。
本当なのか?ケツは?
は?ケツですか?
榎本シゲキは不思議そうに、キョトンとした表情で、首を傾げる。
先生、ケツって?
いや、わからないなら、いい。帰りなさい。
はい、先生。さようなら……。
うん。また明日。
はい。先生……
***
榎本シゲキはすでに暗くなったコンクリート道路を歩いていた。
エガシラ勝男が言っていた、ケツという単語が酷く気になった。
何のアルバイトのことを、先生は言っていたのだろうか。
前方から、ボロ布を羽織った腰の曲がった老人が歩いて来ていた。
薄気味悪いので目をやることもせず、榎本シゲキは通り過ぎようとした。
あの、待ってくださいね。
老人が、声を掛けて来た。榎本シゲキは優しい心の持ち主だから、立ち止まり、
はい、なんですか?
と応じた。
街頭に照らされた老人の顔は皺だらけで、鼻が異様に大きく、グロテスクだった。
はい。あの、ですね、チンポ触った手で、あなたをこれから触ってもいいですよね?
老人の言葉に、榎本シゲキは目を見開いて後ろに下がった。
嫌ですよ!気持ち悪い!死んでください!
違います!違いますよ!気持ち悪くないです!ただ、さっき私は自分のチンポを触ったので、その手であなたのチンポに触ってもいいかなって、ただ、ただそう思っただけなんですよ!
何が違うんですか!気持ち悪い!死んでください!
榎本シゲキはそれだけ、吐き捨てるように言うと駆け足で去って行った。
暗い路上、街灯の下に残された老人は、しばらくそこに留まっていた。
涙を流し、悲しみを、その顔に表していた。
他人に全力で否定され、死を宣告されることほど悲しいことは、それほどないものだ……。
小さな声で呟いていた。
その後、老人は泣きながら、築50年の安アパートに帰宅し、黄ばんだ手ぬぐいで首を吊って死んだ。
白目を剥き、口を開け、その口からはダラリと、長く舌が垂れていた。
老人は全裸で首を吊っていた。
男性の場合、首を吊るとチンポが勃起状態となるのは有名な話だ。死刑囚が死刑執行された際にも、そのチンポはビクンビクンと勃起するのだという。
もちろん、老人のチンポも、赤黒く勃起し、しばらくの間、本人はすでに息絶えているにも関わらず、反応として、ビクンビクンと、動いていたのである。
***
最初に述べたが私は絶対に選挙には行かない。
駅前で大きな音量で気色悪い綺麗ごとを叫び続ける政治家とそれに加担する連中が、本当に気持ち悪いのだ。
あいつらは選挙の時期にしか見かけない。
もう、それだけで下心と言うか、奴らの欲望が透けて見えて、気持ち悪い。近づきたくない。関わりたくない。
投票する、ということは奴らに関わることではないか。
それは絶対に嫌である。
私は選挙には投票しない。当選し活動するどころか、その逆である。政治家は絶滅するべきだ。許されない存在だ。税金に群がる寄生虫だ。この国は一度激しいミサイル攻撃によって壊滅するべきなのだ。滅びるべきだ。
そのことをアベマの会見チャンネルでコメントしたら、お前は病気だ、と言われた。
みんなが爆死、肉の塊、赤黒い、グロテスクな風景、生首、子供の切り裂かれた、首のない死体、手首だけ、肉片、血だまり、瓦礫で呻く、内臓の飛び出した奴、もうダメ、助からない、でも呻く、邪魔だ、消えろ、言われるが生きたいという本能が呻かせるが結局死ぬ、白目、口をあんぐり開け、涎と血を吐いて、死体の顔は綺麗ではない、あらゆる恐怖と苦痛に歪みきった顔、損壊、脳みそが露出、衣服を着ていない、一様に痩せ細った人々が、脳みそを啜る、そんなに美味くない、でもこれを食わないと死ぬ……死にたくないから食うだけだ。
やめて……僕の脳みそ食べないで……僕の脳みそ……嫌だ……脳みそないと生きられないよ……食べないでよ……お願いだよ……。
病気か。
そうなのか。自分のことを病気扱いされるのは不愉快なことだ。
消えてしまえ!
そうとしか思えない。何の愛着もない。病気扱いしてくる連中を好きになるほど、私は変態ではない。普通に嫌いになるに決まっている。
絶対的に相いれないのだ。
***
長い廊下の両端に、屈強な男たちが、全裸、四つん這いで並ぶ、ケツを、廊下の中央に向けて、突き出している。
ケツは、毛深い。
呼吸しているかのように、数十人いる屈強な男たちのケツ穴は、ひくひくと、動く。
長い廊下には、人糞の臭い、男たちの蒸れた、酸っぱい体臭が、充満していた。
毛深いケツを、ひくひくさせている、全裸の男たちは、四つん這いのまま、動かない。
皆、真剣な表情で、地面を、じっと、見ていた。
***
一人の男のケツ穴(もちろんびっしりとケツ毛が生えている。)に、人差し指を、ずっぷりと挿し込んだ。第一関節、第二関節、人差し指全体が、3分くらいかけて、ケツ穴に沈み込んだ。
あっ、あん!
突然のことに、真剣な表情が崩れ、眉を八の字にし、その男は喘ぎ声を出した。
ああ!ケツ気持ちいい!
***
その場所において、チンポを勃起させることは完全に禁止されていた。だから、その喘ぎ声を発した男は、即日解雇された。その日のギャランティも規約違反として出なかった。むしろ違約金を支払え、という勢いで怒鳴られた。
***
みんなそこには屈強な男たちのひくひくするケツ穴を見に来ているのであり、勃起した赤黒いチンポを見に来ているわけではないのだ。
***
もちろん世の中には屈強な男の勃起した赤黒いチンポを見たいという人は多くいるのであり、そういった需要がないわけではない。だからどうしても勃起を我慢できないというならば、ケツ穴をひくひくさせるアルバイトではなく、勃起チンポをびくびくさせるアルバイトに応募するべきなのだ。
***
適材適所である。
世の中、適材適所が1番いい。
適材適所ではない場合、ストレスがめちゃくちゃ溜まる。白昼の路上で刃物を振り回して暴れたくなる。
そうならないためにも、適材適所が大事なのである。
2022/7/3(了)
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