642 楽しかったね。

レースも残すは10区。

大人達は「間違えない」でタスキを渡すことに毎回緊張してる。

分かりやすく服をタスキ色のに交換すればいいはずだけど、それはイヤみたい。

子ども達はとっても楽しんで気負いは見られないし、周りを楽しませてる。

でも1位しか表彰がないから、勝ちにはこだわるよだって。

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 9区走者が交代地点に走り込んでくる。今までの人達が何かしらのペナルティをして待機ってこともなかった。

 調整がしやすいってことで最初の出発から時間差出発をしていて、2区交代時に調整をする。

 去年我先にってなって見苦みぐるしかったし、ケガにつながりそうだった。

 そのせいでスタートがダッシュになった原因の一つじゃないかっていう分析もして事故のないように構築したんだよ。

 残念ながらルールの穴があった。それは有力選手が出られなくなるって救済規定で強い選手は競技を盛り上げてくれる。意図いとんで悪用はしないって思ったんだけどね。


 策士策におぼれることになって、面通めんとおしもしないし、ユニフォームをそろえないままだったから、取り違えるってことが起きた。

 アレは去年入賞プレゼントしたもので同じチームがハッキリ分かるというもの。

 それで同じユニフォームにタスキを渡したってことだけど、その人は違うチームということで、ちょっと遅れてきた人だけ気がついた。

 周りはそういう事情は知らないから、タスキしているなら不自然には思わない。

 発覚して追いかけるには選手は速すぎるし、伝達しようにも次の3区までは受け取る方法がない。

 結局、気が付いた応援の人達が教えてくれたけど、本人たちが認識するまで時間が掛かっている。引き返したのは真ん中をかなり過ぎたところ。

 棄権きけんがよぎったはずだけど、戻る事を選択した。


 結局、2回ちょっと走った3人は優勝候補から脱落。クタクタだったけど歩いたりはしなかったのは応援のチカラ。

 信頼って意味をかみしめたんじゃないだろうか。

 待っている間にしっかりウォーミングアップした一人はバビュ〜ンだった。

 途中アレなことがあって、今のトップはそのケーサツチーム。それに他の3チームも今はビリではないの。

 しょぱなから時間調整があるせいか、待たされる意味|(ペナルティ)をあんまり意識してくれない。

 だから繰り返すんだろうけど、ルール遵守というか道にゴミを捨てるのはダメだよ。社会常識ってヤツでしょ。

 上着やタオルやサングラスって大事なものではないの? 誰かが拾って届けてくれるとか考えているのかなあ。

 現にタオルですべってケガした人がいるんだよ。で、路肩に投げればってセーフになるわけないよねえ。


 抽選参加の人達も仮装していたんだけど、ピンとかがれた布とかをポロリして、それを車が弾いて危ないっていうのもあった。

 運動するときにヘアピンは落としやすいから推奨しない。

 ヘアゴムはまだ良いけど、出発前に落とさないようになっているか、チェックをお願いしてる。

 子ども達のはユニフォームみたいなもので、フワフワの羽はそう見えるだけ。落ちそうな羽根を材料に使ったりはしない。はげしい運動をしても外れたりはしないようにしてる。天使の輪は付けているんじゃなくて飛んでいるんだし。

 移動している飛行の道具は対象から離れた物品を記録は出来るけど、回収する技術はまだできていない。草の中に落ちたのや側溝に落としたのとか、布や小さいピンを判別して取るのが難しい。服とか大きいし、何か落として踏まれて粉々とか厄介やっかいなだけだもの。

 映像情報を頼りに拾いに行くことになるんだけど、小さいのはあきらめることになるだろうね。震災後に使ったのは何でも吸い込んで区別しないから、アレを使うと全部かたまりになっちゃう。


 子ども達がペナルティを受ける事はなくて、飲む時は給水所で止まって飲んでから走るし、今回はお菓子を持たなかった。服を脱いだりしないように前を開けて温度調節ができるようにしてる。

 あとケーサツの人達もゼロ。ココの流儀で拾得物を預かるけど持ち主が現れないのが多くて溜まっていく。期間を決めて処分出来るようになる法が有効になるまでにかなり溜まる、悩みのタネ。

 ゴミにしかみえないものでも本人にとっては、価値があるかもしれないと考えるのってステキな人達だと思うよ。


 西の方では拾ったモノを届けるってことをしない。落とし主ハッキリ分かっていて、キライじゃなければって条件も付く。拾得物がほとんど届けられないから、管理に悩んだりしないし、金目のものでなければすぐにゴミ箱行きだろうね。

 それにココの人達が良くする場所取りも荷物を置いておけば、だ〜れも盗ったりしないし、荷物が盗られないようにって見張ってくれたりしてる。

 僕のいたトコでは考えられない。誰のかが分かっていても見張っていないと平気で盗ったりゴマかしたりする。そういうのがスゴくイヤだった。


 西から来た僕は、そういう安心出来ないのや不潔なのがキライという変わり者だったから、伝え聞いていた東の街にずっと行ってみたかった。

 誰かじゃなく全てに感謝をする考え方がすごくいいと思っていて、いただきますに感激した。とうとう来てみたら、キレイな街、清潔な習慣、全部にベースとなる他人に優しい思想。倫理をね。世界に押し付けようとしてるくらい好き。

 なのにって思うわけ。

 良いと思ったことがまぼろしだなんて思いたくないし、そうなっていないならさくめぐらしても望みはかなえる。

 僕があきらめるのは人との関係だけ、その他は手放てばなさない。

 迷惑かもしれないけど元々持っているものだと思うし、見本になってよね。


 9区で身にみただろうけど、子ども達チームとからむのは大変でしょう。

 短距離で子どもの持続力は切れないし、スパートと思ったら本当のはまだある。

 それぞれどこでペースを速めるかって考えているのに、子ども達がタ〜ッと走り出すのに釣られるよねえ。

 カテゴリーが違うんだから気にしないで良いのに、教授達は良い仕事をして無視できなくなった。

 もちろん8区の激走は自分の意志ではないんだけど、ちゃんと走り切れたし素晴らしかったと思う。見た人達がみんな目をそむけるという感じだったけどね。


 それで子ども達が8区をトップグループして、9区の大人達がペースを崩されて速さが出ないし、スゴく疲れていた。

 子どもに追いつき追い越されるというのは、実況でネタにしやすい。

 お国柄で弱い方を応援しがちっていう判官贔屓ほうがんびいきもあるしね。

 ついつい子ども達の方を応援するっていうのも、まあ途中のアレじゃあ仕方ないのかもしれない。


「さあ、最終10区。去年はトップがゴールした時に最後尾は8区にいましたが、今回はかなり詰まっています」

「子ども達が元気ですし、スパートして止めてってこともしますからね。釣られてペースを崩されますよねえ」

「違うクラスなんだから気にしなきゃ良いのに、子どもに負けるっていうのがイヤなんでしょう」

「怪獣ちゃんが観客にギャオ〜ってしています。余裕いっぱいですねえ。

 それをみて魔女くんが魔法を飛ばしていますよ。ええっと、袖口のボタンを押して手を振るとエフェクトが出る・・そうです」

「それを見て思いだしたのか、怪獣ちゃんが口からビーム。観客に当たって何人か倒れました。ノリがいいです」

「悪魔が星を飛ばしているのに、無視して走っているだけなんてヒドいですね。今日は何しに来たのでしょう。ああ、かけっこしているんでしたっけ」

「クマがハチをぐるぐるして、天使くんが輪っかを飛ばしてからダッシュ。アッサリ抜いてキャッチ。

 ようやく反応して・・というかオタオタしていますね」


 9区からは、こんな調子で遊んでアピールをしてる。マトモに走れば子ども達より当然速いんだけど、やたら疲れているのはどうしてって思っていた。

 子ども達が交代間際にこんなことを毎回してたみたい。

 これは妨害行為ではないの。かまってしているのに無視する方が悪いよ。

 会場は迎える準備が整っていて、医療班待機を指示。中盤なのに息が上がっているようにみえる。

 何かヒートしているみたいって現地も分かったらしく、霧状に水を散布。

 子ども達のキャッキャッとは対照的。


 10区終盤、子ども達もアンカー。

 天使はシンシアで子ども部門の水泳100M、200Mフリーの世界記録保持者、悪魔はクロエでケモミミってキャラ盛り過ぎじゃないの。

 オバケは包帯巻き巻き衣装でケモミミの子で最年長。え〜っと、里でリーダーしていたって。

 ケモノは全身ヒョウ柄で耳付き、尻尾は自前って三ツ滝郷の子だよね。こういうのはキライだから出ないって去年言ってたはずだけど、年末の龍宮島でカッコ良かった大人達を見て心境が変化したのならうれしいな。

 魔女はやっぱりス〜ちゃん。小さいんだけどナゾブーストがある。姿を消したシロが押してるの。

 みんなには見えていないからセーフってことにしてるけど、僕には普通に見えているの。一所懸命いっしょけんめいに押しているのが可愛いよ。

 そう、他の10区の面々めんめんもこんな感じだもの。キャラ強いから大人達大丈夫かなあって思ったワケ。


 元々、子ども達は大人を競争相手としては見ていない。カテゴリーが違うって分かっていて、ただの遊び相手。

 大人達が面白い反応をするから余計にしているだけで、距離が長めだしきちゃわない対策?、いや遊んでいるだけだよね。

 理論で効率的にきたえているから、ただ走るだけの訓練をしている人達とは全然違ってきてる。妖精さんとの仲良し度が上がって、こうした方がいいっていうのも分かるようになっているしね。

 速さというのはそんなに伸びないし、筋力をきたえるには身体ができていないから制限ありだけど、持続力や回復力は向上してる。

 余裕ができれば、使える手段が増えるし選べる。困る事態は回避できるよね。


 そんな中でもタッタッタって、ずっと黙々と走っているのがいて拍手の中、先頭でゴール。ふらふらの大人が続いて、かなり後ろにいたス〜ちゃんが急に速くなって、4番目くらいにゴールした。

 手を広げてエフェクトいっぱい。まるで魔法を使ったみたいにみえる。

 ダンスステップしたり、ケモノ走りしたり、オバケは周りを脅かしていたり、タンタンタ〜ンってクルクル回ってゴールで着地とかしてた。


 すっかり主役を持っていかれた感じだけど、元気いっぱいで可愛いのと、どろどろな大人とじゃあねぇ。

 去年は先着組に身だしなみを整える時間があったけど、ラストもすぐ来る。

 スポーツ大会でケアグッズは開発できたし、汗を拭いて体裁ていさいを整える事はできるよ。

 運動の汗はステキだけど、汗臭いのをクンカクンカする趣味は誰も持ってないんだから、香り付きシートでぬぐっておこうね。


 トップはケーサツのチームだったけど、一人だけ出てきて深々と頭を下げた。

「ルールの規定上ではOKだけれど、サブ規定は有力選手の機会をつぶさないためというのは明示されていたし、知っていた。

 なのにそれを積極的に使って、選手を集めることに使った。これは信頼を裏切る行為となる。申し訳ありません。表彰を辞退させていただきます」

 また深々と頭を下げた。いつの間にか舞台前に勢揃いしていたケーサツの人達が頭を下げる。

 パラパラから大きな拍手になった。


 悪いことをしたことをあやいさぎよさ、誠実さがここの人達の良いところ。

 規定になければセーフだけど、そこに趣旨しゅしを併記することで自制をうながしていたから趣旨違反とすることもできた。本心か、今後のことを考えてのことかは分からないけれど前者であって欲しい。

 優しい忖度そんたくする人達という僕のイメージを壊して欲しくない。

 ムードが悪くなるところだったけど、途中の走りに気の抜けたところはなくて、区間賞や、新記録更新までしていた。

 ケーサツの人達がゴミを落とす事はないし、途中の騒動の仲裁もしていた事は実況でみてる。


 記事を悪く書かないように注文を付けておいた。

 事実は切り取り方、記事の文調でイメージを誘導する事はできる。

 イベントにケチが付くのもイヤだし、いい話・教訓の方に持っていくつもり。

 僕としてはルールの改変の口実にできるし、才能の固まりすぎをバラして、他チームを強化したい。ムリヤリにでも隣街からも参加させて、その指導にケーサツの人達を使うとか考えている。そこから治安には必要ってする逆パターン。

 盗賊に襲われない街は危機感が薄くて、これからは小悪党がのさばりやすい。僕らが何とかする事は出来るけど、それをするのはその土地の人であるべきだもの。


 繰り上がって優勝になったのは、市民Aチーム。さすがに改名してってAが付いて、マネしてB、Cがあるんだけど安直だと思うよ。

 準優勝は農業ギルド。途中ひとりバカッ速いのがいたの。

 その後に来たのは子ども魔女、ス〜ちゃんだったけどカテゴリーが違うので保険ギルド。市民C、商店街と続いて悪魔、天使、オバケ、動物がほぼ同時。

 大人には去年よりトロフィーが大きくなったんじゃとかが渡されて、たても。

 トロフィーは使い回しで、「第ニ回大会優勝 市民Aチーム」というのがもう付いている。盾もそう。作成はチャチャっとできるし。

 副賞は大きいウォームコートで新製品。

 渡されたのをみんなでバサッと羽織はおって・・カッコいいでしょ。


 やっぱり表彰上位3組のは小さく、参加賞は大きくSHINONOME02って入っている。品質もまあ違う。

 総合3位っぽくみえる魔女チームが全員舞台に上がった50人と1人。

 サブは3人いて全部のサブだから、じゃ〜んけんってした結果。

 大人のと同じで、他の順位のも同じ(良い方)だけど、優勝チームには僕が刺繍を入れてるってだけ。ニコちゃんお日様マークは東雲しののめのイメージマーク。表情が色々あるよ。


 贈呈や表彰の時に僕は登場しない。これは地域イベントなだけだし、スポンサーやプロデューサーが偉そうにすると頭にきちゃうでしょ。

 プレゼンターのお姉さん達ニッコリの方がきっと嬉しいよ。

 東雲しののめのタマタマ近くにいた人に台本を見ながら、閉会の挨拶あいさつをしてもらった。

 そういえば村長とか町長を決めてない。僕的には不要なんだけど、対外との交渉には要るかもね。

 明らかに上って人をつくると仕事の責任から逃げる口実になるんだもの。

 出来る人には責任をのせないで、もっとにして欲しいからね。

 どちらかというとスケジュール管理が得意な人かなあ。でも偉くはしない。貴族化したらヤだもん。


 イベントは大成功って言って良いんじゃないかな。

 僕の準備頼みなところは要改善だけど、コモリーだった人達が下見をちゃんとして、配置の企画をちゃんと作っていた。人材手配までは手が回らなかったけど、休憩所の運営もちゃんと出来たし、来た人達を楽しませていたと思う。

 それでもうちょっと突っ込めるかなあって・・しちゃダメだよね。


 商会としてもプロモーション出来たし、実況も実践に勝る練習はないってことで、良い感じだった。

 シンシアは、スキルを使えるから取りあえずアイドルをしてもらったけど、未来は自由に選んでねにしてる。

 もうじきここの成人年齢になる子がいてどうするのかなってだけ。候補は出したけど選べってことではないよって。

 学校や商会で、たくさんの仕事を紹介したり体験したりをしていて、芸能はその多くの選択の1つでしかない。見本となる大人がとぼしくて申し訳ないんだけど、それを切りひらいて目標になるっていうのもいい。

 元気に走っているのや実況で笑わせているのを見て、すごくいいなって。

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色々あった駅伝大会だけど、良い感じに終わって良かった。

小さい子だっているチームが上位に来るっていうのが駅伝って競技?

まあ、時間ロスをいっぱいしたからだけどね。

で、今度は全走1人のかけっこ競技がやりたいなって、

参加者いっぱいにしたら楽しそうでしょ。じゃあまたね。

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